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無能勇者の烙印  作者: 汐倉ナツキ
第二章

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サンブルックス・カルメロルツ領③/久々の布教



 あの後どうなったかって?

 サメジハマ(モジャ頭)とレンカが青ざめた顔して必死に前言を撤回してた。

 で、家族やお仲間を殺されるくらいなら皆で俺達に隷属する方がマシだってたった今仲間達を説得しに行った。


「だったら始めからそうしろってーの」

「シン、怒ってるのか?」


 アリスが顔を覗いてきた。


「怒ってない」

「でもイライラしてるだろう?」

「………………そだね」

「……むむむ、デメリットさえ無ければ私だって『使うな』とは言わぬのに……」

「分かってるよ、心配してくれてるのは。ただ、今だけは縛りプレイしてる暇は無いからさ」


 俺はサンブルックスの地図に視線を落とす。


「それで、首尾の方は?」

「シュミレート済み。始まりから終わりまで全部ね」

「ほう? ならばカルディッシュで見せたその力、存分に見せてもらおうじゃあないか」

「ただ、前より鑑定眼の精度が少し悪くなってるから所々イレギュラーは発生するかもしんない」

「鑑定眼に不具合!? それって、いつ、どのような感じでそうなったのかしら!?」

「ラベッタステイ」


 ソラスに引き摺られて引き離されるラベッタ。


「ともかく、パンデミック大作戦は頓挫したが、その代わり各々で頭を使える兵力を手に入れる事ができた。裏切ってくるかもしれない事がネックだが、そうなった場合サンブルックスは死の国になるだけだからあまり気にしなくていいか」

「ふむ。ここまでが軽い前提情報だな」

「そんな大層なものですら無いけど、まあいいや。やる事はカルディッシュでやった事とあんまし変わんない。仲間を増やして、敵の動きを制限して、本丸を落とす」

「簡単に言うけど、本来その三つ全部が無茶だからね?」


 スマルドが口を挟む。


「だが、シンはやってのけたぞ白髪メガネ」

「最後はほぼアリス頼りだったけどねー」

「はは〜ん。ギルナクス帝国と沖合でやり合ってたりしてるのがカルメロルツの隙だよね」

「でも、だからといって一枚岩では無いのがカルメロルツですよね」


 ラベッタの言う通り戦力は圧倒的だし、植民エリアの人材はほとんど労働に回されて本来あった力を削がれている。

 だから地下に潜んでいる反抗勢力を取り込んでいた訳なんだが、俺は神の贈物(ギフト)を使えないし前回とは条件が違う。


「これ、ちょっと時間掛かるなぁ」


 うーん。わんわん泣きなくなってきた。




 ▽




「お、遅くなりました!」


 適当に作戦の擦り合わせをしていたらサメジハマ(モジャ頭)達三人が息を切らしながら戻ってきた。

 ああ、いや、二人だけが戻ってきた。

 気絶したままのジョウガはアジトに投げ捨ててきたらしい。


「それで、僕達も精一杯状況を伝えたんだが、神の贈物(ギフト)の事とかカルディッシュの事とかを信じてくれる奴が誰もいなくて……」

「という事は──パンデミックか!」

「嬉しそうに言うんじゃあない」


 呆れるレアーレ。


「だって感染エンドが一番楽なんだもんよ」

「シンは結構面倒臭がりだからな!」


 アリスは「ふふん!」と胸を張る。


「何で君が得意げなんだか……まあいい。それじゃあ始めるか」

「よろしく」

「まっ、待って下さい!」


 サメジハマが待ったを掛けてきた。


「貴様が持ち掛けてきた条件だろう? いったい何を待てと言うつもりだ?」

「やっぱ無しって反故にしようとも意味無いよ? レアーレの神の贈物(ギフト)って相性のいい神の贈物(ギフト)でしか無力化できなそうだし、君達じゃどうにもならないでしょ?」

「だ、だからです!」

「──は?」


 だからってなんぞ?


