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3.異世界の冒険は始まったばかりだ!

<ウルダッセン>

 闇の魔法に長けており、主に狩猟で暮らしている北の国。


<イノベア>

 風の魔法に長けており、開発などを得意とする国。気球などを開発した西の国。


<カルゼン>

 肉体強化魔法に長けており強大な軍隊を所有しているが国内に豊かな自然を所有しており農業を主体にしている南の国。


<ビノタイト>

 水の魔法に長けており、漁業を生業にしている東の国。


<オウガスト>

 大陸の中央にあり4国全てと隣接している国。光の魔法に長けている。魔法の研究を主に行なっている国である。


 まさかな、と桜咲は呆れ果てた。小説に没頭するあまり電車で眠り込んで夢を見ているのか、と結論づけ目を閉じて目覚めを待つ。


「、、、」

 あれ?覚めないな。


「何してるの?そのすまーと?を見てから目を閉じて」


 女の子が目を瞑っている桜咲に声をかける。一気に現実に引き戻されたような感覚。


「夢じゃない、、、のか」


「夢?何言ってるの?それにそんな変な格好して、あなたどこから来たの?なんでこんな森の中で眠っているの?」


 女の子が桜咲の着ているスーツを指差して言った。


「こ、これはスーツだけど、、、変かな?」


 恐る恐る桜咲は女の子に尋ねる。女の子は興味を持った表情でまじまじとスーツを見回した。


「うーん、少なくともオウガストでは見たことないわね。ううんビノタイトでもカルゼンでもないわ。本当にどこから来たの?」


 見覚えのある単語が2つも女の子の口から出たことで桜咲は頭を抱えてしまう。

 理解した。

 自分の作った世界に迷い混んでしまったのだ。

 まじかぁ、、、と抱えた頭を離せない桜咲に女の子は更に質問する。


「まさかあなたウルダッセンの魔人じゃないわよね?」


 その言葉には警戒の色が混ざっていた。桜咲の設定上ウルダッセンは闇の魔法で魔人化した王子が世界を武力で統一支配を目論んでいる国。女の子の警戒は当然である。


「あ、いや、違うよ」


 理解と納得は別なんだなぁと思いながら桜咲は否定した。

 だが自分のことをうまく説明できる言葉を桜咲は持たない。


「なんて言えばいいのかなぁ、自分の国を持たない旅人、、、かな」


 桜咲は自分の作った世界<アルクライン>に迷い込んだ。としか思えない現実。頬を撫ぜる風がより現実味を増した。


「冒険者ってこと?無国籍なんて珍しいわね。無国籍ってことはギルドにも入ってないんでしょ?普通冒険者は自国の冒険者ギルドに所属して依頼をこなすことでお金を得るのよ?フリーで依頼を受けてるってこと?」


 女の子がさらに深く尋ねてくる。まだ整理はつかないものの桜咲は現実を受け入れつつあった。何故なら自分の望んだ世界。自分の思い描いていた空想が目の前に広がっている。なぜこうなったか、何が起こっているのかは何もわからないが目の前にファンタジーが広がっているのなら楽しむんだ、と桜咲は溢れてくるワクワクに取り憑かれていた。


「ねぇ聞いてる?」


 女の子がムッとして顔を近づけてくる。


「あ、ごめん。そうだねフリーっていうか、、、うん。君は?冒険者?」


 桜咲が尋ねると女の子は得意げな表情で答えてくれる。


「私も冒険者よ。オウガストのシルバー冒険者なの」


「シルバー?」


 桜咲が聞き直すと女の子は呆れたような表情を浮かべた。


「本当にあなた何も知らないのね。冒険者にはランクがあってそれによって受けられる依頼が変わるのよ。ブロンズから始めて、シルバー、ゴールド、プラチナの順にランクは上がるのよ。まぁプラチナなんて1つの国に3人くらいしかいないわ。その分、プラチナは国の運命を左右するような依頼を受けることが出来るのよ」


 なるほど、と桜咲は頷いた。桜咲が作った設定に沿っている世界だが、世界として成り立たせるために桜咲が知らない補足設定のようなものもあるようだ。


「僕もオウガストのギルドに入ることは出来るかな、、、えっと」


「レイチェルよ」

 桜咲の質問を察してか女の子は名乗った。


「僕は桜咲(おうさき) (しょう)。出来ればオウガストまで案内してもらいたいんだけどダメかな?えーっと、レイチェル」


 全力の営業スマイルを披露しながらレイチェルの目を見つめる桜咲。だが、改めて見るレイチェルの容姿に言葉を失ってしまう。

 か、可愛い。美しい銀髪に全てを見通すような青い目。雪すらも置いていくような白い肌。これぞ、ファンタジー美人。ヒロイン度数120%を超えてしまうそんなレイチェル。


「いいわよ?私もギルドに報告に戻るし、、、って聞いてる?ねぇ、オウサキ?」


 桜咲の顔の前で手を振り桜咲の意識を確認するレイチェル。

 はっとして、我に返り桜咲は営業スマイルを取り戻す。


「あ、じゃあお願い致しまする」


「どんな敬語なのよそれ」



 ふふふっと天使が微笑んだ。桜咲の心に柔らかな風が吹いたような気がした。

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