4.異世界の恋愛観
恋愛なんて自分には無縁だと24年間思い続けてきた。事実、桜咲は恋愛に没頭したことはないしときめきならファンタジーに感じてきた。自分の中でファンタジーを超えるときめきをもたらしてくれるモノではなかった。
まさか初めてときめくのがこんな美人でしかも自分が作り出してしまった世界の女の子だとは、、、。とレイチェルの隣を歩きながら桜咲は苦笑してしまった。
「で、なんであんなところにいたの?」
唐突にレイチェルが尋ねる。
何でと問われても桜咲自身その答えは持っていなかった。自身も未だに状況が半信半疑で、恐らく自分が書いていた設定の世界に転移してしまったのだという荒唐無稽な推測でしかない。自分がこの世界を作ったんだという神様発言をしても信じてもらえないどころか警戒される、もしくは痛い人間だと思われるのがオチだ。とにかくレイチェルの問いかけに答えなければと桜咲は言葉を絞り出した。
「あー、、、えっと、迷っちゃって」
「森の中で?」
レイチェルは呆れたように眉にシワを寄せた。そして溜息をついてさらにレイチェルは言葉を足した。
「確かにあの場所はオウガストから近いけれど、魔物もいるんだから気をつけないと危ないよ?それとも、そんなの御構い無しなくらい強いのかな?って、君は武器も持ってないの?」
何か不穏な言葉が聞こえたような気がして桜咲は聞き直す。
「ま、魔物?」
「そ、魔物。って君は魔物も知らないの?本当にどこから来たのよ。魔物のいない土地なんて聞いたことないし、、、」
桜咲に疑いの視線を向けるレイチェル。どうやらこの世界では魔物、と呼ばれる存在が当然のように存在しているようだ。そんなところまで桜咲は設定しなかったが、魔法が存在する都合上その生態系もよりファンタジックに進化しているようだ。推測した桜咲は自分の持てるファンタジック知識を集結させて言葉を紡ぐ。
「えっと魔物って魔力を秘めてるあの動物だよね?」
「何言ってるの?」
とレイチェルは首を傾げた。
まずい、間違えたか。と桜咲の表情は曇る。だが桜咲の表情には気付かずにレイチェルは続けた。
「動物型だけじゃなくて植物型もいるし、亜人種だっているわよ?アンデット系も大きく分けると亜人種ってことになるのかしら。その辺は意見が分かれるところだけどね」
バリエーションの問題か。と心の中でツッコミを入れながら胸を撫で下ろす桜咲
。そうか本当にファンタジーの王道というよりも桜咲の中にある異世界のイメージを形にしたものなのだと桜咲は更に推測した。だとすれば、自分が「らしい」と思うファンタジーな答えを出せばそれは正解になる。
頭の中で思考を巡らせる桜咲の表情は考える人のそれだった。そんな桜咲をみてレイチェルは言葉をかける。
「本当に君はどこから、、、」
地響き。レイチェルの言葉を遮るようにゴゴゴと地響きが聞こえ、大きく地面が揺れた。
うわっ、と桜咲はとっさに身をかがめた。
レイチェルはすぐさま地響きの正体を調べるべく辺りを見渡す。
「危ないよレイチェル!地震の時は机の下に頭を隠して揺れが止まってから押さない走らない喋らないのおはしを遵守しないと!地震大国を生き抜く先人の知恵を!」
桜咲がレイチェルを見上げながら叫んだ。だがその言葉の先にいるレイチェルの表情は恐怖の色を浮かべていた。
「う、、、うそ、、、」
表情から恐怖を読み取った桜咲はレイチェルの視線に視線を重ねた。
目に入ったのは赤い皮膚。そこから見上げていくと巨大な口に凶悪揃った牙。その少し上に鋭く光る瞳。視線を泳がせていくと巨大な翼も見える。その巨軀なる生物は桜咲の持つ言葉で一言で表すことができた。
「ドラゴン、、、」




