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吸血鬼の俺と猫  作者: 榊ゆのみ
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屑と猫と真祖

しがない農家の長男として、俺は生まれた。

貧しいとかどこと比べてかと言われると何とも言えないが、比べるとしたら一般の商人の家庭とかだろうか。そんな俺は、家畜の世話などをしてスクスクと成長していった。


俺が、10歳の頃だったか。

ある日,俺は村の大人や友達と一緒に村が属してる王国に馬車で向かっていた。村から王国までは、2日野営してやっと着くくらいの距離だ。その2日目の夜に俺は、モンスターの襲撃にあって大切なものを失った。


その事件以来、俺は当時一緒にいた友人の父親のような立派な王国の兵士になろうと励んでいった。そして、俺はそれから4年後に二等兵の下っ端の兵士になった。それからという日々は、正直想像していたものとは、違い地獄だった。


先輩の兵士に扱かれ、たまにはパシりにされたりなんてこともあった。まだ、扱かれる程度ならいいだろう。だが、俺の想像していた王国兵士と違って、現実は、醜くも王国の兵士は腐っていた。二等兵よりも上の立場を利用して、後輩をイジめたりなどというのは、日常茶飯事で反抗すれば、見るも無残なことになった例もあった。


それでも、俺は耐えに耐え抜いて2年目には、兵士長になった。それは、普通では考え

られない程の速さの昇進だった。だが、理由は簡単だ。


俺が仕えてる王国は、「リーティア王国」という。大陸の左の端にある国だ。

この国から右斜め下に位置する「メルキアド王国」という国がある。この国と俺の仕える「リーティア王国」は、俺が生まれたときから既にずっと戦争をしていた。度々繰り返される戦争に借り出される兵士には、特例があって、武功をあげた者に昇進するなどといった望みを国王が答えてくれることになっている。

「武功をあげる」などといってもわからないかもしれないが、用は敵の大将を倒すとかそんなものだ。


ちなみに俺は、自分の大将を庇って守ったりなどとしたことを称えて、小さな望みを叶えてもらえた。だから、俺は他のやつより昇進などが早かったりもする。そういうことを成してきたおかげもあり、俺は兵士長になってから2年後には、王宮門の護衛兵まで上がる事に成功した。


そして、現在俺はまた「メルキアド王国」との戦争に来ていた。今回の俺の役割は、至って簡単だ。

王様や貴族様たちが居座っている後ろの方について護衛するといった役割だ。


この立ち居地だと、武功をあげるといったことはまずできない。だが、最前線の兵士たちよりも危険が少ない。


最前線の兵士たちは、たまに前線が押されて、逃げてくる輩がいたりする。そういった奴は、後ろにいる貴族が命令してすぐにその場で殺されたりする。だが、後ろの兵士は、そういった戦う必要もなければ逃げる必要もないのだ。なので、俺はまた澄まし顔で戦争に来ていた。だが、今回だけは違ったのだ。


とてつもない衝撃が後衛まで伝わり、そして前線の兵士たちがふっとんだ。明らかに異常な事態だった。

国王や貴族は、驚いて椅子から腰を浮かして、前線を見ていた。中には、衝撃で狼狽した兵士や貴族もいた。


俺は8年間度々戦争に参戦してきたけど、こんなことは一度もなかった。

けれども、すぐにそれを起こした元凶の想像がついた。


普通の兵士や一般の徴兵された者が、こちらまで届く衝撃を出して攻撃できるはずがないのだ。

つまり相手国が大掛かりな兵器か、他の者が介入してきた可能性が思い浮かんだ。多分だが魔法使いだ。


「メルキアド王国」は、様々な兵器を作るのに長けていた。昨年の戦争より、新たな遺物(レリック)を発見して、それを使ってきた時があった。でも、それ程まで威力があったわけでもなかった。

