24.異世界の活気
「助けてくれてありがとね」
ミーナの部屋の前で別れたレイチェルが、ボソッと耳元で言ってくれた言葉を思い出して、桜咲はつい表情が緩んでしまう。
レイチェルとミーナは先刻のイクサの件を報告するためにギルドに向かった。
そのため桜咲は1人で、街を歩いてみることにした。
街はわかりやすいくらい西洋風でまさにファンタジーのそれだ。
桜咲はそんなファンタジーの空気を楽しみながら、街を気まぐれに進んでいく。
進んでいるうちに、どうやら市場の様な場所に行き着いたらしい。
道の左右に屋台が並び果物や野菜、ホットドッグやサンドウィッチなどの軽食が売っている。そんな一本道を沢山の人が買い物をし、歩き、活気で溢れかえっていた。
「おお、お祭りみたいだ」
と、どこか懐かしい様な光景に、桜咲は感動を覚える。
肉の焼ける様な香りに、パンが焼ける様な香りがしてきて、桜咲の食欲を刺激した。
「いい匂いだなぁ。あーーー、でも僕お金持ってないからなぁ。あ、でも依頼の報酬貰えるから、それから来てもいいよなぁ」
独り言を言いながら進んでいくと、見たこともない様な食べ物から、変なアクセサリーまで売っているのが見える。
買い物ができない桜咲は、目で楽しみながら歩いていると、人だかりができているのが見えた。
「なんだあれ?」
人だかりが気になり桜咲は人を掻き分けながら、中心へと進んでいく。
「だから、アンタが悪いんでしょ」
女の子の声が聞こえる。
なんだ?
人だかりの中心まで行くと、筋骨隆々な男3人と青い髪の女の子が向かい合っていた。
ああ、なんてベタな構図なんだ、と桜咲は苦笑した。
「おい嬢ちゃん、お前がぶつかったせいで、貴重な酒の瓶が割れちまったんだ。有り金全部置いていきな。まぁ、体で払ってくれてもいいんだがよ」
筋骨隆々な男は悪そうに言った。
ああ、ベタな展開なんだなと桜咲は理解した。
理解して桜咲は筋骨隆々な男3人に、チンピラA、B、C、と名付けた。
「ぶつかって来たのはそっちじゃない、馬鹿なの?」
女の子はそう言い返した。
おいおい、そんな相手を焚きつける様な言い方しなくても。
女の子の態度にチンピラ達が怒りをあらわにするのが見え、桜咲は心配になってくる。
チンピラ達は当然、女の子に対し強行手段に出る。
チンピラBが大きく振りかぶりながら、女の子に殴りかかった。
「誰が馬鹿だ、このガキ!」
殴りかかるチンピラBに、桜咲は自然と体が動く。
女の子とチンピラBの間に体を滑り込ませ、襲い来る拳を手の平で受け止める。
「女の子になにしてんのアンタ」
ああ、言ってみたかったセリフ。
少し自分に酔いながら桜咲は言った。




