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無能勇者の烙印  作者: 汐倉ナツキ
第二章

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身分証明?


 さて、あの後だが、信者達はレアーレの『蘇生』で蘇った。

 最初に殺された四人も五体満足で完全復活。

 『蘇生』と『再生』のコンボでフルコンボだドン。

 スマルドとソラスも蘇って不思議そうな顔をしていた。

 ただスマルドは神の贈物(ギフト)能力で生き返ったと当たりをつけていた。

 まあ、分かる奴には分かるか。


「マヒルさん……えっと、一体何が……?」


 ソラスは死んだショックで記憶が飛んだらしい。

 ある意味よかったかもしれない。

 本人的にも、俺的にも都合が良い。


 迷う事無く見捨てた事すら忘れてるからね。


 俺の名前を知ってるのは朝の会話を技能で聞き耳立ててたからだろう。

 小声で名前を呼んできたので弁えてはいるらしい。

 流石王族、賢いね。


 顕著なのは信者達の反応だ。

 蘇ったのはメシア様の御加護のお陰だとかなんとか……レアーレが訂正したそうだったが黙っててもらった。


 信者達はレアーレが四人を殺した首謀者である事を知らない。

 だから偽りのバックストーリーを作った。


 あのグールらの正体は魔物では無くゾンビ。

 そしてそれらを作っていたのはイリオスの研究者と秘密工作員。

 他国の辺鄙な土地で死なない兵士の実験を行っていた。


 その真実に近付き過ぎてしまったからイリオスの兵士に捕らわれ殺されてしまった。と、そんな感じで。

 よく考えもせずとっさに喋ったから適当さが否めないが、信者達が納得してるからよしとしよう。ヨシ(指差し確認)!


 それはそうと俺達のパーティメンバーにレアーレ・バルトラードが追加加入した。


 正式決定した時に有名なRPGゲームの仲間になった時のSEがふと頭に流れてきたのは完全に余談。

 こーれは集中力切れてるね。


 弔い合戦とか面倒事と辟易してたが、とんだ拾い物だ。


 レアーレは軍事大国イリオス王国の打倒の協力を条件に仲間になったが、やる気湧かねぇなぁ……。

 ソルト=マズラクール率いる正規軍の第三陸軍……だっけ?

 それらとやり合うとかマジ無理。

 どれだけ数揃えたところでアレらを相手するとか死ぬって。


 ああ、レアーレは死んでも任意で生き返れるのか。


 いやそれにしてもあれで第三陸軍って……。

 第一陸軍とか第二陸軍も似たような戦力なのか?

 自分を兵士長って言ってたよなあいつ。

 軍団長とかはもっと強いのか?

