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26.焼きたての異世界

 青髪のツンデレ美少女、ユーナに手を引かれ市場を抜けると、右手に食パンを模した看板が見えてきた。

 風に乗って、パンが焼けるいい匂いがしてくる。


「ほら、ここよ」


 ユーナはパン屋の前で止まって桜咲にそう言った。


 木造建築で温かみのある風合いを醸し出しており、パンの焼ける匂いも相まって、期待を膨らませる。


 よく考えれば、朝にレイチェルの手作りサンドウィッチを食べてからそれなりに、時間が経っていた。

 お腹もすくはずだ。


「さ、入りなさい」


 ユーナはまた強引に桜咲の手を引いた。


 ドアを開けるとカランコロンカランコロンと、どこか懐かしい鈴の音が響く。

 お店の中には様々なパンが所狭しと並べられ、更に桜咲の食欲と空腹を刺激した。


「うわぁ、すご」


 桜咲は目を輝かせながら、並べられているパンを見る。

 メロンパン、食パン、カレーパン、ロールパン、馴染みのあるパンのラインナップに、期待は最高潮に達した。


 そんな、子どものようにキラキラした目でパンを見回す桜咲に、ユーナは誇らしげに言い放つ。


「さぁ、好きな物をたべなさい」


「え?ほんとにいいの?ほんとに僕は持ち合わせないよ」


「そんなの気にしないでって言ってるでしょ、ほら」


 ユーナはそう言って、トングとトレイを手渡す。

 桜咲は受け取って、トングをカチカチさせる。

 なんで、カチカチさせてしまうんだろう。

 むしろ、カチカチしない人なんているのだろうか。


「オススメはどれ?」


 桜咲がユーナに問いかけると、ユーナは少し不機嫌そうな顔をした。


「どれも、オススメよ。私の両親が心を込めて作ってるんだから」


「あ、ユーナの実家のお店なんだ?」


「そうよ?だから、遠慮しないでたべなさい」


 再びユーナは誇らしげな顔に戻った。


 メロンパンとロールパンを2つ取った桜咲は、ユーナに案内され、店内の飲食スペースに座った。

 木製の机と椅子があるだけの簡単な場所だが、パンを食べるには丁度いいスペースだ。


「じゃあ、いただきます」


「どーぞ」


 初めてユーナが優しげな表情を見せた。


 メロンパンを大きく頬張る、桜咲。

 甘い香りが鼻を抜け、程よい甘さに舌が喜んでいる。


「うっま、なにこれ!焼きたてのパンってこんなに美味かったっけ」


 自然に笑顔になってしまう。

 美味しいものを食べた時の幸福感は何事にも代え難い。

 そんな桜咲の様子を見てユーナも笑顔を見せる。


「でしょ?オウガスト1のパン屋ジレッタをよろしく」


「こんなに美味かったら毎日食べたくなるよ!看板娘も美少女だし!」


「なっ、、、何言ってるのよ!毎日なんて来なくていいわ!」


 赤面しながら言い放つ、ユーナ。

 怒らせてしまった、と桜咲は少し慌てた。


「あ、ごめん、、、」


「なに謝ってるのよ、毎日は来なくていいけど、たまには来なさいよね、、、」


 ツンデレきたー!

 桜咲は「萌え」という感情を実感した。

 イクサの件で少し気持ちが下がっていたが、美味しいものを食べたお陰で元気になった桜咲。

 こんなパン屋があるなら、ずっとオウガストにいてもいいなぁ、と思いながらロールパンを頬張った。

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