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19.異世界のここで装備していくかい?

 ギルドを出るとレイチェルが

「こっちだよ」

 と桜咲を誘導した。


 ギルドの裏通りにギルドの寮がある。

 寮はレンガと木で造られていて、その形は横に五軒並べられ、言わば長屋のようになっている。

 桜咲の部屋は向かって一番端。


「あれ?寮で何かするの?」


 誘導されながら桜咲はレイチェルに尋ねた。

 レイチェルの向かっている先はてっきり街の出入り口だと思っていたが、出入り口はギルドをでて真っ直ぐにある。


 レイチェルは「ううん」と首を振り、桜咲の前を通り過ぎ、右から3番目、桜咲の隣の隣の部屋の前で足を止めた。


「ん?ご近所さん?」


 桜咲はレイチェルの意図がわからず首を傾げた。


「ご近所さんだけどね。でもここはギルドの寮なんだから、ギルドのメンバーが住んでるわ。それでここは、、、」


 レイチェルは言いながらドアをノックする。

 木のドアがコンコンと高い音をたてると、中から

「あいてるよー」

 と声がした。


 女の人の声。


 許可を得てレイチェルはドアをあける。

 いや、無用心すぎないか。

 桜咲は、思いながらもレイチェルの横にいた。


 レイチェルがドアを開けると部屋の中には、タバコをくわえた背の高い女の人が机に向かっていた。

 そして、部屋1面には剣やナイフ、盾や斧。武器が並べられていた。


「なんだい、レイチェルかい」


 その女性の肩までもない、短めの黒髪に日に焼けた肌はどこか色気を醸し出している。

 気だるそうにくわえたタバコも、一定の需要があるだろう。

 大丈夫、僕はレイチェル一筋だよ、と心の中で言い訳しながらも、桜咲はその女性の胸元から視線が外せない。


 ノースリーブのシャツに、ざっくりとあいた胸元は、もう視線泥棒。

 豊満な体はレイチェルにはないものだった。


「で、こちらの視線が顔よりも下に来ている思春期小僧は誰なんだい?」


 思春期小僧って。


「こら、ショウ。何見てるのよ、、、もぅ。おはようミーナさん。こちらギルドに新しく入ったショウ、私がパーティーを組むことにしたの」


 そうレイチェルは女性、ミーナに紹介をしてくれた。

 紹介されて桜咲は会釈する。


桜咲(おうさき) (しょう)です」


 すると女性はタバコをくわえたまま、右手を差し出してきた。


「新人さんかい。私はミーナだ、よろしく」


 おお、こちらにも握手の文化があるのか、と桜咲は差し出された右手を掴む。


 挨拶がすむとレイチェルが説明をしてくれた。


「ミーナさんはギルドの専属武器職人なのよ。ほら、ショウは武器を持っていないでしょ?冒険者は魔法と武器で戦うものだし、ミーナさんの武器ならツケも効くしね」


 なるほど、と桜咲は頷いた。

 確かに桜咲は武器を持っていないし、レイチェルの腰には短剣のようなものがあった。


「この子の武器を買いにきたのかい?」


 ふーっと、煙を吐き出すミーナ。

 更にミーナは言葉を続ける。


「作るのはまた違う場所でやってるんだけどね、デザインやら新性能を考えるのは自分の部屋でやってるんだ。で、何が欲しいんだい」


 そう聞かれてもどんな武器が良いのかなんて分からないが。

 でも、主人公と言えばこれだろう。


「剣でお願いします」


「剣ねぇ、また今度ちゃんとしたもの作ってあげるから、そこら辺の適当に持っておいき」


 ミーナはそう言って壁に飾ってある剣を指さした。

 桜咲は指された指の先を見て、近づき、剣を順番に見ていった。

 両刃が何本かあり、レイピアや短剣、ナイフ。様々な刃物が並んでいて、端に気になる武器が並んでいた。


「これは、、、」


 桜咲が気になった武器を手に取った。

 レイチェルは「知ってるの?」と桜咲の顔を覗き込んだ。


「うん、これ。ミーナさんこれ貰ってもいいですか?」


 片刃の剣、いや、これは刀だ。


「おお、お目が高いねぇ、あんた。それは最新作でねぇ、鋼を叩いて強度を持たせ、従来の剣の破壊とは対極に、鋭さを追求したのさ」


 聞けば聞くほど日本刀と同じだ。

 もちろん日本刀も馴染みがあるものでは無いが、どこか懐かしさを感じる。


「これおいくらですか?」


 桜咲は刀を手にミーナに尋ねた。


「いや、今はお代はいいさ。その代わり、使い心地を教えてくれるかい?試作品だしねぇ」


「え?いいんですか?」

 と、桜咲は驚いた。

 ああ、とミーナはタバコを消しながら頷いて桜咲に答えた。


「良かったね、ショウ」


 レイチェルが笑いかけてくれる。


 その後桜咲はミーナから鞘と刀を腰で固定する革製のホルダーを受け取り、ミーナの家をあとにした。


「じゃあ、いこっか」


 レイチェルに誘導されながら、街の出入り口へと向かった。

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