だが、奴らはそれの仕組みを解読し、剣や武器に古代の兵器のように魔法を付加させることに成功した。

それを次の戦争では使用してきたため、こちらは多大な損害をした。だから、今回はそれを遥かに凌駕する兵器を作った可能性があった。


そして、もう一つの他勢力の魔法使いの介入の可能性だ。

一般の魔法使いならば、目の前の敵をどうにかしたりする規模の小さい魔法しか使えない。

だが、それは一般的な魔法使いならだ。


魔法使いの中でも、色々なタイプがあったりする。

それに種族によっては、魔力量の桁が違ったりする奴がいる。例えば、エルフ、妖精、魔族などだ。


それよりも、なぜ他勢力の介入可能性が出てきたのか。それは、簡単な話である。「リーティア王国」の右斜め上の方には、様々な種族が入り乱れてる都市がある。「マムルク」と呼ばれる都市だ。

そこには賢者と呼ばれる者がいたりする。


我が国の貴族どもは挙って、ここを我が国の領土にしようと策略をめぐらし続けたためここ何年かで、関係が悪化しきっていた。


それもつい最近だが、そこの都市の住人を拉致して、奴隷として飼ってる貴族の話を耳にした。

それも聞いたところによると種族がヤバい。俺に情報をくれた人によると耳が尖ってたとか。

俺の予想では、エルフの可能性が高い。


となると、エルフがこの戦争のどさくさに紛れて、その子を助けようとしている可能性が出てくるのだ。

この可能性を頭の中に置いて、すぐに国王を安全な場所に避難させようとした。だが、それよりも早く凄い衝撃が来た。


「ぐはっ・・・」俺は飛んできた何かが頭に当たり、気絶してしまった。

そして、気づくと俺の目の前には、悲惨な光景が広がっていた。先ほどまで、戦っていた草原地帯が焼け野原になっていた。それも死体があっちこっちに散乱していた。


俺は、自分の上に乗っかっているものをどかした。よく見ると先ほどまで椅子に座って、のうのうとワインを飲んで観賞してた貴族だった。そいつをよく見ると何故か首に穴が小さく開いていた。

俺は、すぐに何にやられたか想像がついた。吸血鬼の類にやられたのだと。


「(だが、さっきまで戦争をしてて吸血鬼など見た覚えなどなかったのに何故だ。)」とにかく俺は、貴族の金目になるものなどを剥ぎ取って、ポケットに入れた後に王国に向かった。


先ほどまで戦争してた地は、「タラール平原」という。そこからリーティア王国までは、4時間かからない程度でつくことができる。だが、大体の場合は途中にある「ロアンヌ」という都市で一度休息をとってから王国へ向かうのがセオリーだ。


「ロアンヌ」までなら1時間程度で着く。というか、ここからでも都市が見えるのだが、気のせいだろうか。門が破られてるように見えるのは。

「ロアンヌ」に近づくにつれて、状況がわかってきた。というか、だいたいの想像がついた。


まず門は、たしかに破られていた。それも豪快に結構な魔法を使ったであろう後が見て取れた。

片側はひしゃげて、もう片方は衝撃で吹き飛んでいた。そして、中に入って行くごとに喧騒が聞こえてきた。


「つまりあれか・・・ここまで攻められてるのか?」俺は、焦りながらも城を目指した。

途中で先ほどとは違うが聞こえてくるほうに出た。


「はっ・・・?マジかよ・・・。」俺は、頭が真っ白になった。何故なら、予想では敵国の兵士と自国の兵士が都市の中でも戦っていると思ったのに違ったからだ。実際は、自国の兵士などが魔物や悪魔と戦っていた。

とはいっても、一方的にやられてた。


「やばいやばいやばい・・・」俺はすぐにその道を通るのをやめ、違う道から城に向かった。だが、やはり魔獣や悪魔がいた。それも、見たこともない魔獣や悪魔だった。

今まで討伐などに出て、かなりの数の魔物を見てきたがこいつらは初めてだった。


すぐに違う選択をした。王様が「ロアンヌ」に来ているという仮定を捨て、直接王国に撤退することを決めた。すぐに行動に移し、門の近くまで戻ってきたが、そんな簡単にいけるわけもなかった。