 そんな奴らを相手に国を落としに行くとか自殺かな? 自殺だね。


 それならカルメロルツを相手する方がまだハードルが低いわ(もはや舐め腐ってる)。




 ▽




「え、サンブルックスの王都って身分証明出来無いと入国出来無いの?」

「ああ、簡単な物でもステータスプレートがあれば入国は可能だ。指名手配されてたり犯罪歴が無ければ、だがね」


 レアーレが自嘲しながら説明してくれた。


 俺はステータスウィンドウを表示出来るけど、勇者って知られるのは嫌。

 ソラスも捨てられる前にステータスウィンドウを開発してたらしいが、名前で王族バレするかもだから駄目。

 レアーレはイリオス王国から全国の冒険者ギルドに指名手配を依頼されている。

 毛色が違うけどアリスも実家から緊急指名手配を食らってる。


「このパーティメンバーの中で俺、ソラス、レアーレ、アリスが身分証明出来無いのか」

「僕は賢者だから賢者の塔と連携してる国ならフリーパスだよ」

「そうか。お前は最悪木箱か袋に詰めて行こうとしてたから手間が省けたよ」

「んんん〜〜〜ッ!!!?」


 スマルドは顔を青くして小さなソラスの影に隠れた。おい大人。


「四人で冒険者の登録しに行くか……確か、登録すればステータスプレート貰えるんだよね?」

「うむ、登録料は掛かるがな」

「あの……あと、有能な冒険者が常駐してないギルド以外は試験があるらしい、です」


 ソラスが情報を補足した。

 試験……試験か。

 まだ数ヶ月なのに今や懐かしい響きだな。


「なるほどね。まあ、出来れば身分証明の件はもっと前に訊きたかったね」


 あのゾンビ騒動からすでに二週間が経っている。

 ずっと荷馬車で移動してたから、もうサンブルックスの国境に入ってしまっている。

 レアーレが拠点にしてたビルポタスで教えてくれてたらそこで登録しに行ったのに……これから騒動を起こす国で登録するとかちょっと危機感足りてないよね。


 溜め息を吐いたあと「まあいっか」と考えるのが面倒になり楽観しておく。


 ちなみに荷馬車は俺達のを含めて二台になった。

 今いない四台はビルポタスの各街に配置してメシア教をそれとなく広めさせたり情報収集させたり協力者を作らせたりさせている。


 ロアルナにも四台残してきたから人材はカルディッシュを出発してから八割減。

 ただ、戦力はレアーレだけでその八割を優に超えている。

 やっぱり神の贈物(ギフト)って無法だなぁ。


「近場だと北方支部だ。あと二日も走らせれば目当ての街に着くだろう」

「じゃあ、そこでいいか」

「うむ、というかそこしか無いがな」

「北方支部の他には王都にある中央支部と国の端にある西方支部と南方支部の三箇所があります。でも、その三つは論外ですよね」


 その三つは時間ロス的に論外だが……。

 それよりもソラスが積極的に会議に加わってきてるのが意外だ。

 小出しされる情報はそこそこ使えるからありがたい。


「そういえば、マヒル・シオクラ君、君はカルメロルツに縛られてる二人を連れ戻すって言ったよね」


 顔色が戻ったスマルドが話しかけてきた。


「それが?」

「僕も連れ戻すのに協力するからさ、勇者セイト・クギミヤの身体を研究する口添えを本人にしてくれないかな? 君には手を出さないし、女性の勇者にも手を出さないからさ。勇者召喚の魔法陣の他にも調べれば勇者に刻まれた情報が元の世界に帰る糸口になるかもよ〜?」

「クギ、ミヤ……」

「ははぁ〜ん……駄目かなぁ?」

「外道が……っ!」


 レアーレは不愉快を隠さない。

 真昼の想いを知っているからだ。

 良い人を僅かでも危険な目に遭わせるのは駄目だ。

 軽薄な態度を続けるスマルドに侮蔑の視線を送るが、彼は気にした様子は無い。


 アリスは真昼の様子が少しおかしい事に気が付いた。

 なにか、いつもと違う感覚。

 上手く言葉に言い表せないが、確信はあった。


 そして、意を決した真昼はスマルドに返答する。






「クギミヤって───誰だっけ」



「え?」


 スマルドが間の抜けたマヌケ面を晒した。


 クギミヤ、クギミヤね……漢字にすると釘宮か?

 名前の方は……宛字含めるとエグい量あるから分からん。

 釘宮セイト。うーん。


「訊き覚えが無いな。一体何の話をしている? 俺を揶揄ったかスマルド」

「えええっ!? だって……えええっ!?」


 スマルドが俺の顔を見たり他の奴の顔を忙しなく見渡してる。

 その様子から少なくとも虚言を吐いたようには視えないが、虚言を吐いたようにしか視えない。だってクギミヤとか知らねぇし。


「えっと、じゃあナデシコ・ミコシバの名前に訊き覚えはある……?」

「知らん。さっきから誰の名前を言ってるんだ? 日本人の名前っぽいけど」

「えええっ!? なんでぇえええ!?」

「む。うるさいぞ」


 どこからか重低音が鳴り響き、長椅子から床に叩き落とされたスマルドは強制的に黙らされていた。

 黙らせた時に荷馬車が少し揺れたが、よくやったアリス。


「マヒル、私の運命よ」

「改まってどうした?」

「そこの白髪メガネの言った名前、セイト・クギミヤとナデシコ・ミコシバの二つは確かに以前マヒルから訊いた。カルメロルツから連れ出したい同郷の仲間だと」

「………………マジ?」

「マジだ。私がマヒルに嘘を言った事があるか?」

「そりゃ無いけど……」


 もちろん俺にそんな名前を口にした記憶は無い。

 そんな感じの会話をした記憶はあるけど。

 だが、アリスは嘘を吐かない。少なくとも俺にだけは。

 そうなると原因はアレしか考えられないか。


 俺が神の贈物(ギフト)を使用する際のルールの二つ目。


 能力を使用する際に生じる代償。

 それしかない。

 記載が無く代償の内容が分かってなかったが、今の話を総括すると『記憶の忘却』、『記憶の削除』、『記憶の改変』のどれかかその複数。


 今のところ人物限定っぽいけど、そう何個もポロポロ忘れさせられたら廃人になっちゃいそうだ。

 忘れる前なら大騒ぎだけど、忘れたあとに知った今は別に不便は感じてない。

 最初から知らなかったようなものだからね。しょうがないね。


 そういえば最近あまり危機感を感じられないのって代償のせいか?

 ……いや、なんでも何かのせいにするのはよくないな。

 気を引き締め直すのは意思の問題だ。

 きっとそうだ。そうだといいなぁ。




 この時でも真昼は普段であれば感じたはずの不安を感じる事は無かった。

 その事を内心杞憂するが、やはり不安は感じられなかった。


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