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無能勇者の烙印  作者: 汐倉ナツキ
第二章

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サンブルックス・カルメロルツ領④/とりあえず



 あれから二週間。

 信者の数は順調とは言えないまでも増えた。

 最初のレジスタンス連中はあんまし使い物にならなかったが、他所で隠れてた別グループのレジスタンス連中の方は使い物になった。

 サメジハマとレンカは頑張ってたがジョウガとその他がダメだったな。あいつらは腐ったミカンだ。


 レアーレは荷馬車を使ってレアーレウイルス(名称非公認)を国内中にばら撒いていた。

 馬より速いクルトスに引いてもらってたからかケツを痛めたり乗り心地が最悪だったらしい。……気持ちは凄くよく分かる。

 一週間くらい振りに会ったレアーレは過労死しそうな社畜のごとく酷い顔をしていた。

 俺もカルディッシュで活動してた時は移動しまくってたからな。俺もこんな顔してたんかな……メイビー。


 レアーレの神の贈物(ギフト)を使えば信者を作る必要は無かったんだが、まあ規模は増やせるだけ増やせればいいか。大は小を兼ねる。多分。

 途中でレジスタンス連中の誰かがレアーレの神の贈物(ギフト)の情報をカルメロルツの駐屯騎士だったり権力者だったりにチクろうとしたらしいが、遠隔で察知したレアーレが事前に殺したらしい。ナイスセーフだな。