「糞が!!くたばれ!!」何人かの兵士が悪態を吐きながら、門の周辺で魔物と戦っていた。

それも明らかに敵の数の方が多いため、兵士がやられていってるようだった。


「あぁ、どうしようか・・・」俺は考えたが、逃げ道はあの門のみ。そして、もし戻ったら、所々に魔物がウジャウジャ。


「とりあえず、あいつらに魔物が集中してる間に抜けるか。」俺はだるそうに剣を抜いて、門の方に走り出した。


「キシャー」戦場に突っ込むとすぐに犬型の魔物が突っ込んできた。こいつの爪の攻撃を剣で受け流して、速度を落とさず門に向かう。といっても、鎧が重いのでそこまで速度がでないため。そいつと他のやつが追ってきた。


「ガァァァァァァァァァァ」追跡してきた片割れが後ろから飛びつこうとしてきた。

俺は、こいつらは何度か同じのを討伐したことがあるので行動が読めていた。


「こっちくんな!!」俺は少しスピードを緩めて、振り返るざまに剣で横殴りにして、すぐにまた走り出した。とりあえずは、門から外に出れた。だが、スピードは緩めていない。


「ガァウガァウガゥ」とさっき吹き飛ばしたのと入れ替わり、3体増えていた。


「おぉーーーー、死ぬ!!!」とにかく走っているが、追いつかれるだろう。俺は、自分の着ている上の鎧を走りながら、少しずつ緩めていった。それから、息が切れ始めてきたときにやっと上の鎧が取れた。


「これでもくらえ!!」すぐそばまで迫ってた4匹に向けて投げた。


「グフゥ」二匹の頭にヒットさせた、犬っぽいけど犬らしくない悲鳴を上げた。後ろに転がって、フラフラしてる。


「グガァウ」すぐに二匹のうちの片割れが、飛び掛ってきたが片手に持ってる剣で攻撃を流した。


「グガァアアア」もう一方は、噛み付こうとしてきた。俺は、剣をそいつの口に向けてやった。


「グボォォ・・・」一匹仕留めた。けれども、剣が口から体内まで入ったせいで抜けそう

にないのですぐに逃走した。


「バァウバァウガゥ」走りながら横目で確認すると一匹だけ追跡してきていた。めちゃくちゃ怒り狂ってるように見えた。


「しつこいって!やめよう!弱いものいじめよくない!!」叫びながら、正直もうだめだと思ってた。

なんせ先ほど剣は、あいつの仲間の口に刺さったままだし、他に武器は持ち合わせていなかった。

だが、どうやら神様は、俺を見捨てなかったらしい。


「グボギャ」後ろにいた一匹が悲鳴を上げた。俺は気になって見るとそいつは頭がなくなって横たわっていた。変わりに背が低めの茶髪の可愛い女の子が近くに立っていた。低めといっても、160cmくらいだ。


「えっと、君が助けてくれたの?」一様聞いてみた。

「(よくよく考えるとやばくない?だって、先ほど門を抜けた少し先で犬もどきどもをしばきまわして、残り一匹から追い回されてたけど、そこまで離れてないよ。それにその犬もどきの死に方が・・・。)」


「(こいつ吸血鬼だったりして・・・。)」

「一様はそうなりますね。」女の子は、こっちを向いて無表情にそう言った。

「そうか、ありがとう。助かったよ。お嬢さんは、こんなところで何してたの?(って聞いてる場合か!!明らかにやばいだろが!!??)」

「人を探しに来たんですけど、ロアンヌにいなかったみたいなので。リーティア王国に向かおうと思って。それで門を出て、少しあとに何かあったみたいなので様子を見にこようと思って。」

「そうかい。だったら、もうロアンヌに行かない方がいいよ。どうやら襲撃されてるらしいからね。俺は、王国にはやく知らせに行かないといけないから。お嬢さんもリーティアに行くなら気をつけて。また、王国で会えたらお礼をするよ。じゃ!」

