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無能勇者の烙印  作者: 汐倉ナツキ
第二章

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サンブルックス・カルメロルツ領⑤/サクッと攻め落とそう



 さて、サンブルックス・カルメロルツ領の名称も今日で終わり。

 今日からは独立国家に戻るぞ。

 若干傀儡感あるけど、それはまあ考えてはいけない。感じるんだ。(何を?)


「あの、本当に皆を助けに行ってくれるんですか?」


 不安そうな顔のレンカ。


「違うな。君達が助けるんだ。俺達はそのバックアップをするに過ぎない」

「えっ!?」

「まさか本当に!? 良かった! あいつらやりたい放題だったから、てっきり愛想尽かされてたものだと……!」

「うんっ! うんっ!」


 愛想は仄暗い水の底まで尽かしてるけどね。うっ、頭が……。


「君達二人には随分と助けられたからな。それでは作戦の概要を説明する」

「「はいっ!!」」


 さっきとは打って変わって元気な顔で威勢よく返事する二人。

 まあ、でもゆーて君達は(デコイ)に使うつもりでしか無いんだけどね。

 せいぜい目立っててくれ。

 運良く生き残ってたら正式に俺の軍門に加えてやる。




 ▽




 はい。作戦開始して数時間が経過した。

 新しい駒は俺の神の贈物(ギフト)で操るより動きが鈍い。

 恐怖による強制的な支配は対象者に迷いを生じさせる。

 ただ、殺したら殺したで動きは鈍るしとっさの判断もできない。

 比較的生きてた方が使えるってレアーレの感覚頼りだから何とも言えないけど、まあいいだろう。

 とりあえず初動でレンカ達を適当に別のレジスタンスグループを付けてサメジハマグループ救出に向かわせた。

 良い陽動になってくれてるから俺の方は非常に動きやすい。少しだけだけど。


「それじゃあレアーレ、カルメロルツに属する人間を殺せ。一匹残らずだ」

「了解した。伝染せよ、感染せよ。私の──『再生させる神掌(リプロダクション)』で!」


 レアーレから不安を煽るような不気味なオーラが垂れ流れていく。

 そのオーラは瞬く間に王都中に広がっていった。

 いや、それだけに留まらない。オーラは薄くサンブルックス国土中に広がりゆく。

 集中してるのだろう。

 レアーレは眉間に皺を寄せ、額から汗を滴らせる。


「ふぅー……。二週間かけて仕込んだ仕掛けの内、カルメロルツに関連する者全てへのアクセスを完了。そして同時にゾンビ化も完了した」


 はやー。三分も経ってないぞ。

 レアーレは無茶をしてたのか険しい顔をしたまま片手で頭を押えている。

 まあいいや。


「よし。では予定通りカルメロルツ人、そいつらに癒着してる現地人を対象に進撃を開始しろ。殲滅を終えるまで──徹底的にだ」

「やれやれ、休む間も無いな」

「ファイトだよっ!(裏声)」


 ピキッ。レアーレの額に青筋が浮かび上がった。


「裏声を出すな気味が悪い。それに呑気に過ぎるな。ほら、マヒルも早く仕事をこなせ」


 しっしっと俺を追い払うように手を払うレアーレ。


「そうだな、俺達もそろそろ動くとするか。アリス」

「うむ……ゾンビの襲撃から逃れうる人材をマヒルの神の贈物(ギフト)に掛けるのだろう……?」

「そう、青田買いとはちょっと違うけど、優秀な奴はいくらいてもいいからね」


 乗り気じゃないアリス。


「仕方ないか……では行くとしよう。マヒル、捕まるがよい!」

「ああ、頼んだ」


 アリスに抱えられ、空を翔ける。




 ▽




「レンカ! 無理はしてないか!?」


 少し離れたところからサメジハマさんの声が響く。


「大丈夫! サメジハマさんも、皆で生きて、メシア様(・・・・)と合流しましょう!」

「ああ、僕達はこの程度の苦難で気圧されるほどヤワじゃないってところをメシア様(・・・・)に思い知らせてやろう! そして今日この日にサンブルックスを独立させるんだ!」

「はい!」


 もう少しでAランク冒険者になれるわたしにこの程度の連中は相手にすらならない。

 例え今の倍の人数をけしかけられたとしても。


「はぁああああああ!!」


 安物の剣に無属性の魔力を覆い、強度を補強。

 そして赤の魔術を使い灼熱の炎を纏わせ、攻撃力を上げる。


「くたばれカルメロルツッ!!」


 真横へ一閃。

 ボォオオオン!

