8.異世界ステータス
「なんでかな?君にそう言われると大丈夫な気がしてくる」
そうレイチェルに言われ、何度目かの心臓の鼓動を感じる桜咲。
「まぁでも」とレイチェルは言葉を続ける。
「そんなに強い魔法は使えるならオウガストの軍に入れば国境どころか、国王直属も狙えるかもね。私はまだ精霊を見つけられもしていないけど」
「精霊ってどうやって見つけるものなの?」
「魔法学者の中でも意見は分かれているのよ。っていうのもまだ確認されている精霊は5体しかいなくてね。契約するのにも普通の魔法よりも厳密な適正が必要だし。君なら適正あったりしてね」
ふふ、とレイチェルはわらった。
適正か、と桜咲はふと設定が気になりスマートフォンを取り出し、メモアプリを開いた。
するとアルクライン設定、主人公設定の下に新しいメモがあるのが見える。なんだこれ?と桜咲は開いてみる。
<レイチェル・フェザリオ設定>
銀髪美少女。
精霊魔導師志望。
「レイチェル、、、フェザリオ?」
何気なく読み上げると、隣を歩くレイチェルから警戒の気配を感じた。
「なんでフェザリオの名を、、、私名乗ってないわよね?」
しまった!と桜咲は焦りを露わにした。この設定はレイチェルのものなのか。桜咲は言葉を絞り出そうとするが中々出てこない。
「あ、、、いや、、、その」
「助けられてなんだけど、やっぱり怪しいわ君。あんな強力な魔法使えるし、、、名前まで。私のことを知ってるの?」
怪しまれて当然だ。逆に言えば日常生活で普通に街を歩いていたらこの世界とは違う文化の服装をした超能力を持つ異性に、名乗っていない名字を当てられている。ちょっとしたホラーで、稚拙なSFだ。
「まさか」
と、レイチェルは桜咲に詰め寄った。その圧に桜咲はたじろぐ。
「君、、、無属性魔法も使えるの!?」
へ?と抜けた表情を浮かべる桜咲。御構い無しにレイチェルは言葉を続ける。
「それって無属性魔法のステータスビジョンよね?とっても珍しい魔法だけど君くらい強力な魔法が使えるなら使えても不思議じゃないわ」
「うん、それ」
助かったー!と心の中で胸を撫で下ろした。どうやら相手のステータスを確認する珍しい魔法があるらしい。これがあれば初対面の相手の名前が覚えられない社会人も安心だね。と心のどこかで聞こえた気がした。
「なるほどねぇ、あ、もう着くよ」
レイチェルが指差した方向にレンガの壁が見えた。ファンタジーにありがちな、国の入り口にある関所チックな、それ。
おお、と桜咲はときめいた。これぞ異世界ファンタジー。