「ちょっと待ってください」

「えっ?」

「お聞きしますけど、一様あなたは王国の兵士さんでいいのですか?」

「そうだけれど(嫌な予感しかしないのだが・・・)」

「可能でしたらお供させていただけないでしょうか?」

「それは。リーティアまでってこと?」

「はい。」女の子は、こちらを向いて頷きながら言った。


「(絶対にここは、断るべきだろう。なんにせよ、怪しすぎる。だけど、もし断って逆鱗に触れて、あの犬もどきと同じようになったら・・・。)」

「だめでしょうか?」

「いや、全然大丈夫だよ!市民を守るのも兵士の役目だしね!」笑顔いっぱいで返事を返してあげた。

「ありがとうございます」女の子は、無表情で言った。

「とにかく急いで国王に報告しないといけないから。結構速くリーティアまで行くけど、ついてこられる?(さぁここで諦めろ!)」

「大丈夫です。足は、速いほうだと思いますので。」淡々と女の子は答えた。

「そうか・・・。それはよかった。(よくねぇよ!!)」

「とにかくすぐにここを離れようか。そいつらの仲間が来るかもしれないし」

「そうですね」女の子は、死骸を一瞥して言った。


それから、二人で速く走りながらリーティアに向かった。

「(全然息切れてねぇよ!?絶対吸血鬼とかの類だって!!)」

俺は鎧を脱いだこともあって中々に速いと思うのだけれど・・・。それから、少し休憩もいれながら、3時間足らずで王国に到着した。


「はぁはぁ、お前らご苦労」門番の二人に向けて息が切れながらも話しかけた

「ユウキ殿では!?戦場で命を落されたと聞きましたが」驚きながら、門番は聞いてきた。

「はぁはぁ、現に生きてるだろう。いいからすぐに国王にご報告しなければ、まずいことがある。そこを通してくれ。」

「わかりました。ですが、その後ろの方は?」俺の後ろに視線を向けて聞いてきた。

「あぁ、ロアンヌで助太刀してくれた女性だ。彼女も一緒に通してくれ。俺の命の恩人でもある。」

「そうでしたか。わかりました。馬車の用意も済ましますので、そちらの宿舎でお待ちください」

「ありがと。」俺と女の子は、宿舎の入り口の椅子に座った。


「そういえば、まだ自己紹介がまだだったな。俺は、サカキ・ユウキという。東方の民族のものだから名前はユウキだ。ユウキと呼んでくれ。」

「そうですか。私は、ミナツといいます。」興味なさげに言った

「そうか。で、結局ミナツさんは誰を探してるんだ?」少し微笑みながら言う。

「アーロン・シーウェルトという貴族です。」

「アーロン卿か!」俺は、名前を聞いてすぐにわかった。なんせアーロン卿は、階級は伯爵であり、俺の昔お世話になった恩人だがらだ。

「知っているのですか?」首を傾げながら聞いてきた。

「あぁ、知ってるも何も俺の恩人だからな。」

「そうですか」


その後すぐに馬車が到着したらしく門番の者が知らせに来た。

「ユウキ殿、馬車が到着しました!」

「わかった」


俺とミナツは、馬車で王宮に向けて出発した。それから、すぐに王宮に到着した。

「ミナツさんは、少し馬車でお待ちください。王への謁見が済み次第アーロンさんのところへ案内しますので(その後は、お前とはおさらばだ)」

「わかりました」ミナツは頷きながらいった。


俺は王の元へ向かった。途中門番と同じ反応をする部下が多くてうっとおしかった。

「王よ!報告申し上げたいことがあり、参上いたしました。」

「おぉ!!ユウキか!生きておったのか!」

「はい、それよりも大変です!ロアンヌが魔物どもに」

「知っておる」王は、落ち着いた表情で俺を遮って言った。

「そうでしたか。でしたら早々に対策を」

「いや、それはできぬのだ。」王は苦しげな表情で俺を遮って言った。

「(次遮ったら、しばきまわす!!!)」心に誓った。


「何故ですか!自国の民が虐げられてる状況を甘んじろということですか!」

「勇猛果敢なお前のことだ。直接ロアンヌに行きたしかめたのだろう。だったら、見たはずだ。あの場にいた魔物の異常な数と未知の魔物を」

「確かに。ロアンヌ城に近づくごとに私も見た事もない魔物がいました。」

