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釈迦の掌~クラス転移で才能開花~  作者: にゃほにゃほ
閑話
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閑話:白きメイドの幼き頃に見た夢

デイリー1000PV達成記念です。


 私、フレーゼには幼い頃に抱いた夢があります。


 分別付かない子供にしてはおかしな夢かもしれませんが...




 私は貧しい農村で生まれました。


 私の白髪をソラ様は綺麗だと仰ってくれますが、そこでは違いました。


 「忌み子だ。」「悪魔だ。」と村の人たちは言いました。


 ここは白髪の子供を《災いを呼ぶ者》とする風習がある村でした。


 さらに父は母を捨てて、どこかへ消えました。


 原因はやはり私でした。


 私の両親はどちらも白髪ではありませんでした。


 父は母から白髪の私が生まれたのを見て、母の不貞を疑い出て行ったのです。


 そんな事実はないというのに。


 そんなことがあったにもかかわらず、母は私を大事に育ててくれました。


 村を出て、町を転々としながら。


 身寄りのない女の働き口など限られるもので、母は春を売っていました。


 幼い子供を育てるのに必要な資金を捻出するにはそれくらいしかなかったのです。


 私が3歳になった頃でしょうか、母はある男爵様の妾として見初められました。


 母は男爵様に妾となるよう言われた時に私のことも話したそうです。


 母はこれで話はなくなるだろうと踏んでいたそうですが、その男爵様は首を横には振りませんでした。


 男爵様は一目惚れだったと言っていました。


 母はそれほどまでに美しかった。


 一児の母とは思えない体型を維持し、美貌も霞むどころか母となったことで力強さが加わっていたのです。


 幼いながらも母のような女になりたいと思いました。


 それからの生活は一変しました。


 食事内容、住居、周りの環境と何もかもが前とは比べものになりませんでした。


 私は実子ではないにもかかわらず、男爵様は私を可愛がってくれました。


 物心ついた時から男親を知らない私は、父親がいたらこんな感じなのかなと思いました。


 しかし、男爵様の正妻は面白いはずがありません。


 当然のように母は嫌がらせをされました。


 陰口は当たり前、服がズタズタに引き裂かれていた時もありました。


 酷い時は階段から突き落とされました。


 幸い、命に別状はなく骨折で済みました。


 私はなぜ男爵様に言わないのか母に尋ねたところ、「ここで告げ口などをすれば、矛先はフレーゼに向いてしまうかもしれないでしょ?お母さんは、フレーゼが元気でいてくれればいいの。」と笑って言っていました。


 私のせいで村を追い出され、私のせいで体を売るような商売に身を落とし、私のせいで傷つくことを許容している。


 なぜ自分のような忌み子にそこまで出来るのか泣きながら尋ねると「私の可愛い可愛い娘ですもの。娘を守るのは母親として当然でしょ?」と言いました。


 私は涙が溢れてしようがありませんでした。


 そして決心しました。


 私が母を守ろう、どんなことをしても。


 まず、私は知識を付けることにしました。


 男爵様にお願いして学習環境を整えてもらいました。


 そこで、ある書物に出会ったのです。


 その書物はこの世界で頻繁に読み聞かされるものらしかったのですが、私は聞いたことがありませんでした。


 それは「勇者の物語」という勇者が魔王を倒すというごく普通の物語です。


 しかし、私は心惹かれました。


 その目的を達成するためにありとあらゆる手段を用いる覚悟に。


 その素敵な笑顔で笑う姿の書かれた挿絵に。


 その他者を圧倒する才能に。


 それら持つ魔王・・に憧れてしまったのです。


 普通は勇者に憧れるのではないのか?と言いたいのですか?


 そう思った人は愚かですね。軽蔑します。


 あれだけ周りに支援してもらって目的を達成する勇者カスに、どうやって憧れろというのですか。馬鹿なのですか?


 それでも憧れるという人は他人に決められた人生を生きればいいのです。


 そうすれば、あなたはその人の勇者になれるでしょう。私はごめんですが。


 そんな勇者カスより魔王に憧れた方が4億倍いいです。


 たった一人で勇者カスパーティを苦しめ、勇者カスを苦しめるために知略の限りを尽くす。


 最終的には勇者カスが生き返るという訳の分からない現象によって魔王は倒されてしまうのですが、普通なら魔王の勝ちでした。本当に訳分かりませんよね?そうですよね?