 剣に纏わせた炎が弾け、爆風がカルメロルツの騎士を襲う。


「「「ぎゃああああああ!?」」」


 爆風で吹き飛んだカルメロルツの騎士。

 彼らはレンカが使った魔術の付属効果で苦しむ事となる。


「治してくれ! 痛くて熱くて堪らないんだ!!」

「炎が消えない!? なぜ!?」

「くっそぉ……いったいどんな魔術を──」


 レンカはカルメロルツの騎士に取り合わず、剣を振り下ろしとどめを刺した。


「あんたらのせいでわたし達の国は随分とおかしくなったらしいわ」

「何を……」


 攻撃を逃れたカルメロルツの騎士がレンカの突然の独白に眉を顰める。


「税で大量に搾取され生活がままならず貧困に、カルメロルツ人と特権階級から受ける差別。まだ幼い頃よ。わたしが生まれた世界はこんなにも人に厳しいんだって思い知らされたわ」

「それが世の理! それが我が祖国の国是! 汚らしいスラム育ちの小娘風情が、世の中を分かったような口を利くんじゃない!」

「あっそう。じゃああんた達はその汚らしいスラム育ち風情に殺されて呆気なく生涯を閉じなさい!」

「ぐっ」


 一息を吐く間も無く距離を詰め、鎧を豆腐のように突き刺し腹に剣を刺し込む。


「がぁあああああああ!?」


 腹を刺されたカルメロルツの騎士は腹を焼かれる苦痛に耐えられず悲鳴を上げる。


「ぎ、貴様ァ、こんな事をして……タダで済むとお──」

「じゃあね」


 ボン!!

 カルメロルツの騎士は鎧の中から爆発を起こされ爆散した。

 肉を焼いたような臭いが辺り一面に拡がる。


「わたしの得意魔術は『爆破』。赤の魔術をどうにか改良して実用化させた。原理はよく分かってないけど、この国じゃわたし以外に使い手はいない。死にたい奴からかかって来なさい!」


 レンカの実力と容赦の無さにカルメロルツの騎士達は怯むが、カンベルト王を思い返し、己を奮い立たせた。


「応援を呼べ! 今は中央収容所を死守するのが最優先だ!」

「あんた達がどれだけ数を揃えようとも!」




 ▽




「収容所の警備はそこそこ強かったらしいが、やはりレンカの敵じゃ無かったらしい」


 俺は鑑定眼で視点を拡げ、王都内であれば全ての戦況を把握していた。

 だからレンカの活躍も全て認識している。


「あそこら辺は手を出し辛かったってレアーレが言ってたから、都合の良い手駒があって良かった良かった」

「もうだいぶ神の贈物(ギフト)を使ったが、次はどうするのだ?」

「そうだな……。手下作りはこの辺にして、レアーレの手伝いでもして仕上げに入るとするか」

「うむ!」




 ▽




 あれからさらに数時間が経過した。

 俺とアリスはサンブルックスの元王宮改め、現官府に入る。

 やはり官府の中は阿鼻叫喚で地獄絵図と化していた。

 レアーレの神の贈物(ギフト)でゾンビ化したカルメロルツの騎士がズタボロの状態で生き残りに襲いかかっている。

 入口近くでしぶとく抗戦してるカルメロルツの騎士。

 彼は長時間の戦闘による疲れからか地面に転がってる障害物に足を取られた。

 大きな音とともに派手に転んだがすぐに体勢を立て直そうとした。しかし、すでに手遅れだった。


「私に触れるなぁあああがぁあああっ!?」


 そうだね。触られただけで発動条件満たしちゃうんだよね。神の贈物(それ)

