異世界で奴隷を押し売られました。その奴隷、怪しすぎる生き物です。
「あひゃひゃひゃっ!ひーっ、ギャーッハハハハッ!」
「うん。これは、癖になるね」
「だ、だめ、む、り、ヒッヒッひゃっはっはっあひゃひゃひゃ」
「いい匂い……ちょっと優希。煩い」
「ひーっ!アハハハハッ!ぐっゲホゲホ!」
故郷の天国にいる、お爺お婆。
現在優希は、異世界で獣耳目玉無い奴隷に殺されかけています。
……今、会いに逝きます。
猫・虎・狼・蛇に変身できるモリを撫で尽くしてごめんなさい。
毛皮とツルツルの誘惑に勝てなかった私を許して下さい。
猫に変身した時、猫吸いなんてして申し訳ありませんでした。心の底から反省します。
今、私その逆をやられて猛烈に反省しています。
事の発端は、猫に変身したモリに私が理性を失ってくんかくんかナデナデス~ハス~ハした事にあります。
可愛らしい猫姿で、僕もやってみたいと言われた為深く考えずOKしました。
途端に人の姿のモリがドーン!
腹に激突してきて脇腹ギュッ、腹にグリグリ~っと顔押し付けられ私の腹筋は崩壊しました。
私、酸欠で死にかけです。
「はーっはーっ、うっゲホゲホッゲホ!」
「優希?」
「あ、あんた、こ、殺す気、かっ!」
「ううん?ご主人様に傷一つ付けないし、付けさせないよ?」
ぎゅ~グリグリグリ。
「や、やめ、ひっひっ」
「ん~、気持ちいい。柔らかい…僕が埋まりそう」
「おい!それは何か?贅肉たっぷりって言ってんのか!」
「もっと付いててもいいよ?」
「乙女の心抉る所業!ひっあひゃひゃひゃ!」
モリが満足して私の腹から手を離すまで、もう少しかかりました。川の向こうで、お爺お婆が手を振っているのを何度か見た気がする。
息切れしながら説教した後、接触禁止令を出した。
獣耳へにょ姿の今にも泣きそうな雰囲気を醸し出すモリに、思わず他なら良いと言ってしまった私は、膝の上に乗せられ頭に頬ずり受けています。
幾ら浄化と呼ばれる魔法をかけられても、ずっと風呂入ってない私には、匂いを嗅がれる行為の精神的ダメージが半端ない。
「ん~、フフフ。優希の気持ちが分かる~」
「ああそう。……モリ?」
「ん~?」
「ちょっ、匂い嗅がないで」
「どうして?優希もやってた」
「うぐっ」
「い~い匂い…」
「ぐあぁ」
「本当は浄化かけたくないんだ。匂いが薄れるから」
「変態か!」
「僕が知ってる変態はもっと凄かったよ?雌の、」
「ぎゃー!わー!言うな!」
「じゃあ、これくらい良いよね?」
「ぐぅ」
……おかしい。確か奴隷ってその人に付き従う事じゃなかったっけ?
毎度してやられてる感が拭えない。
脱力してされるがままになった私は、兼ねてからの疑問を口にしてみた。
「モリ、もしかして見えてる?」
「ん~?」
「見えてるよね?」
「何言ってるの?僕には目が無いんだよ?」
「何にもぶつからず歩いてるし、ご飯も一人で取ってくるし、さっき迷わず腹に突撃かますし」
「僕は色んな獣が入ってるから」
「気配で分かるって事?」
「そんな感じかな」
蛇は、熱感知出来る器官がある。犬猫には、優れた嗅覚と聴覚が。それらを合わせて目の代わりにしてるってこと?
「そっかぁ、凄いね」
「うん。……優希はそのままでいてね?」
「は?どういう意味?」
「ううん?フフ……僕のご主人様は可愛いなぁって思っただけ」
「?何それ?」
「ウフフフフ……」
「怖い!何か怖い!」
「やだなぁ。こんなに従順で素晴らしい奴隷を掴まえて、怖いことなんてないデショ」
「どこがだーっ!しかも、掴まえてないし逆に掴まった気がするんだけど」
「離れてあげない」
「ひぃ」
その後、お腹空いてぐぅと私の腹が鳴るまで、くんかくんかナデナデされ続けた。
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