6.これが100万ボルトの異世界
「君本当に何者なの?」
座り込んだレイチェルが桜咲に問いかけた。
土に固められたドラゴンは意識を失っているのか、微動だにしなくなっている。
桜咲は自分の掌を眺めながら思考を巡らせていた。恐らくは自分で設定した通りに「桜咲 翔」という個体は全属性魔法を取得している。
自分がイメージした通りに魔法が発動され、結果としてドラゴンを仕留めた。
つまり、この世界で必要なものは。
「妄想力、、、」
桜咲は呟いた。その隣では未だ座り込んでいるレイチェルがポカンとしていた。
「プラチナクラスを超越した魔法、、、君は、、、」
次第にレイチェルの疑いの色が濃くなっていく。
なんとか弁解しなければ、と桜咲は言葉を絞り出す。
「じ、、、実は、なんでこんな力使えるのか分からないんだ」
「え?」
レイチェルは再び表情を失う。失いながらも桜咲に質問を投げかける。
「気がついたらそんな魔法が使えるようになってたってこと?」
レイチェルの言葉に桜咲は頷いて答えとした。「嘘でしょ?!」とレイチェルは驚く。
「光属性の範囲攻撃に地属性の単体捕縛魔法、、、適性が2種類あるってこと?それに強力な魔法を連続無詠唱で息ひとつ乱れないなんて、、、」
その綺麗な瞳は桜咲に向けられていた。
そんな美しい視線に慣れていない桜咲は視線を逸らしてしまった。いかにも、な反応である。
「ごめん、魔法のことよくわかってないんだ」
ははは、と乾いた笑い混じりに桜咲は言った。
するとレイチェルはさらに驚いて見せた。
「理解もせずに魔法を!?本当に何なの君は」
怒っているのか驚いているのか分からない語調にたじろいでしまう桜咲。あが、その後レイチェルはニコッと笑って見せた。
「でもありがとう。守ってくれて」
こちらこそありがとうだよレイチェル。君の笑顔は100万ボルト、と桜咲の頬は紅く染まり緩んでいく。