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-作品保管庫  作者: 名無し
2/2

ロロチャン

この物語はフィクションです。

主に自分用なので、意味不明な描写も多々あります。

今ここで、ブラウザバックを推奨します。


夕暮れに染まる街。帰宅する人達の群れに歩幅を合わせながら、小さくため息をついた。

もう何度目だろうか。

歩き慣れた道、見慣れた看板、靴とエンジンが奏でる喧騒…

それら全てが自分を此処に縛り付けているような、何とも言えない息苦しさが襲ってくる。

何か、新しい事をしたい。一時でもいいから、こんな代わり映えしない生活に、変化をーー


『開店中』


たった一言、それだけが丁寧な字で書かれた黒板スタンドが置かれていたのは、よく知る外観の古民家の門前。

昔、祖父母が住んでいた中古住宅。

最近まで気にしていなかったが、恐らく誰かが買ってここで店を出しているのだろう。比較的綺麗になった外観を見ながら思案する。

だが、これでは何の店なのか分からない。

飲食店なのか、古物屋か、はたまた他の何かか。

他の人々はその看板に気付かないか、あるいは目配せをする程度で、各々の目指すべき場所に向かって往く。

立ち止まっているのは、一人だけ。

得体が知れない、関わらないでおこうと足を留める恐怖より、非日常を味わえるかもしれない強い期待と懐かしさに背を押されるまま、門をくぐり抜けた。


門の外からは見ることの出来ない、庭先に飾られた盆栽や花を横目に見ながら、さくさくと砂利道を踏みしめて玄関へ向かう。記憶にある光景とは違うが、きちんと手入れされているのを見ると家が生きている気がする。

新調された、昔と同じデザインの引き戸が目と鼻の先になってふと足が止まる。はて、ここからどうすれば。

呼び鈴らしきものは門にも玄関横にも無く。ノックするべきか、一度開いて声をかけるべきか、いやこのまま声をかけようか…等と迷っていると、カラカラと引き戸が開き、隙間から少女の顔が覗いた。

「えっと、一人?」

見たところ10代前半だろうか。幼くも、凛とした声。黒色のまっすぐな髪は肩口まで伸びており、藍色の質素な着物も相まって色白な肌をより強調させている。

こんな姿の子供が出てくるなんて予想しておらず驚いてしまったが、すぐに気を取り直し小さく頷く。

「いらっしゃい。どうぞ上がって。」

そんな自分を、何処か安心したような少女は暖かく迎え入れてくれた。


彼女に案内されるまま、机だけがある小さな和室に足を運ぶ。祖父母の寝室として使われてたなぁと懐かしい思いがこみ上げてくる。

「すぐに持ってくるから、少し待っていて」

その言葉の意図を理解出来ず、はたと現実に戻り、外へ出ていく彼女に慌てて質問をする。此処はどういった場所なのかと。

「…そういえば言ってなかったね。

メニューのない食堂みたいなもの、って思ってくれたら。一緒に食べてほしいだけだから。」

じゃあ、とだけ残して彼女は障子を閉じた。釈然としない部分もあるが、今は何かが運ばれるのを待つしかない。

数分後に少女は部屋に戻ってきた。大小さまざまな小鉢を載せた盆を片手ずつに持って。

一つは目の前に、もう一つはその対面に置くと、彼女は人の居ない対面側に座った。

これはどういう事だろうか。すかさず彼女に質問をするも、さっき言ったことだと切り返される。

ますます分からず混乱している間に、彼女は「いただきます」と言って一人食事を始めた。

考えるよりも先に動く方がいい。そう思って、目の前に並べられた小鉢の蓋を一つ取った。


温かな湯気が顔を撫で、炊き立てのご飯の甘い香りが鼻に飛び込む。

別の一つを開けると、溶かれた味噌の芳醇な匂いが。

一つ、また一つと蓋を開ける度に彩りは増し、いつの間にか目の前には和食が並んでいた。

「早く食べないと冷めちゃうよ?」

手が止まっていたからか、正面から催促が飛んでくる。

何か裏があるのではないか。そんなことを考えながら恐る恐るご飯を口へ運ぶ。

……美味しい。

白米も、味噌汁も、塩焼きも、漬物も。出されたすべての料理がどれも一品で、何処か懐かしいような味がした。

目の前に彼女が居なければ、食事マナーなんて気にせず勢いよく喰らいついていただろう。

やがて小鉢全てが空になり、ふと彼女を見ると、お早いですねと笑いかけられた。

彼女はゆっくりと、自分のペースを守って箸を進めていき、「ごちそうさまでした」と声が出たのは大分後になってからだった。


「こうして話すのも久しぶりなので、何かお話しませんか?」

少女に話題を振られ、今まで忘れていた疑問が頭に浮上してくる。

どうしてこんなことをしているのか、君は誰なのか、料金はいくらくらいなのか…答えを待たぬまま一気に浴びせかけてしまう。

少々驚いた表情になった少女は、小さく何かを呟き、クスリと笑うと一つ一つ順番に答えてくれた。

名前は教えてもらえなかった(当たり前と言えば当たり前だが)。両親と食卓を囲めず、寂しい思いをしている為、不定期にこういうことをしているらしい。

料理は全て自分で作ったらしく、曰く和食店を営んでいたおじいちゃん達に教えられたそうだ。

料金に関しては、私が勝手にしたことだと言って貰おうとはしなかった。

何とも虫のいい話だが、年端もいかない少女が見ず知らずの他人を家に上げ、そのうえで食事を振舞うのは如何なものか。

そのことを注意しても、彼女は特に悪びれる様子はなかった。

「だって、私みたいな子供が出てくるなんて思わないでしょう?」と。

何度話しても進みそうにない為、ここで一旦話を切り上げた。

今度は彼女が質問をする事になった。最近何をしているのか、趣味はあるのか、お父さん、お母さんと仲は良いのか、友達はいるのか…。

どれも他愛ない話だったが、小さな事にも反応してくれる彼女と話していて少し心が軽くなった。


そろそろ帰ろうかと思い席を立つと、彼女は玄関まで見送ってくれた。

西日はとっくに沈んでおり、夜空には星のみが広がっていた。

「またいつか、気が向いたら開きますので。もし見かけたら来てくださいね。」

別れの言葉に苦笑いしながらも、手を振って門を後にした。

その機会があればまた来てみたい。今度は誰かを誘ってもいいかもしれない。

そんなことを思いながら古民家の方に振り向くと、未だ手を振る彼女の姿があった


翌朝、その家の前を見るとまた黒板が出ていた。

朝からしているのか、昨日の片付け忘れか、反対側の自分からは何が書かれているのか分からなかったが、無性に気になって仕方がない。

速足で門前を通り過ぎ、すぐに振り返る。


そこに書かれていたのは『開店中』ではなく、この家の解体工事の現在工程だった。

ここまで読んでいただき、有難うございます。


座敷童であるロロチャンが、家が解体されてしまう前に主人公に恩返しをする話なのですが、構成力が無く、中身が無くなってしまいました。


こんな‐作品の事なぞ忘れて、さぁ、貴方の日常に戻りましょう。

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