「あれらをわしは、王宮魔道士たちに調べさせたところ大変なことがわかった。」

「それはいったい。(やっぱり危険な魔物なのか?)」

「あれらの内の一体だけ正体が判明した。昔の英雄の残した書物に名をガーゴイルという化け物と判明した。そいつは昔3体で町を滅ぼしたと書物にあった。」

「はっ!?さっ三体のみでですか!?」正直危険性は高いと思ってたが。

「そうだ。他の得体の知れない化け物も同様だと王宮魔道士方は判断した。」

「(つまりあれか、それがわんさかいたってことか。俺よく死ななかったな。)」安堵とともに恐怖が体を襲った。


「今まさにこの問題は、議論されてる最中だ。予想では、我が国の冒険者たちに依頼をするしかないと思っておる。」

「なるほど。」確か冒険者の上級者などは遺跡において英雄たちが戦ったとされるモンスターを倒した者がいると聞いたことがある。


だが、今回の件をギルド(冒険者連合)の者たちに持っていかれるのは、貴族たちが反対しそうだが。


「王よ。反対派閥を押し切って今回の件を実行するおつもりですか」

「実はなユウキよ。先の戦争で、モンスターに襲われ貴族や兵士のほとんどが亡くなったのだ。」

「なんですと!では、今我々の国の軍は?」

「もはや国を維持するだけで精一杯な状況だ。だから今回は、冒険者に頼るしかないということだ。」

「そうでしたか。」

「ユウキよ。その汚れた姿を見てわしはお前の苦労がよくわかる。今回の議論が決まり次第追って連絡をしよう。それまでは、休息を取るとよい。」

「はい。ありがたき幸せ。」俺は退出すると待っている馬車に急いだ。


「すまない、またせたな」

「いえ、気になさらないでください」無表情にミナツは答える。

「そうか?では、とりあえずアーロン卿の元に急ぐとしよう。」俺は御者に頼み、先を急いでもらった。


アーロンさんの自宅に着くと俺はすぐに扉を叩き、執事ととりあった。

「では、よろしくお願いします。」俺が頭を下げながら言うと執事は、中に戻って確認しに行った。


しばらくすると執事がやってきた。

「ユウキ様、どうぞお入りください。」執事は丁寧な身のこなしでそういった。

「はい」


中に入るとメイドたちが迎えてくれた。

「(やっぱり何度来ても落ち着かないな。)」

「ユウキ様、旦那様は食堂にてお待ちになっております。ご案内いたします。」

「ありがとうございます。」緊張しながら、後ろをチラッと見た。ミナツさんは、会ったときと変わらぬキョトンとした表情をしていた。


食堂に到着すると執事が扉を開けてくれた。

「おぉ、久しいなユウキ!」アーロン卿が笑顔で椅子にすわりながら迎えてくれた。

「どうも、ご無沙汰してます。アーロン卿」

「うん、それよりも食事にしよう。夕食の準備はできているんだ。」

「あ、はい。」

「席に着きたまえ。そして、そのお嬢さんの話も聞きたいしね。」微笑みながら言う

「あぁ、そうですね」


俺たちが席に着くと料理がまもなく運ばれてきた。それからすぐにアーロン卿が話しかけてきた。

「で、そちらのお嬢さんは?」

「彼女は。ミナツと言います。俺がロアンヌ周辺でレッサーハウンドに絡まれたときに助けてくれました。命の恩人と言っても過言ではありません。」

「そうか、で?何故私のところに連れてきたんだい?」

「はい、それは」

「私は、アーロン卿にお会いしたくてユウキさんに頼んだんです。」と俺を遮って、ミナツは淡々と答えた。

「そうかい、で用件はなんだいミナツ君」アーロン卿は、微笑みながら聞いているが明らかに不審がっている。なんせ俺も思ってる。


「アーロン卿は、真っ赤なドレスを着た真祖をご存知ですか?」ミナツは唐突に聞く

「それを君がどこで知ったかは知らないけれど、討伐の依頼かな?」アーロン卿から少し威圧が強まった気がした。というか、部屋の空気が重い。

「違います。その真祖を私は探してます。アーロン卿は、化け物の研究や悪魔に詳しいと聞きます。それに真祖を昔倒されたとも。」ミナツは淡々と言うが、裏のアーロン卿をよく知ってるように思えた。