 ちなみにめちゃくちゃ時間掛けて練習すれば脳の一部を過活性させて生きたまま操り人形化させる事もできそうだとか何とか。

 マジでこいつやべぇ……。けど、イリオスみたいな圧倒的なパワーを前にすると途端に無力になる不思議。

 戦いは数じゃねぇのかアニキ……。


「これで、下準備は完了でいいのか……?」

「レアーレ君、きついなら寝たまへよ。過労でダウンとか嫌だぞ俺は」

「私に限って過労で倒れるのはありえない」

「あっそう」


 そういえばレアーレの神の贈物(ギフト)再生させる神掌(リプロダクション)』は過労とかそういうのとは無縁か。

 加害性にばかり目がいって軽く忘れてた。


「で、何だっけ……下準備? 今すぐ仕掛けられるか仕掛けられないかで言うと仕掛けられる。なんだけど、ちょっと不安要素がねぇ……」

「不安要素……? ああ、例のだな」


 納得した顔のレアーレ。


「そう、最初に手駒にしたレジスタンスグループ。いうならばサメジハマグループのメンバーが足引っ張らないか不安なんだよね」

「無能の存在が不安ならば先んじて始末するべきではないか?」


 俺に寄りかかってるアリスが口を挟む。


「できる事ならそうしたいけど、そうするとサメジハマとレンカも離れてっちゃうから勿体無いんだよ。あの二人は有象無象よりかは遥かに使えるし」

「うーむ、確かに。サメジハマは潤滑油として、レンカは戦力として使えてたからな」

「そういえばサメジハマは別グループと会う時に重宝したとか聞いた気がするな」

「潤滑油で無くてもサンブルックス人で裏の人間やってる訳だからね。奴は適当に矢面に立たせて話をスムーズに進める為の必須アイテムよ」

「もはやモノ扱いか……」


 レアーレは呆れた顔をしたが、自分の神の贈物(ギフト)の能力を思い返し「私も同じ穴の狢か」と苦笑いする。


「初動の作戦はどうするかなぁ……。一斉宗教勧誘は、意味無さそうだし……二番煎じだし……」

「……一斉宗教勧誘?」


 初耳なのか疑問顔のレアーレ。


「私も又聞きだが、メシアがカルディッシュで使った作戦らしいぞ。民衆を盾にして、民衆に姿を隠しながら闇討ち……だったか?」

「ゲリラ戦法って中途半端な人間によく効くよね」

「やはり君は外道だな……」

「外道で結構コケコッコー。今回は普通に補給路壊して奇襲仕掛けてって感じになるか……。んー、カルディッシュって結構人材豊富だったんだなぁ……」


 俺は腕を組みながらボヤく。


「たしかにサンブルックスの連中はカルディッシュと比べると凡庸な者が多過ぎるように見えるな」

「だしょ? それにやっぱ国とか組織とか人がある程度集まると根元が腐る腐る」

「手を伸ばせば手に入る甘い蜜の誘惑に抗えない愚か者が多いんだろうな」

「そいつらもこいつらもみーんなレアーレの餌食になってもらったけどね」

「人脈、財力、人望。それらを持ち合わせたとしても純粋な暴力には勝てないのが世の理不尽を表してるよね〜」


 スマルドが部屋に入ってきた。


「それにしても、二週間でこんな豪勢な部屋を自由にできるとか……」

「無駄話はいい。お前が来たという事は、目処でも立ったか?」

「はい。例の物は完璧な稼働を目標とするなら最短で三年掛かります」


 そりゃマズイ。

 首を長くして待つにしてもキリンの首も自転車のサドルみたくすっぽ抜けるくらいマズイ。分かりづらいか。

 どのくらいマズイかっていうとマジマズイ。


「長過ぎる。使い物になる程度だったならどのくらい時間が必要なんだ?」

「んー、完成を目指さないのであれば半年……ですかねぇ?」

「あらー、スマルドさん?」


 圧を感じる笑顔でラベッタが入室した。


「ああいや僕は別に楽しようとか考えてないよ!? ラベッタ君だってこのくらいは掛かるって試算してたでしょ!?」

「それは私の神の贈物(ギフト)を使わなければという但し書きが付きますよね?」

「ラベッタの神の贈物(ギフト)は時を操る能力だったな」

「はい。研究室の空間を対象に神の贈物(ギフト)を掛け、緩やかな時の流れにすれば時間を大幅に短縮できます」


 時間を操れるなら時間停止でもすりゃいいと考えるが、時を止めるのは対象が大きくなるほど負担が増すって前に聞いたから何も言うまい。

 体力やら脳に負担が行くらしい。

 極めつけは長時間の使用から能力解除すると時差ボケがエグくてダウンするとか。


「ラベッタが能力を使えば完成品はいつ上がる?」

「最短で四ヶ月ほど」

「……悪くないか。じゃあ、それで進めてくれ」

「分かりました。…………ところで、鑑定眼の研きゅ……検査はいつ頃実施しますか?」

「そっちの仕事が一段落ついてからでいい。細かい性能試験とか、いつかはやらないととは思ってたからな」

「楽しみにし……楽しみにしてますね! それでは失礼します! ほら、スマルドさんも!」

「ああ、ちょっと襟首引っ張らないでぇ!?」


 バタン。扉が閉まった。

 というか、ついに取り繕わなくなったなあいつ。

 ……いつもの事か。いつもの事だな。


「あー、そういえばなのだが……」


 アリスが微妙な顔をして切り出す。


「うわ、何だか嫌な予感……」

「同感だが聞くしか無いだろう」


 今、俺とレアーレはきっと同じような顔をしてる。

 すっごくイヤーなものを目の前にした時のような顔をしてる。


「…………う、うむ。サメジハマグループが作戦行動中にだな」

「サメジハマとレンカを抜いたサメジハマグループが?」

「作戦行動中に何をやらかしたんだ……」


 すっっっごく聞きたくないが、仕方ないから聞く。


「ジョウガ含めた何人かが命令違反して下手を打って中央に捕まったらしい」

「…………………………はぁ」

「長い溜めの溜め息だな……。いや、気持ちは分かるが」


 こーれ面倒です。

 お荷物だなんだと散々揶揄してきたがまさか本当に重荷になるとは……。


「サメジハマとレンカにはまだやってほしい事があるんだよなぁ……」

「だが、二人の特性を考えると」

「うむ。私達が救出に動かなければ死んででも離反するだろうな」


 あの二人は別にいなきゃいないで支障はないけど、いた方が便利だからなぁ。


「あれらに仲間意識持ってるのだけが目立った欠点だけど……」

「予見できる事態だったはずだが?」


 レアーレがわざとらしく眉を上げてムカつく顔をする。


「バカやるバカの行動なんて一々考えるだけ無駄だろ。ある程度仕事振らないと余計な事始めるし……だから奴らには必要最低限の情報しか与えてなかった訳だしね」

「尋問されても吐く有益な情報が無い……とは言い切れないだろう?」

「あー、俺らの情報ね。それはもう有益とは言えないかもだ」

「それはどういう……?」


 ピンと来てない顔のレアーレ。


「サメジハマグループ救出ついでにサンブルックス解放と洒落込む」


 無言で目を見開くレアーレ。

 理由を知ってるアリスは「うむ」とやる気満々といった風貌で頷く。


「……随分と急だな。予定日はもう少し先だったじゃあないか」

「さっき面白い情報が入ってね。何やらカルメロルツがギルナクスに戦力投下してるらしい」

「うむ。目の前に降ってきたチャンスに予定を繰り上げてカルメロルツに進撃する、という訳だな」

「その情報は確かなのか?」


 レアーレの懸念も最もだが、それは事情を知らない者の思考だ。


「ネバンネン・ハーデルファイツ。カルメロルツ国王カンベルトの騎士団の一員。カルディッシュ最後の王族ノーランド・カルディッシュの懐刀ガラルストス・デタルーに成り代わり長年に掛けて騙し続けた優秀過ぎる諜報員」

「それは、まさかとは思うが……」

「そのまさかさ!」


 ビシィ! 勢いよくレアーレに指差す。


「なるほど……神の贈物(ギフト)、か」

「うん。だからロアルナとビルポタスに北上する時は流石に神の贈物(ギフト)使うから。帰港予定日より早めに攻め落として出張組の帰る国を丸々掃除してあげよう」

「物言いが畜生のそれだな」

「本物はあっち。俺のは養殖」

「うむむむむ……っ」


 納得できず唸るアリス。


「次からは最初から本丸落としに行くからカルディッシュほど能力は使わない……って言っても納得しないよなぁ」

「当たり前だ! マヒルが神の贈物(ギフト)を使い続けていけば、いつか必ずマヒルの記憶から私が消え去る事になる……。そんなの悲しいし、虚しいではないか……」


 アリスの目元に雫が溜まる。


「アリスが俺の運命であるなら、きっと記憶から消える事は無い」

「そんな見え透いた嘘を……っ」

「俺が忘れる訳が無い。──アリスだけは」


 ガバァ! 一拍置いてアリスが飛びついてきた。

 腕を頭に回して、肩に顎を乗せている。耳元のそばだから息遣いが近い。

 あとやわっこいのが胸元に押し付けられてる。


「なあ、マヒル」


 静かに俺の名を呼ぶアリス。


「これが私の体温だ」


 抱きつく腕の力が強くなる。


「その体にしかと刻み付けるがよい。記憶から私がいなくなっても、体だけは覚えていられるように」


 啜り泣くアリス。

 俺に返せる言葉は無い。

 俺が口に出せる誠実な言葉が浮かばないから。

 だから抱き締め返した。

 アリスに負けないくらい強く。強く。


「やはり女誑しか……」


 とりあえず空気を読まず呟くレアーレに中指を突き立てた。





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