全ては守るために
僕だって友達とは戦いたくない。
でも、戦わなければならない。
友達は"魔王"なのだ。
友達ではなく敵なのだ。
僕はこの世界の防衛の要である、王都にいる。"魔王戦争"の時は世界中の国が団結して、"魔王"を倒す。
ここは、世界中の国の頂点に立つ『グリドニア』である。
「勇者様が到着なされたぞ‼︎」
ザワザワ……ザワザワ……
「勇者様だ!」
「魔王なんて倒してやる!」
威勢の良い声が聞こえてくる。
「勇者様よ、この世界を守ってくだされ。」
「もちろんそのつもりです、王よ。」
グリドニアに着くと、王との対面がある。
どっちが偉いのかわからなくなってくる。
魔王は4日後に攻めてくる。
その理由は"魔王戦争"で魔王が王都を攻める時は必ず同じ日に攻めてくるのである。
それが4日後なのである。
4日後……
王都の兵士たちと抜かりなく準備をした。
絶対に負けない。いや、負けられない。負けてたまるか。
「目標発見‼︎魔王確認。魔族……大量に確認‼︎」
「よし、弓部隊は牽制するんだ‼︎」
弓部隊が矢を放つ。
「予想通り、効果はないか……。」
もしかしてと思ったけど、ダメだったか。
「よし、戦闘部隊は前へ‼︎魔族を蹴散らせ‼︎」
『おぉぉぉお‼︎』
6時間後、勝負はついた。
こちらの惨敗。
人間と魔族の力の差が激しすぎた。
兵力の半分以上を失った王都は壊滅。
僕はわずかな兵士に守られて逃がされた。
僕は助かってしまった。できるのなら死にたかった……。
なんで守る側が守られてるんだ?どうして……守れなかったんだ‼︎
僕は村に隠れることになった。
魔王が攻め込むまでそこで待ってて欲しいと言われた。
村に戻ったらどうなるんだろうな。
きっと、「村の恥さらし‼︎」「お前は勇者じゃない‼︎」「お前のせいでこの世界は終わるんだ‼︎」とか言われるんだろう。
村のみんなが僕を殺したいと言うのなら、僕はおとなしく殺されようと思う。
数時間後……
村になんとか戻れた僕は傷だらけだった。
戦争に負けたことで満身創痍だったのもある。途中で魔族に襲われたということでもある。
そして何より僕を逃がしてくれた彼らを見捨てることはできなかった。
魔族に襲われた時、彼らは必死に僕を守ろうとしてくれた。僕は勇者なのに。僕は何もしてないのに。
僕は彼らを守ろうとした。
でも、あの恐怖が頭に残っていて……!
何も、何も守れなかった。
一人ずつ殺されていく彼らを見ながら、僕は言われるがままに逃げるしかなかった。
この世界を守りたいのに……!
え、早いって?ごめんなさい。