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34.異世界の寄り道〜受け継がれる意思〜

 ウルダッセン王子、シュバルツァー。

 その姿はまるで、悪魔。

 その名に相応しく、黒を体現しているようだった。


「なぜ、こんな国境に王子が、、、」


 ダウルはシュバルツァーの存在に、驚きを隠せない。


 しかも、シュバルツァーからは敵意や殺意が感じられる。


「あれは、人間なのか」


 ロロウは冷静にその存在を考察する。

 人間の姿と言えなくはないが、魔物にも近いように感じる。


「ふ、ふっふっふ、はっはっは!!矮小な虫に見えるぞ、、、成功だ、、、我は人智を越えた、、、越えたぞ!!」


 シュバルツァーは自分の両手を見ながら叫び、そして、ダウルとロロウを見下ろした。


「なんだ、あいつ、、、いかれてやがんのか」


 ダウルは剣を抜き、構えた。

 シュバルツァーはそんなダウルを見て嘲笑する。


「ふっ、虫が牙を持っていようが恐るるに足らん、、、俺はこの力を基に世界を支配してみせる。その礎となれ」


 そう言ってシュバルツァーは、右手の人差し指をダウルに向ける。

 指先に魔力が溜まり、球体となってダウルに放たれた。

 避ける間もなく、ダウルは吹き飛ばされ、後方で地面に叩きつけられる。


「がっ、、、」


 体がバラバラになるほどの衝撃。

 ダウルは飛びそうになる意識を必死に留め、何とか立ち上がる。


「ワンコロ!」


「くそがぁ!!!ライトニングアローォォォ!!」


 何とか立ち上がったダウルが、両手をシュバルツァーに向け、唱えると雷が矢の様にシュバルツァー目掛け飛んでいく。


 怒りを込めた魔法。

 だが、シュバルツァーは片手で雷を受け止めてしまった。


「ふん、まるで児戯だな」


 シュバルツァーは表情すら変えずにダウルを見下ろした。


「ワンコロの魔法を片手で、、、だと」


 オウガストでも最強クラスのダウルの魔法をものともしないシュバルツァーに、ロロウは言葉を失った。


 2対1、優位なハズのその状況を力でひっくり返されている。


 勝てない。

 ロロウはそう判断した。


「逃げろ、ワンコロ」


「何言ってやがる、寝言は寝て言え、ジジィ」


 ロロウの判断に従わないダウル。

 そんなダウルにロロウは激昂した。


「勝てないんだ!この状況で優先すべきはこの存在、情報を持ち帰ることだ!冷静になれ!ダウル!」


 勝てない。

 だが、このシュバルツァーという存在は世界を変えかねない。

 それどころか、支配する、と発言していた。

 ならば、この情報を国に持ち帰り、対策することこそ優先すべき行動を


 しかし、シュバルツァーの敵意からすれば、見逃してくれるはずもない。


「俺が残って足止めをする、、、行け、ダウル!」


「ワンコロって言わねぇのかよ、、、。カッコつけるな、お前がギルドマスターだろうが」


 ダウルはそう言って再び剣を構えた。

 そんなダウルをロロウは殴り、シュバルツァーへ向かい踏み込んだ。


「ダウル!お前に足りないのは、冷静さ、そして優しさだ。自信に余裕がないから、他人を恐れ傷つける。常に冷静に優しくあれ。そして!」


 言いながらロロウはシュバルツァーの攻撃をかわしながら、シュバルツァーの元まで行き、その胸ぐらを掴んだ。


「何をする!」


 シュバルツァーはロロウを引き離そうとするが、離れない。


「いいか!ダウル!お前がオウガストを導け!ギルドマスターはお前だ」


「何言ってんだよロロウ!」


 ダウルは叫ぶが、既にロロウは唱えていた。



 自爆の、魔法を。


「王子様!御無礼致しますよ!命をかけて、封印させてもらいます!ディストラクション・シールド・ボム!」


 ロロウが唱えると、その体が発光し、シュバルツァーを巻き込んで爆発を起こした。


「ロロウ!!!」


 ダウルは叫んだが、爆発は止まらない。


「離せ虫けらがぁ!」


 シュバルツァーの叫びが爆発音とともに響いた。


 巻き上がる土煙が晴れた頃、ロロウとシュバルツァーの姿はなかった。

 突然の悲しみにくれるダウルだったが、ロロウが残した言葉、命を受け止め、オウガストへと帰還した。




 魔人化したウルダッセン王子シュバルツァーがウルダッセン国王を討ち、王位を継いで王になり、世界に宣戦布告したのは、その後すぐの事だった。

 そして、各地で国境戦が始まった。

 その、ウルダッセンが国境からなかなか進めないのはロロウが最後に放った魔法により、シュバルツァーの力が弱まっているのだと、ダウルは推測している。


 ロロウの遺言に従い、ダウルはギルドマスターになったが、その仇はうてていない。

 それどころか、ダウルはどこかでシュバルツァーを恐れながら生きていた。



 それから10年。

 今目の前にひとりの青年がいる。


「僕が行って終わらせてきます」


 心の中に風が吹いた気がした。

 どこか懐かしい、あの、ロロウを思わせる風。



 立ち上がるべき時が来たのだと、ダウルは感じた。

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