17.異世界の寄り道~ベリーの過去~
ベリーはオウガストの冒険者ギルドで受付をしている。
小さな頃は冒険者に憧れていたベリー。
だが、自分には魔法の才能が無いことに気づき、それでも冒険者と関わりたく、ギルドの受付として働くことにした。
そもそもベリーの両親は冒険者ではない。
国立の図書館で働く父と専業主婦の母。
一説によると魔法は遺伝による影響を大きく受けると言われており、両親もあまり魔法が得意な方ではなく、ベリーは自身に魔法の才能がないことにそこまで悲観もしていない。
「ようこそ、オウガスト冒険者ギルドへ」
それがベリーに与えられたセリフ。
この世界がゲームならばベリーはこのセリフをプログラムされたキャラクターなのだろう。
これはそんなベリーの10年前のお話。
当時10歳だったベリーは近所に住むレイチェルとよく遊んでいた。
森の中で魔法使いごっこ、誰が見ても微笑ましい光景。
森には安全域と域外と呼ばれる場所があり安全域は魔物の出現がないとされている場所だった。
そんな生活が一変、レイチェルの母が戦地で行方不明になったことから、レイチェルは元気をなくし、次第に一緒に遊ばなくなってしまう。
ベリーはレイチェルに元気を取り戻してもらおうと森の中で1番綺麗な花をプレゼントしようと一人で森に向かった。
場所は域外だった。
獣の叫び。
「グォオォ!!!」
ベリーが振り返ると狼型の魔物、ファングリオンがこちらを睨み尾を立てていた。
ベリーは声も出せず、溢れ出る恐怖が涙となり、ただ震えるしかなかった。
襲い来るファングリオン。
もうダメだ。と目を閉じるベリー。
だが、痛みも衝撃も何もなかった。
「あれ??」
と、ベリーが目を開けるとそこには大きな男がいた。
その男はファングリオンの口を閉じるように両手で掴んでいる。
「子ども一人で域外なんて、危ないじゃないか」
とても暖かい声。ベリーはその声に安心感を感じた。
「お、、、お花が、、、」
説明しようとするが安堵と緊張でベリーは泣きじゃくってしまった。
ひとしきり泣きじゃくった後、友達を元気づけるために花が欲しかった事を説明すると、男は笑った。
「はっはっはっ。そんな年で友達のために危険を犯せるなんて、とんでもない勇気だな。だがな、勇気と無謀が違うように優しさと愚かさも違うんだ。今は分からないだろうが、君は母を失った友達から大切な友達までなくせというのかい?域外へ行く時は俺達に依頼するといい」
「いらい??」
「そうさ、俺は冒険者だからな。オウガストの冒険者ギルドのマスター、ダウルだ。小さな冒険者よ」
ダウルそう言って赤い花をベリーに渡した。
「わぁ、綺麗なお花」
「君によく似た小さな花だ。友達に贈るといい。帰ろう、街へ」
ダウルはベリーを街まで先導してくれた。
そのお花をレイチェルに渡したことでレイチェルは少しずつ元気を取り戻し、今では精霊魔導師を目指す冒険者となった。
「おい、ベリー」
はっ、とベリーは飛び起きた。
「あれ!?私寝てた!?」
場所はギルドのカウンター。
仕事中にベリーはつい居眠りをしてしまったようだ。
「はっはっはっ。夜更かしでもしたのか?それとも彼氏でもできたのか?」
「もう!違いますよダウルさん!」
ベリーは赤面しながら言い返した。
「はっはっはっ。気にしなくていい、あんなに小さかった花も今では大人の女性だ、恋もするさ」
ダウルは笑って言い残し、歩いていってしまった。
「だから違いますー!だって、あの時から私は、、、」
ベリーは懐かしい夢を思い返して更に赤面する。
「あの時から私は?」
いきなり言葉を復唱されベリーはびくっとしてカウンターの向こう側を見た。
そこにはレイチェルと桜咲がいた。
「レイチェル!?ショウ!?」
「あの時からってなんのこと?ベリー」
レイチェルが首を傾げながら聞いてきた。
あの時から私はダウルの事が、、、、。
なんて言えるはずはない。
「な、なんでもないよ!それより2人は何?依頼を受けるの??」
「うん」と桜咲が頷き、レイチェルも続いて頷く。
「そっかそっか、ようこそ、オウガスト冒険者ギルドへ」
ベリーは笑顔でそう言った。
この世界はゲームじゃない、小説だけど小説じゃない。
皆に過去があって、これから未来をつくる。
誰もが物語を持っていて、物語を作っている。




