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29.小説を書いてたら異世界に飛ばされたから

 ダウルとの面談を終え、桜咲とレイチェルは会議室を後にした。


 ウルダッセンの帝国軍、イクサがオウガスト領のココノエ洞窟で、ファングリオンを狩っていた件については、ミーナがダウルに報告をしていたそうだ。

 国境の警備が厳しいとはいえ、戦火に紛れ侵入することは稀に起こるらしい。


 だが、すでに桜咲にとっての問題はイクサの侵入などではなく、このレイチェルとの気まずい空気だった。


 沈黙。

 黙ったまま桜咲とレイチェルは、ギルド内を歩き、外に出た。

 鼓動が頭の中で響く。まるで心臓にマイクを当てられているかのように。


 このままでは心臓が破裂してしまうか、口から出てきてしまいそうな桜咲。

 沈黙に耐えられなくなり、口を開く。


「あ、あの、さっきはかばってくれてありがとう」


 沈黙からいきなり桜咲が発言したものだから、レイチェルはビクッと体を揺らした。


「い、いいの。私が思ったことなんだから」


 ああ、これが青春ってやつですか。

 神さまありがとう。仏陀もキリストもアッラーもいない世界だけれど。

 桜咲はレイチェルの可愛らしさに、緊張を解けない。


 そんな桜咲の様子を見て、レイチェルは笑う。


「ふふふ、どんなに緊張してるのよ、ショウ」


「だって、、、仕方ないだろ」


 緊張を笑われた桜咲だったが嫌な気はしなかった。

 レイチェルに悪意がなかったからだ。


 そんなレイチェルは言葉を続ける。


「私は嬉しかったよ?ショウがこの世界に来てくれてよかった。素直にそう思うよ」


 目を見つめながらしっかりとした口調でレイチェルは言った。


 その言葉がどれほど嬉しいものだろうか。

 自分を認められる。

 人間は弱い生き物だ、誰かに承認されていないと生きていくことは困難である。

 相手がいるから自分という存在があるという事を人は忘れて生きている。

 自分の才能も、性格も他の人間がいなければ評価を受けない。


 認めてくれる人がいるだけで、ここまで気持ちが強くなるのか。

 と桜咲は実感した。


「ありがとうレイチェル。これからもよろしくね」


「こちらこそ、よろしくねショウ」


 桜咲は、レイチェルの笑顔を見て、また心に誓った。



 レイチェルの生きるこの世界を救おう。

 ウルダッセンの侵略を止める、それが目標だと。


 ふと空を見上げると太陽が沈みかけていた。

 世界が違っても、空はオレンジに染まっている。

 世界が違っても、大切な人を守りたい気持ちは変わらない。


 小説を書いていたら異世界に飛ばされたから僕は世界を救う。

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