33.異世界の寄り道〜ダウルの過去〜
オウガストの冒険者ギルドマスター、ダウル。
ダウル・ダテは30歳でギルドマスターまで上り詰めた、天才であった。
雷属性の魔力と、人間離れした体術を持つオウガスト最強の冒険者として頂点に君臨している。
ダウル、30歳。
既に冒険者としてプラチナクラスまで上り詰めていたダウルは、現在とは違い、傲岸不遜そのものであった。
近寄る者を全てなぎ倒し、力で自分を表現している、まさに雷獣。
オウガストの雷獣と呼ばれ、その名は広がっていた。
「よう、ワンコロ」
そんなダウルをワンコロと呼ぶ声がした。
ここはウルダッセンとの国境。
岩に囲まれた場所である。
ダウルが振り向くとそこには男がいた。
「誰がワンコロだ、クソジジィ。殺すぞ、ロロウ」
ダウルは不機嫌に言い捨てる。
ロロウ、当時のギルドマスター。
彼もまた、40歳でギルドマスターとなった男。ダウルの前任者である。
「仮にもギルドマスターを呼び捨てにするんじゃない」
「仮のギルドマスターだからな、さっさとその席をよこせ。その席は頂点の証だろうが」
言いのけるダウルには、自分が最強だという自信が感じられる。
しかし、この男、ロロウにだけは適わなかった。
魔力も体術も負けない、実績も負けない。
だが、いざ戦うとダウルはロロウには勝てなかった。
ロロウはダウルの軽口を笑いのける。
「はっはっは、お前が俺を超えればいくらでも、この席をくれてやる」
「ちっ、、、」
勝てないと分かっているから、ダウルは舌打ちで返した。
なんでこんな奴に勝てないんだ。
「まぁ、いいさ、ワンコロ。とにかく依頼をこなすんだ。このウルダッセン国境に新種の魔物が出現したという情報が入っている。捜索を続けるぜ」
ロロウは言いながら歩き続ける。
嫌々そうな顔をしながら、ダウルもあとに続く。
すると、ウルダッセン側で爆発音が聞こえた。
「な、なんだあれ」
音の方から黒煙が上がっているのが見え、ダウルが身構える。
「とにかく行ってみるぞ、ワンコロついてこい」
「お、おい、いいのかよ。国境勝手に越えたらややこしい事になるぜ」
ダウルはロロウにそう進言する。
が、ロロウは振り返り、ダウルを嘲笑した。
「緊急事態だろうが」
ロロウはダウルを置いていくように、走る。
ダウルも遅れてなんとかついて行った。
爆発音がしたであろう場所は地面の岩肌が大きく削られていた。
「これは、魔法痕か」
ロロウはその場所に手を触れながら言った。
そして、その場所に微量の血痕があるのに気付いた。
「ワンコロ、これって血だよな」
ん?とダウルはその血痕を見ると、既にその血痕は黒くなっている。
酸素に触れた血は赤から黒に変わるが、それほど時間は経っていない。
それに乾いてもいなかった。
液体のまま、黒い。
「魔物の血、、、いや、ちげぇな。魔物の血は独特の臭いがする、獣のような臭いが」
ダウルは観察してそう言った。
たしかに、これは魔物の血ではない。
だが、明らかにその性質は血そのものだった。
観察と考察を繰り返していると、ダウルとロロウの背後に大きな気配を感じた。
ばっと同時に振り向くと、肌の浅黒い細身の男がそこに立っていた。
浅黒い肌、額に浮かぶ謎の紋章。
そして服装からはおそらく貴族であることが見受けられる。
何者だ。
そう思ったがロロウは言葉にせず、身構えた。
ダウルも続いて身構える。
すると、男は口を開いた。
「どこの国の者だ。我はウルダッセン王子、シュバルツァーだ。図が高い」
男の言葉と同時に空気が重くなったのを感じる。
まるで空気がダウルとロロウの頭を下げさせているかの様だった。




