報奨と悪巧み
寝落ちしてました。すいません。
健太から相談された日から一夜明けて、空は玉座の間に居た。
フレーゼから聞いたところによると、戦争の報奨が与えられるらしい。
今回の一番の功績は空にあるらしく「願いは大抵聞き届けられるので考えて置いてください。」と言われた。
昨日の相談があるまで、特別欲しいものがなかった空であったが、一つ考えが浮かんだのでそれに必要なものを報奨としてもらうことにした。
「大儀であった、ソラ殿。この国を代表する者として感謝する。」
そう王は感謝の言葉を述べた。
「そこでソラ殿に報奨を授けたいと思うのだが、希望はあるかね?
大抵のことは叶える故、何でも述べてみてくれ。」
「では一つだけ。小さい領地を頂けませんか?」
「領地とな?」
「はい。私たち異世界人が暮らすための領地を頂きたいのです。
いつまでも王宮に居ては迷惑でしょうし、好きなことをして過ごせる場所があれば、元の世界に戻る方法が見つかるまで楽しく過ごすことができるかと思いまして。」
「それは勇者全員連れて行くということか?」
「いいえ、希望者だけにしようと思っています。
無理やり連れて行ってもお互いのためになりませんし、何より面倒くさいですしね。」
「面倒くさいとな?」
「はい。無理やり連れて行けばわだかまりが生まれ、やがてそれは周りに悪影響を及ぼします。
つまり、そんな面倒をわざわざ抱えたくないということです。」
「なるほど貴殿は考えているのだな。」
「考えないと生きていけませんから。」
空と王は二人にしか分からないようなやり取りをしていた。
王はしばらく考えるような素振りを見せ、近くにいた宰相に確認をとってから口を開いた。
「ソラ殿にキロディスの領地を与えるとする。
その領地内であれば、犯罪を犯さない限り好きにしていい。」
「ありがとうございます。
領内の警備は第三部隊にお願いしたいのですがよろしいですか?」
「構わん。キロディスは王都からそんなに離れてないからな。
ソラ殿もそちらの方がいいだろう。
要望はもう無いか?」
「はい。色々便宜を図って頂きありがとうございます。」
「これにて謁見を終了とする。
ソラ殿、色々すまないな。」
王は最後にボソッと呟き玉座の間を退出した。
最後の言葉の意味が分かる者は空以外にいなかった。
それから空以外の勇者たちにキロディスへ移りたいかという旨の希望調査が行われ、30人中23人が移住を希望した。
ほとんどの人が王宮での暮らしは息が詰まるようであった。
残る者は軍の訓練に参加している先生や健太以外に5人いた。
その者達は空が見つけたかった者達であった。
空は王女のシルフィアが勇者の何名かに接触していると考えていた。
フレーゼが情報収集した結果、その5名が頻繁にシルフィアと会話していることが分かった。
空はあることの確認のために空たちの担任である天川輝美の元へ来ていた。
「阿迦井くん、お疲れ様。
私、阿迦井くんが戦争に参加するって聞いてとても驚いたんだよ?」
「僕も色々考えて決めたことなんで、心配してくださりありがとうございます。
それに先生だけに押し付けるのもどうかと思いましたしね。」
そう言うと輝美は顔を真っ赤にした。
「先生?」
「そんな!阿迦井くんは私のことがとても好きで、心配して戦争に参加したっていうの!?
ダメよ、私と阿迦井くんは教師と生徒の関係。
そんな××な関係にはなれないわ。」
この妄想逞しい天川輝美という教師、真面目にすべき時は完璧人間なのだが、気が抜けている時はとことん気が抜けている。
所謂、残念美人と呼ばれる部類に属する人間だ。
生徒たちもこのことを知っており、完全無欠でない所が可愛いと人気者である。
「黙ってれば先生も結婚できるのに。」
これが皆口々に言う言葉である。
見た目は美人なので言い寄ってくる男はたくさんいるらしいのだが、少し彼女と話すと皆離れていく。
そのくらい真面目な時とそうでない時のオンオフが激しいのだ。
本人は「30歳までに結婚できればいいの。」と言っていたが、できるかどうか怪しいものである。
そんなことを空が考えていると輝美が話しかけてきた。
「阿迦井くんは子供は何人欲しい?
私は女の子2人、男の子2人の4人くらい欲しいわね。
多い方がにぎやかで楽しいものね。
あ、心配しないで。もちろん阿迦井くんの希望があればもっと多くても大丈夫よ。」
彼女の中ではそこまで話が進んでいるようであった。
このままでは話ができないと思い、中断させようと真面目な話を切り出した。
「先生、このままだと僕たちは利用されますよ。」
その一言で輝美の真面目スイッチがオンになった。
「どういうこと?」
「王女が僕たちを利用しようとしているという話を健太から聞きまして。」
「大坪くんから?何をしようとしてるか分かってるの?」
「大陸統一だそうです。」
「そう...」
「何人かの生徒に接触しているそうです。
先生はどうしますか?」
「決まってるわ。そんなことさせる訳にはいかない。
私はあなたたちの教師ですもの。」
「先生はそう言うと思ってました。
僕にいい考えがあるのですが聞きませんか?
もちろん生徒には危害が及びません。」
「へぇ、どんな話か興味があるわ。阿迦井くん、教えてくれる?」
「喜んで。王女を徹底的に潰すいい案だと思います。」
「それはますます興味が出てきたわ。
私の大切な生徒を利用しようとしたのだもの、やるなら徹底的によね。」
クックッと二人して嗤う姿は、傍から見れば、越後屋と悪代官の「越後屋、お主も悪よのう。」「いえいえ、お代官様ほどでは。」というやりとりが幻視される光景であった。
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