「あなたは、私について詳しいようだ。とりあえずは、食事をしましょうか。それが済み次第私の仕事部屋でお話をしましょう。」どうやら重要な案件だと判断したようだった。


その食事後、仕事部屋まで通された。

「とりあえず掛けてくれ」俺たちは、言われたとおり近くのソファに座った。

「というか、俺はいりますか?」

「一様ユウキ君が彼女を連れて来たんだから。最後までエスコートしないと」アーロン卿はニヤニヤしながら言った。

「そうですね|(こいつ気づいてやがる。俺がこれを押し付けようとしてるのを)」

「とりあえず話しをさっきのに戻そうか。私は確かに紅のドレスを着ている真祖を知っている。というか、一度戦ったり、お話をしたりした。」アーロン卿が余裕そうに言う

「(真祖って相当強かったと思いますけど。確かあいつら一人で国を余裕で滅ぼすと聞いたことがあるのだが。)」

「でしたら、今現在の居場所を知っていますか?知っていたら教えて頂きたい」

「君は居場所を知ってどうするつもりだい?」卿は、微笑みながらも目が笑ってなかった。

「殺します」ミナツは、先ほどと同じように淡々と言った。

「復讐かな?それとも何かお目当てのものでも?」

「いえ、宿命みたいなものです」

「ほう、宿命と・・・。君は銀狼の関係者かな?」

「・・・あなたは、どこまで知っているのですか」初めて彼女が眉をひそめて訊ねていた。

「(これは、一触即発ですか。帰っていいか。)」俺はひやひやしていた。

「そうだな。銀狼と真祖のお話はよく聞くからね。君以上に詳しくはないだろう。それと君の知りたいことを私は知らない。」

「そうですか。」少しだけ落胆したようだった。

「だが、居場所の予想ぐらいならつくかな。」

「どこですか」先ほどより少し期待を持って聞いているようだった。

「ロアンヌ城」さらっとアーロンは答えた。

「はっ?」俺は驚愕なことを聞いた。

「前回奴と戦った時もあんな風な状況に周りがなったんだよ。奴は、化け物を召還して相手を弱らせて嬲ってくるからね。それに召還されてるやつも似てる。」

「では、ロアンヌ城にいる可能性が高いと。」

「そうだよ。」卿は、微笑みながら頷く。

「わかりました。向かってみることにします。」

「そうか、気をつけてね。じゃ、ユウキ君。エスコートしっかりするんだよ?」

「えっ?」

「一様彼女命の恩人なんでしょ?だったら、現地まで連れて行ってあげなきゃ。」先ほどよりもいい微笑みを浮かべていってきた。

「そっそうですね。(てめぇ、まだひっかきまわす気か!!!)」

「俺からは、馬車を用意しよう。ユウキ君が御者代わりにね。馬車は返してもらわなくてもいいから。」


それから俺は、アーロン卿に用意してもらった馬車をもらって、まず家に向かった。

とりあえず武装を整えて、非常食や必要な品を用意した。その間客間にミナツを待たせておいた。


「すまない、寄り道に付き合ってもらって。」

「いえ、構いません」ミナツは、平然としている。

「というか、明日向かわないか?今日はもう日が暮れてるし。」

「そうですね」ミナツは渋々といった表情だった。俺はミナツを予備の部屋に案内し、明日の準備と遺書をかるく書いておいた。


朝になるとミナツとともに出発した。馬車のおかげで2時間足らずで到着した。といっても、ロアンヌ近くの木々にだが。そこで馬車をおりて、必要な荷物を持ち、ロアンヌ城に向かった。


ロアンヌの街中は、廃墟と化していた。周りには血がこびり付いたり、死体が転がっていた。だが、化け物は一匹も見当たらなかった。とても静かで不気味だった。


ロアンヌ城の中まで何にも襲われなかった。とりあえず俺たちは、城の中を探索して行くことになった。


「(というかなんで俺こんなことしてるんだろう。俺ただの宮廷護衛兵だよ。ガーゴイルとかと遭遇したら即死じゃん。)」卿に命令されたような状態でもあるし、それに断ったら、卿にあとでやられる心配もあった。


