30.3日目の異世界
異世界3日目の朝を迎える桜咲。
色んなことがあったなぁ、と自室ベッドの上で目をこすりながら、思い返す。
そして昨日、レイチェルの笑顔に、世界を救うと誓った事を思い出し赤面した。
「守りたい人がいるから」
自分の言葉が頭の中で響く。
あれ程純粋な本音を吐いたことがあっただろうか。
命を懸けて生きているからこそ、この異世界だからこそ出てきた本音。
桜咲は身支度をしてから、ギルドへと向かった。
と、言ってもギルドの寮に住んでいる桜咲にとってギルドなんてすぐそこ。
コンビニに行くくらいの感覚で行けてしまう。
ギルドに入ると、受付カウンターにベリーがいる事を確認して、向かった。
「おはようベリー」
「あら、ショウおはよう早いのね。あ、そうだ昨日のファングリオン討伐の報酬出てるわよ」
そう言ってベリーは銀貨4枚を桜咲に手渡した。
「ちゃんとレイチェルの分は分けてるから、それはショウの分よ」
「ありがとう。いいのかな、これもらっちゃって」
「あ、話は聞いてるけど、誰かが先に討伐してたとしても、依頼は2人が受けたんだしいいのよ。結果が全てじゃないけど、お金だけは何があっても裏切らないわ、そのままもらっちゃいなさい」
ね?とベリーは笑顔を見せた。
桜咲に気を遣わせないベリーの優しさなのだろう。
「ありがとう」
そう言って桜咲はポケットに銀貨をしまった。
しまってから、桜咲はベリーに本題を切り出す。
「あのさ、今日ってダウルさんいるかな?」
「マスター?多分いるけど、修練場じゃないかな」
「修練場?」
桜咲は首を傾げながら聞き返した。
「うん、マスターは鍛錬された肉体にこそ魔法は宿るって言って朝は修練場でトレーニングしてるわ。用事でもあるの?」
「ちょっとね」
「じゃあ、地図書いてあげるから行ってみたら?」
そう言ってベリーは地図を描き、説明をしてくれた。
記された場所はギルドからそう離れていない、広場だった。
桜咲はベリーに礼を言って地図を片手に修練場に向かう。
記された場所に行くと、木造の平屋が建っていた。
それほど広くないその場所からは、どこかピリピリした空気を感じる。
地図と周りを見比べ、ここだと確信して桜咲は修練場の中に入って行く。
扉を開くと室内では上裸のダウルが、槍を構えていた。
高い天井に建物を広く使った一室。
小さく見えるべきダウルがとても大きく見えた。
これが鍛錬された男の体。
そして、気か。
桜咲は構えているダウルを見ているだけで飲み込まれそうになる。
ゆっくりとダウルは振り被り、槍を振り下ろした。
音もなく槍が消えたかと思うと、気がつけば頭上の槍が、地面すれすれにあった。
目で追うことすらできない。
ダウルはスーッと息を吐くと、桜咲に気づいて笑顔になる。
「ショウ君じゃないか、どうしたんだい」
「どもっす。ちょっと聞きたいことというかお願いがあって」
桜咲が言うとダウルは壁際に向かって歩き、壁にかけてあった木剣を2本手に取った。
そしてそのうちの1本を桜咲に投げる。
「うわっ」
驚きながらも、桜咲は木剣を掴み取る。
これってまさか。
「せっかくだし1本手合わせしてくれないかな?」
着ていた服の袖口で汗を拭いながらダウルは言った。
やっぱり、そういう展開なのね。
桜咲は覚悟して腰の刀をおろし、木剣を構える。
「いいですよ、僕もちょっと、自分にどれくらいの力があるか知りたいですから」
オウガストの冒険者の頂点、ダウル。
どこまで通用するのか、自分はどれだけ戦えるのか、レイチェルを守れるのか、桜咲は知りたかった。




