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そんなチートならお断りします。  作者: ぷりん・ざ・さーど・えくすぺりめんと
かんべんしてよ編
4/17

ああ、女神さま、かんべんしてよ。

 その時、神さまが(ふところ)から何かを取り出した。


「とうっ」


 サンダー・ドラゴンの向かって右側、数十メートル先に投げる。

 けっこう、良い肩してんな。神さま。


 今まで親の(かたき)みたいに俺らを(にら)んでいたサンダー・ドラゴンが、急にその長い首を、神さまが投げつけた「何か」の方へ向ける。


「な、何すか、あれ」


「サンダー・ドラゴンの大好物、雷雷軒(らいらいけん)のジャンボ肉シュウマイよ。なに、こんなこともあろうかと、用意しておいたのだ」


「なら、早く出せ!」


「いいや、しょせんは(わず)かな間の時間稼ぎにしかならん。いかに雷雷軒(らいらいけん)のジャンボ肉シュウマイがジャンボとはいえ、相手が大きすぎる。持って数分……」


「数分も、持つの? あのジャンボ・シュウマイ、そんなに食べにくいの?まあ良いや。逃げましょう、とにかく今のうちに、ソープラで逃げましょう」


 走り出そうとした俺の首根っこを捕まえて、神さまが言った。


「いいや……ここで、一気に()()を着ける」


「ええっ、何で? 何で、そういう展開? 何でカスタム・ミク・チューン・ミク・ソープラで逃げないの?」


「ここで、これから、女神さまを召還する」


 神さまが、おれの叫びを無視して、きっぱりと宣言した。


「……め、女神さま?」


「うむ」


 必死で逃げようとしていた俺の脚が、止まる。

 神さまに向き直った。


「本当っスか?」


「ここで嘘言ってどうする」


 ヤッター、女神召還イベント、来た!

 いやいや、待てよ。この爺さんのことだ、(わな)かも知れんぞ。


「ちなみに、すっげー、かわいいぞ」


「ほんとっスかぁ~、信じられないなぁ」


「ああ、もう半分食べられた……雷雷軒(らいらいけん)のジャンボ肉シュウマイ、もう半分食べられちゃった……ああ、このままだと、ワシら、どうなっちゃうのかなぁ……」


「あの図体で、まだ半分かよ。どんだけ食べるの下手なんだ。わかりましたよ。早く、呼びましょうよ。女神さま」


「おぬし、モスラって知っとるか」


「なんですか、唐突に。な、名前くらいは聞いたことあります。見たことは無いけど。なんか、ゴジラ系? 俺らの世代だと、さすがに、そういうの詳しく無いんスよ。ああ、なんか『モスラの歌』とか一度くらいは、聞いたことあるかなぁ……ヨーチョーブで」


「何バージョン?」


「な……何バージョンって……よく知りませんけど、特撮とかセットとか、ちょっとレトロだったし……1960年代? くらいのやつじゃないですか?」


「よしッ!」


「え? ま、まさか、女神召還って……」


「そう。あの歌、丸パクリすんの。おれらで」


「良いんですかっ、それ。それに、歌詞覚えてませんよ。なんか外国語みたいなファンタジーな感じだったし」


「今から替え歌教えるから。覚えろ」


「か、替え歌っすか……」


「めがみぃ~や、めっがっみぃ~

 まんまん、くっさ~くさ、めっがっみぃ~」


 下品!

 下品! 下品! 下品!


 神さま最低!


「おれ、高音やるから、お前、低音パートな。

 ちゃんとハモれよ」


「……」


「それから、振り付けもあるし。それも覚えろ。間違えんなよ! 俺らのシンクロ率、百パーセントじゃないと、呪文、機能しないから。これから特訓なっ!」


「……」


 それから俺らは、サンダー・ドラゴンが雷雷軒(らいらいけん)のジャンボ肉シュウマイの残りの半分を食べきるまで、特訓を続けた。

 何故か、特訓の成果あって、俺らは完璧に歌と振り付けをマスターしていた。

 シューマイ、食べきる前に。


 まったく……やれやれだぜ。


 雷雷軒(らいらいけん)のジャンボ肉シュウマイを食べ終えたサンダー・ドラゴンが、再びこちらを向く。


「今じゃ、いくぞ、女神召還の歌……ハイ……さん、しっ」


「めがみぃ~や、めっがっみぃ~

 まんまん、くっさ~くさ、めっがっみぃ~」


 ああ……もう、どうでもいい……どうでも……


 俺とジジイは、見事シンクロ率百パーセントで呪文の詠唱を完遂した。

 その瞬間。

 どこからともなく、光の粒子が、俺らとサンダー・ドラゴンの間に集まりだした。

 光の粒子が、次第に量を増していく。

 まぶしくて、目を開けていられない。


「でゅわっ!」


 ……え?

 目の前に、全身を銀と赤のツートン・カラーに塗り分けた巨人がファイティング・ポーズを取っている。

 そっちっスか! 今度は、そっちですか!


「あれが女神?」


「……うん」


「どこが、女神なんだよ! どの辺が、(おんな)なんだよ!」


「ミニ・スカートはいてるじゃん」


 確かによく見ると、銀と赤のツートン・カラーの肌(?)と同色でコーディネートされた布を、腰に、申し訳程度に巻いている。

 相手は、巨人だ。

 足元に居る俺らからは、ミニスカの中、丸見え。

 まあ、見えたからと言って、どうと言うこともないが……


 ……あれ?


「か……神さま……」


「何じゃ、うるさいな。貴様は。黙っておれんのか。これからクライマックスじゃというのに……」


「か、神さま、気のせいかな?なんか、あの女神さま、股間の部分が青く光っているように見えるんですけど……気のせいかな……?」


「ああ、あれな。あれ、カラーリング・タイマー。あれが、赤くなってピコピコ言い出したら、女神さま、電池切れ」


「なんで、()()()なの? ねえ、なんで? 訳わかんない」


牛虎(ウシトラ)星人にとってはな、カラーリング・タイマーは一番大事なモノなのじゃ。だから一番大事なところに着けたんじゃろうて」


「……」


「さあ、いよいよ。最後の闘いじゃぞ。もう、黙って……」


「いま、牛虎(ウシトラ)星人って言いませんでした?」


「それが、どうした。いわゆる一つの、牛虎(ウシトラ)マン……じゃない、牛虎(ウシトラ)ガールじゃ。彼女な、牛虎(ウシトラ)星の国立牛虎(ウシトラ)大学の本年度ミス・キャンパスじゃ。ピチピチの女子大生じゃぞ」


「でゅわっ!」

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