「そっちの部屋から物音がする」ミナツがいつもの表情でいう。

「えっ?そうか俺には、何も聞こえないけど。というか、この部屋は確か舞踏会場の」

俺は、恐る恐る扉を開ける。中では、何人もの人が踊ってた。人なのだろうけど、明らかに意識がない。

皆目の焦点が合ってなかった。


「どうする?」

「この中に多分あいつがいる」そう言ってすぐにミナツは中に入った。

実際に玉座の所に紅のドレスを着たこの世の者とは思えない女性がいた。俺は、すぐにわかった。こいつが例の真祖だと。


「あら、お客様ね。私の舞踏会にようこそ。」女は、微笑みながら値ふみするように俺らを見た。

ミナツは、すぐに行動に出た。女に向かって走り出した。


「無粋な人ね。ここはダンスをする場所よ?退場してもらおうかしら」そういうとすぐにミナツに向かって近くを踊っていた人が襲ってきた。


「ふっ!!!」ミナツがそれらを蹴飛ばしていった。蹴られた奴らは、壁際まで吹っ飛んだり、踊ってる奴にぶつかり倒れた。ミナツは、それを繰り返し玉座まで走った。

「(うぉ、人間業じゃねぇ・・・。)」俺は扉の近くで見てた。


「あなた人ではないようね。その身体能力、そしてその顔どこかで・・・。」女がそういってる間にミナツは、物凄い速さで肉薄にしていった。


「思い出した。お前は昔殺した銀狼によく似ている。」女がそう言うとミナツは、その場から飛び女に横蹴りを入れた。


「それで?」女はそう言うと左でその蹴りを受け止めていたようで、左腕を振り払った。それだけでミナツが壁際まで吹っ飛んだ。


「(何この場違い感。少しでも手助けしてやろうかなって考えた俺を殴りたい・・・)」


「やっぱりこのままじゃだめか・・・。」ミナツは、すぐにその場に立った。左側の額やらあちこちを怪我していた。それからすぐに変化が起こった。ミナツの頭に耳が生えた。そして、しっぽも。それから髪の毛の色が白くなっていった。


「(やっぱり人間じゃねぇよな・・・。それも銀狼って聞こえたけど、耳とか猫っぽいけど?)」とりあえず舞台の方へ左の方の壁際を沿って進む。


「雑種かしら。残念ね。純正の銀狼と戦いたかったわ」女は残念そうにミナツを見た。

「お前は、その雑種に殺されることになるのよ。セリカ・シーウェルト」ミナツは、そいつの名前を忌々しそうに言った。

「てか、なんて言った。シーウェルトだと」俺は驚いて口に出てしまった。


「私の名前を知ってるってことは、やはりあの時の銀狼の娘か。それにしても、随分あいつの娘にしては弱いわね。」気だるそうにミナツを見ながら、蹴られた腕についた埃をはらってた。


「そういってられるのも今のうち。」そういうとミナツは、駆け出した。あの女に向かって、何かを投擲した。


「そんなことしても意味ないわよ」女は、左手で切り払うと何かが噴出して、女にかか

った。

「何これ。くっうぁぁぁぁぁぁぁぁ」女は、急に悲鳴を上げた。

「小娘何をした!!!!」女は、どうやら薬がついた部分は溶けてるようだった。

「今お前に浴びせたのは、遺跡で見つかった遺物(レリック。再生能力を止めたりと吸血鬼にとっては、効果が絶大な薬。」ミナツは淡々と答えた。


それからは、ミナツの猛攻だった。女を一瞬で肉薄にすると左足で蹴りをいれ、吹っ飛ばした。手を休めずに近くの玉座を軽々と持ち、女に向かって投擲、それが直撃する頃には、ミナツは女のすぐ後ろにいた。


「はあ!!」ミナツは声を出すとともに右手で殴って、女を吹き飛ばした。よく見るとミナツの手の辺りなどに電流が流れてるようだった。


「終ったのか。(案外呆気ないものだな。一様俺も切り札的なものを用意してたんだけど)」俺が安堵してると女が立ち上がった。腕などは変な方向に曲がってるようだが、何故だか笑ってた。


「ふふふ、アハハハハハハハハハハハ。」女は、狂ったかと思うほど急に笑い出した。

「もういいわ。色々と考えてたんだけど、やっぱり殺すわ。」笑うのをやめ、冷めた表情になった。


「汝我をいかなるときも守りし者。その体は、朽ちることなく我を守るため。我望む!すべてを殺戮せし者よ!!!我を守りたまえ!!!」女が詠唱を唱えると先ほどミナツに吹き飛ばされた人たちやまだ踊ってる人の胸のあたりに魔方陣が浮かび上がった。