 散々叫んだ数秒後、突然静かになったカルメロルツの騎士はゾンビの仲間入りを果たした。


「あ〜あ。何時間も頑張ってたのに死んじゃった。ていうか死臭やっっば」

「嫌な空気がこもっているな……。実に不愉快な」

「アリス、死体避けお願いね?」

「うむ。是非も無いな」


 どこからか重低音が鳴り響く。

 ぶちゃり。俺とアリスの近くにいる全てのゾンビが潰れた。

 さて、これで安心して目的地を目指せるな。

 生き残りが俺達を見るや助けを求めてきたり殺しにかかって来たりしたが、結局はゾンビの仲間入りを果たした。

 リアルパンデミックハザードだ。改めてあいつの神の贈物(ギフト)コワ〜。


「おーし、着いたな」


 目の前には前国王の寝室。現執務室の扉がある。


「ここに統治者がいるのか?」

「そだね。扉の向こうにはサンブルックスの統治者、キリューゼルの騎士がブルブル震えて膝抱えて丸まってるね」


 敵の大将ながら情けないと思う。が、俺も同じ状況だったらそうするかも。

 レアーレのゾンビの大軍を相手にさせられても為す術が無いし。


「こんちわー」


 キィー。少し古い立て付けだったのか扉を開けた際、耳障りな音が耳に響いた。


「なっ、なな、何だ貴様らは!?」

「何だキミはってか。そうです。私がお前の御上です」

「ふ、ふざけるな! 私の御上は国王陛下の……いや違う! 外には亡者がわんさかいたはずだ! 服装に乱れすら無く……まさか貴様らが首謀者か!?」


 統治者のオッサンは唾を飛ばしながら怒鳴る。

 けど視点が合ってないし体はブルブル震えたままだし、虚勢を張ってるのは手に取るように分かる。

 というか王族直属の騎士だろお前。

 外はえらい事になってるってのにここで一人丸まってるだけって職務怠慢だろ。


「……仕事しろよチキン野郎が」

「と、突然何を言う!? 誤魔化すな! やはり貴様らがこの惨状の首謀者だな!? 大人しく捕縛されるというのなら、今ならまだ許してやろう! ほら早く、早く亡者共を何とかするんだ!?」

「………………何を言ってるのだ? この男は」


 アリスは呆れた顔で俺の顔を見る。


「さあ、錯乱してるんじゃない?」

「一国を預かる者が情けない。奴の顔は見るに堪えぬ」

「まーね。でも利用価値はある。まだ殺しちゃダメだよ」

「……仕方あるまい。命拾いしたな、下郎」

「貴様ら、その無礼な態度許し難し!? 首謀者を殺せ!? 私を助けるのだ!? この惨状を何とかしろぉおおおお!?」


 なーに言ってんだこいつ……。

 呆れるっていうより恐怖を覚えるレベルの錯乱。

 ひぃーひゃははははははって甲高い笑い声上げ始めたし。

 大の大人のこんな姿見せないでほしかった。見たくなかった。


「メシアが神託を下す──《私の奴隷となれ》」

「はい。メシア様の御心のままに」


 ビフォーアフターが信じられんほどの差だ。

 感想としては『うわぁ!? いきなり落ち着くなぁ!?』って感じだ。


「じゃ、カルメロルツ王国に戻ってキリューゼルを暗殺してきてよ。なるはやで」

「承知致しました。吉報をお待ち下さい」

「よろしくー」


 統治者の騎士はランクAの身体能力をフルに活用して、すでに官府の外に移動していた。


「速いなー。能力値も技能も申し分なかったし、単純に未知の存在に対する耐性が無かったのかな? イレギュラーに弱いっていうより、ビビリだったって感じか?」


 まあ、どうでもいいか。


「さて、レアーレにはレジスタンス連中もゾンビに変えるよう伝えないと。自分から動かない愚鈍な民衆には手を出さないようにね」

「棘だらけだな。まあいいが、では合図を出すぞ」

「よろしく」


 その日、死の臭い香るサンブルックスの王都に花火が上がった。



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