「僕は仲間達を失いたくない。でも、僕とレンカだけじゃ仲間を説得できなかった。だから、貴方方に説得してもらう為に連れてきました」


 角からゾロゾロとみすぼらしい格好の男女が現れた。

 彼らはモジャ頭のレジスタンスグループだ。

 一〇代後半から四〇代中盤で組織してるらしい。

 でも、人数が少ない。

 二〇人に届かない頭数。

 流石に魔導具などの装備は整えているらしいが、それも旧型。

 レジスタンスって言ってもまあ、ピンキリあるわな。

 そいつらが疑念の視線を俺達に向けてくる。


「こいつ、シンに断りも入れずに勝手な事を……っ!」

「いや、いい。レアーレ」

「いいんだな?」

「こいつらのリーダーが言ってたじゃん。説得しろって」

「確かに、説得の手段については何も言ってなかったよねぇ〜」


 スマルドがケラケラ笑う。

 仲間が増えるのがそんなに嬉しいか。被害者の。


「ま、待って下さい! 僕はそんなつもりで言った訳じゃ──」

「俺らが上、お前らが下。他に何か言いたい事は?」

「ち、畜生……。何で……こうなるんだ……っ!」

「それはひとえに君が説得できなかったせいだね」

「くっ!」


 悔しそうにギリギリと歯を噛み締め、顔を逸らしたサメジハマ。


「それで? 神の贈物(ギフト)だとか植民エリア解放したとかホラ吹いてる連中ってのはこいつらの事か?」

「おれらのリーダーも焼きが回ったもんだぜ」

「あんたらがサメジハマに苦労かけてるから疲れておかしくなってんのよ」


 あーらら。リーダーが必死になって守ろうとしてる仲間達からボロクソじゃんよ。

 そんなこんなボロクソ言ってる奴らの肩をポンポンと軽く叩いて回るレアーレ。

 起爆スイッチは設置し終えた。

 あとはボタンを押すだけとなった。


「サメジハマ君、俺らとしては時間を掛けたくない訳だ」

「わ、分かってます……!」

「という訳でレアーレさん、やっておしまい」

「何だその口調は……」


 レアーレは溜め息を吐きながら先程三人にやった事を繰り返した。

 どうなったかって?

 阿鼻叫喚って感じになったよ。




 ▽




 レジスタンス組織、サメジハマグループのアジトに場所を移した。

 グループのメンバーは皆青い顔で俯いている。中にはガクガク震えてる奴もいた。


「パンデミック作戦ができないなら予定通りメシア教徒を増やしたいところではある」

「時間が無い。そう言ったのは君じゃあないか」

「そこなんだよレアーレ。天候で奇跡を演出するのにも職業の特性をフルに使うにしても神の贈物(ギフト)使った方が時短なんだよ」

「何度言わせるつもりだ! それはきゃあああああっか! 却下だ!!」

「と、却下らしいから無理だけど……人間楽を覚えると駄目になるってガチだったんだなぁ……」


 俺達は細かい瓦礫を蹴り払い、ちょうどいい大きさの瓦礫を椅子に座っていた。


「じゃあ役割としては前と同じでアリスは俺の護衛」

「うむ」


 頷き俺の隣に座るアリス。


「レアーレはネズミ算式に能力掛けまくっといてよ」

「それは……王都の人間だけでいいのか?」

「ノン。手の届くところは全部」

「国内中だな……了解した」


 少し嫌そうな顔で頷くレアーレ。


「スマルドは俺の指示通りにアレの開発ね」

「ホントにやるんですか〜?」

「資源ならいくらでもあるだろ?」

「そういう話じゃなくてぇ……」

「スマルドさん、私もお手伝いしますから一緒に頑張りましょう!」

「随分と楽しそうだね君……ってそういう話じゃなくて!?」


 唸りながらガリガリと頭を掻き毟るスマルド。


「単純に、ゼロから始めるとなるとものすぅーっごく時間が掛かるんですよぉ……電子やら電気やらの回路についての説明は受けましたけど……軽くですけど……」

「軽くなのは俺が詳しくないからな」


 俺は一介の男子高校生だぞ。

 電気技師とかじゃないから電気回路とかそういうのは概要の触りしか分からん。


「その回路っていうものは魔法陣に似てるわね。動線とか制御とか……燃えてきますね、スマルドさん!」

「あああ、やる気になっちゃったよ……しょうがないなぁ……」


 ガックシと肩を落とすスマルド。


「ラベッタはスマルドの監視兼開発」

「ええ」

「護衛にはルーシアも付けとく。ソルトはラベッタ達のお目付け役ね」

「また……留守番、ですか……」


 少し不満そうな顔のソルト。

 役割を与え過ぎないのも良くないらしい。ていうか意味ある役割与えた事あったっけ?

 とにかく不満を抱えていつか爆発するのは困る。


「じゃあ、そうだな……。レベルを15上げたら俺の護衛に加えるよ」

「ほ、本当ですか!?」

「うん」

「でも、15もレベルを……いや、頑張ります!」

「ガンバって」


 この世界は『救世主(メシア)』と同じようにレベル上げはそこまでシビアじゃない。

 シビアじゃないんだけど、ゲームと同じ感覚でレベル上げすると流石に死ぬ。

 生身で四六時中レベル上げなんてしてたら身体にガタがくるし注意力も散漫になる。

 そもそもアップデートでマネーイズパワーシステム導入されてからバトルで経験値稼ぐ奴なんてほぼほぼ絶滅したわ。

 それは置いといて。


 この世界でレベルを上げるには魔物を倒す以外にも手段がある。

 筋トレしてパワーを上げたり走って持久力付けたり、能力値を地道に上げればレベルが上がる。亀並の速度で、という但し書きは付くが。

 だから危険無くレベルは上げられるだろうが、そのやり方だと時間が掛かる。

 となればソルトが選ぶレベル上げの方法は一つしかない。


「魔物狩りか」


 アリスはソルトの方をチラリと見た。


「まあ、そうでもしないと何もしないまま終わっちゃうだろうしね」

「思えば勝手に突撃する癖があったな、あの子供は」

「え、俺がいない時の方が結構暴れてたんだあの子……マジか……」


 気付いた時には知らないところで野垂れ死んでそう。


「一応、護衛の優先度を上げとくか」

「それで、シンはどうするのだ?」

「そりゃ決まってる」


 俺は横に置いていた黒い衣装を見せる。


「まずはレジスタンス連中を使って──布教活動」




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