その瞬間そいつらの下に沼のようなものから細い手が出現し飲み込んでいった。


舞踏会の真ん中に大きな魔方陣が出現し、何かが生まれた。

それは、黒い人の形をしていたが、体中が泥が蠢いているような状態だった。


「まさかノーライフキングを練成したというの」ミナツの表情に焦りが見られた。

「さよなら」女がそういった瞬間ミナツが壁に飛んでいった。ミナツがいた場所には、さっき出てきたドロドロした黒い人型がいた。


「キェケェケェキェォキォェキォケォキェォキェオィ」口なのかわからないが何かを唱えた。その瞬間ミナツが倒れてるところが光った、そして爆発した。


「ぐはぁ!!」俺は、余波で吹き飛ばされた。

「くぅ」ミナツは苦悶の声を上げて床を転がっていった。俺は、起き上がると先ほどミナツがいた壁のあたりなどは吹き飛んでいた。外の景色が見える状態になっていた。


「マジか。(今のは、まさかエクスプロージョンか)」俺は、あたりを見回すとボロボロになって、気を失っているミナツがいた。そして、先ほどまでいた女がいなくなっていた。


「あいつ逃げやがったか。」とにかく明らかに勝てそうにない相手なので、ミナツをどうにか回収して逃げなければ。


俺は、立ち上がりミナツに向かって走り出した。その時にあの黒い人型がこっちを見た。いや顔はないけどこっちを向いたのだ。


「(ヤバい、死ぬんじゃ)」と思ったときには、遅かった。

「ヶタヶタェキェヶキヶタヶキェェ」目の前に奴が笑っていた。そして、やつの腕が俺の胸を貫通していた。奴が腕を抜くとブシャーと音がした。俺は、声も出せずに倒れた。


「(あぁ、ここで死ぬのか。こんな意味もわからないことに巻き込まれて。まだ、あの人のように誰一人も守ってない。)」倒れた衝撃のせいで持ってきていた荷物の中身が散らばった。少し視線を上に上げると黒い人型がミナツのすぐそばにたっていた。


「(あいつ絶対ミナツを殺す気だろうな。なんとかしてやりたいけども、もう意識が)」右手に何か落ちた荷物の何かが当たった。見ると真っ赤な液が入った小さな瓶だった。


「(そういえば持ってきてたな。あの賢者に鑑定してもらった薬か)」その薬は、遺跡討伐の時に見つけた不思議な薬だった。といっても、マムルクにいる知り合いの賢者に魔法鑑定してもらってやっと薬とわかったものだ。


「(確か身体を強化する薬だったけ・・・副作用・・・とか・・・なん・・・と・・・か)」俺は、もうほとんど動かない体に最後に右手だけに力をいれて、倒れた衝撃で少し漏れてる薬を口にいれた。それから、ミナツの方を見ると奴が首をつかんで料理しようとしていた。俺の意識は、それで落ちた。


ドクンッ・・・ドクンッ・・とユウキの体が跳ねた。不意に立ち上がった。黒い人型は、こっちを少し見ると興味を示したのかミナツを捨てた。ゆっくりと歩いて向かってきた。


「ヶタヶタェケェタェキェキィヶキェィケ」歩いてたように見えたがユウキの後ろから拳を振りおろしていた。奴にまた穴を開けようと思っていたが、今回はそうならなかった。


ズドォと衝撃がはしり、ボトという音がした。黒い人型は、先ほどまでいたユウキがいないことを確認すると違和感のある振りおろした右手を見た。上腕までの右手がなくなっていた。鋭利な刃物で切られたような後があった。


そして、歩く音がした。黒い人型は、そっちをみるとミナツを抱えたユウキがいた。


「・・・。」ユウキは、何かを呟いたように見えたが。黒い人型は気にせずユウキを殺そうと地面を蹴ろうとすると視界がずれた。そして、後ろで何かが倒れる音がした。黒い人型は、後ろを向くと自分の胸から下の部分が倒れていた。そして、ユウキの方を向くと黒い人型の周りが光り輝いた。そこで黒い人型の意識は落ちた。

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