 とにかく私が言いたいのは魔王はカッコいいということです。


 そして私は、魔王のような人と生きてみたいという夢を抱きました。


 魔王は一人だったから勇者カスに倒されてしまったのだと思ったのです。


 もし、側で支えてくれるような理解者がいたならば魔王は勇者カスに勝てました。絶対です。


 私はその魔王を支える者になりたかったのです。


 それから私は努力しました。


 学問、武芸、作法と必要だと思ったことは全て修めました。


 もし将来、魔王に求められた時のために夜伽の勉強もしました。


 幼いことを活かして、娼館に勤めている人に実際に聞きに行ったりしました。


 「好きな男の子がいるの。お姉さん、どうすればいいかな?」と上目遣いで。


 大抵の人はこの方法でいけました。世の中簡単だなと思いました。


 とにかく努力したことによって母を正妻の魔の手から守れるようになりました。


 それからしばらく平穏に時は流れました。


 私が15歳になる頃でしょうか。


 母が倒れました。


 治療師に診せたところ、若い頃の無理がたたって内臓が弱っているとのことでした。


 私のせいだと思いました。


 日に日に衰弱していく母の姿を見ていられませんでした。


 それでも母は笑顔を絶やしませんでした。


 私はその笑顔を見るのが辛くて泣きそうになりました。


 その表情に気付いたのでしょう。


 母は「あなたは優しい子だから自分のせいだ、なんて思っているのでしょう?違うわよ、お母さんはフレーゼがいたから今まで頑張ってこれたの。」と慰めてくれました。


 不愛想と言われる私の表情を見抜くのは、流石母親だと思いました。


 それと同時に、やっぱり母は私の理想の人だと思いました。


 私はそれから積極的に母と過ごしました。


 私の夢についても話しました。


 「フレーゼ、あなた熱でもあるの?」と心配されてしまいましたが。


 そんなこともありながら、楽しく過ごせたと思います。


 そしてその時は来ました。


「フレーゼ、お母さんはあなたが産まれて来てくれて本当に良かったと思ってるの。お母さんに似てこんなに美人なのだもの。絶対に産まれてこなければよかったなんて思ってはダメ。出来ることなら、あなたのこれから為すことを生きて見守りたかったのだけれど、それは出来そうにないわね。幸せになりなさい、フレーゼ。お母さんはあなたをいつまでも見守っているから。私の愛しい娘に幸多き人生を。」


 そう言って母は安らかな顔で息を引き取りました。


 男爵様は母への手向けとして、私の意向を極力叶えたいと言って下さいました。


 私は王宮での宮仕えを希望しました。


 私の夢を叶えられる可能性が一番あると思って選択しました。


 それから3年ほど真面目に働きました。


 何故か立場が上がっていきましたが。


 そして運命の時が来ました。


 王国が古代遺跡から発見したという魔法陣を使って、異世界から勇者を呼び出すというではないですか。


 私は期待しました。


 私の夢を叶えられるかもしれないと。


 私は興奮して一週間眠れませんでした。


 召喚する部屋には入れなかったので、出口で隠れて期待の視線を向けていました。


 何人か勇者と思しき方達が出てきましたが、どの方も私の視線に気付きませんでした。


 この程度の視線位気付いてもらいたいものだと落胆していると、その方は現れました。


 出口から出てきた瞬間に私の視線に気付いたのです。


 私は歓喜しました。


 あの方は他の勇者とは違うと。


 早速、3年間で上がった立場を利用して、あの方の担当にしていただきました。


 初めて会った印象としては、顔立ちはそれなりに整っているものの印象の薄い少年だと思いました。


 しかし、目だけが異質でした。


 その視線を向けれると自分の全てを見透かされているような感覚に陥りました。


 やっぱり、この方は何か持ってる。


 そう思いました。


 今思えば、一目惚れだったのでしょうね。


 胸の鼓動が加速していくのを感じていました。


 その少年の名前はアカイソラ。


 物腰の低い少年だと思いました。


 なにせ、なかなか敬語を止めて下さいませんでした。


 それに素敵な笑顔で笑う方です。


 初めて見た時は、思わず下着を取り換えることになりました。


 あの笑顔は反則です。私の憧れていたそのものでしたから。


 フレーゼと初めて呼び捨てにされた時も下着を交換しました。


 あの方は私の下着を交換させる天才なのでしょうか。


 天才と言えば、彼はやっぱり持っている方でした。


 それも圧倒的なものを。


 そうでなければ、死者無しで戦争にケリをつけるなんて偉業を成し遂げられるはずがありません。


 あれでこの世界に来てまだ半年ほどしか経っていません。


 末恐ろしいものを感じて、下着を交換しました。


 彼はやはり私の下着を交換させる天才なのです。


 彼は心に闇を抱える孤独な方でした。


 魔王はこの闇を理解してもらえず、孤独となり勇者に討たれました。


 このままではこの方もいずれそうなってしまうかもしれません。


 私はこの方を一生かけて支えようと思っています。


 それが私が幼き頃から抱いている夢なのですから。


 絶対に一人になんてさせませんからね、ソラ様。





 

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