表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
LUNA  作者: 猫野ニャン吉
2/2

1話

設定を無駄に増やしてすみません

「ねぇ、ここにいるよ」


少年の声は誰にも届かない。


「ここにいるってば」


夜。身体も髪も黒い少年に、誰も気付かなかった。


「ひとりぼっちは、もう嫌だよ…」




午前10時。

LUNAは商店街におつかいに行っていた。


「たまご、パン、牛乳…これで全部」


帰路についていた時、道端に体育座りでうずくまっている少年を見つけた。


彼は肌が黒く、髪も嘘みたいに真っ黒であった。

LUNAが見つめていると、少年はこちらを睨む。


【影人】…こんな所にもいたのか


そうLUNAは思ったのだ。


いつの時代も差別というものは無くならないのだろう

戦争が始まる前、いや、もっともっと前。

もしかしたら、人類が知能を得た瞬間からか。

この時代では、【影人】と【陽人】が比較されていた。

肌や髪が黒い影人と、明るい肌と髪色の陽人。

ただ、色の違い…というだけでもなく、昔に少し争いがあったらしい。


そして人々は繰り広げた。

互いが互いを虐げる。

誰も得をしない、悪循環を。


「どうせお前も俺を蔑むんだろ」


不貞腐れたような態度で、少年は目を逸らした。


「太陽が出ていないと、居るかどうか分からないって悪口言って、殴って、蹴って…陽人はそれして楽しいのかって話…まぁ楽しいからやってるんだろうな、ひねくれた世界だ」


つらつらと愚痴を零す彼を、ただひたすらにじいっと見つめているLUNA。

流石に少年も気味が悪くなったのか、LUNAに問う。


「あ、あのさ、何?俺が気持ち悪いの?なら早くどっか行っー…」


言葉を覆うようにLUNAは口を開く。


「いえ、初めて影人を見たので。【学習】を…」


「…俺、影人って呼ばれんのきらいなんだけど」


「本当に真っ黒なのですね、データに加えておきます」


「煽ってんの?」


「いいえ、私はあなた達を見るのが初めてで。名の通り、影のような黒さだと思ったのです」


とうとう少年は怒りをあらわにした。

ふざけるな、と声を荒らげるが、彼女はピクリとも動かない。


「おとぎ話じゃねぇんだ、俺は。

人間だ。内臓だって脳みそだって陽人と変わらねぇんだ、なのに、なのに…」


1度顔を伏せてしまった少年だったが、パッと顔を上げると、不思議と彼の顔は決意を抱いた、とでも言うように変わった。


「決行する。今日の25時。明日の1時。…お前のせいだから、その鉄くせぇ脳みそに入れとけ」


言葉を吐き捨てると、少年は小走りでその場を去っていった。


LUNAは、気に病むことも無く真っ直ぐに家に帰った。



「LUNA、変わったことはあったか?」


「影人を見ました」


家に着くやいなや、LUNAは牛乳やたまごを冷蔵庫に入れる。

灯は新しい機械の制作に勤しんでいた。


「へぇ、この辺にもいるんだ」


「突然声を荒らげ何処かへ行きましたが」


「…LUNA、やはりお前は感情を早く学ばないとな」


やれやれ、と言うような表情で苦笑いする灯は、LUNAに顔を向けた。


「どうせプライドやらなんやらをズタズタにするような事でも言ったんだろ。そういうとこが駄目なんだぞ…復讐されるのはゴメンだから、学んでくれ…」


「ですが、感情を汲み取ることなど…」


「まぁ、少しづつ学べ」


少しの説教を受け、家事や整備をしていると、時刻は既に24時を超えていた。


「寝ないと、明日は仕事があるからな」


「主人。おやすみなさいませ。」


「ああ、おやすみ。」


ラボでLUNAはスリープモードに入る。

灯も自室のベッドで眠りに着く。

いつも通り。いつも通りの夜だった。



…25時


地響きのような音で灯は叩き起される。

何事かと思い、カーテンを開けると、


無い。

無い、無い。


月が、夜が。


窓の外は、昼の世界であった。


灯は完全に目が覚め、人工太陽、及び月の制御装置の方へ真っ直ぐに向かっていった。


「昼でロックされたまま、パスワードを変えられてる…!?外部からのハッキング…!!」


灯は悟る。


夜は、もうやってこないのだと。




リリリン、リリリン


携帯が鳴る。


「灯、どういうことだ!?」


電話の相手は、灯の旧友の中田という人物からだった。


人工太陽、月を開発する際にかなりサポートしてくれた人物。灯の次に開発に関わっていた者だ。


「ハッキング、あの5重ロックをどうやって解いた…?」


開発は灯、中田を含めた5人で行った。

そして一人一人が暗証番号を決め、誰も解けないようにしたのだ。


「俺は暗号を教えた覚えはねぇ、灯は?」


「ない…ってことは」


「内通者…?」



対策の案を練る通話をしていると、装置から大きなエラー音が鳴る。

その内容はこうだ。


「月の出現、及び夜を削除しました」


削除。


ロックならまだしも。


戻れない、戻せない。


「もう一度…夜を、作ればいい」


無謀だ。分かってる。


これしか、ない。




「LUNA、スリープモード解除。」


ゆっくりと目を覚ますLUNAに、灯は重く言葉を綴った。


「LUNA、支度をしなさい。お使いを頼む」


国を戻すための、月を、夜を作るための必要物資。


「内容は」


これ以外手段はない。


「宇宙版核爆弾が爆発した時のみに得られる、宇宙物質、【01】をー…」

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