エイリアンさん、かんべんしてよ。
これから、主人公は、どうなって行くんでしょう。
作者の私も全然考えていません。
俺の高校が、エイリアンに占拠された。
エイリアンたちは、生徒と教師全員を体育館に集め、俺たち全員の首に、妙な銀色の首輪をハメやがった。
「我々ノ、命令ニ従ワナケレバ、コノりもこんデ、強制わーぷダ!」
……翻訳すると、こういう事らしい。
この首輪は超小型ワープ装置で、エイリアンの命令に従わないと、宇宙の彼方に強制的にワープさせられる。
ステージの上のリーダーらしきエイリアンが手(触手?)に持っている銀色の箱は、その起動スイッチらしい。
もちろん、ワープ装置にはプロテクトが掛けられていて、無理に外そうとすると自動的にスイッチが入り、やっぱり宇宙の彼方に飛ばされる。
(なんか、バトル賄賂やる、な設定だな……)
俺がそんなことを考えていると、ステージ上のリーダー・エイリアンが、腕(触手?)を上げて、
「コレヲ、見ロ!」
と、叫んだ。
それを合図に、手下のエイリアンが、ステージに設置されたキャノン砲みたいなマシンのレバーを引く。
体育館の照明スイッチを、オンにしたりオフにしたりする時って、「ダンッ!」て音がするだろ?
あれとそっくりな音を立てて、キャノン砲の案外まるい先端が光を帯び始める。最初オレンジ色の弱い光だったのが、だんだん明るく白くなっていくところなんかも、体育館の照明にそっくりだ。
ちなみに、本当の体育館の照明は、俺らが集合させられた時点で、全部点灯していた。
「ア、暗クスルノヲ忘レタ……」
俺らに光線銃を突きつけていた手下エイリアンの一匹が、走って配電盤へ向かう。
間抜けなヤツだ。
でも、足(触手?)をウネウネさせて走る後ろ姿、ちょっとカワイイな……
変な趣味に目覚めそうで、嫌だ。
もう、いっぺん、「ダンッ!」という音がして、今度は体育館の照明が落ちる。
ポワワワワ……
気の抜けた音をさせて、キャノン砲からレーザー光線が射出された。
ターゲットは、俺ら……ではない。
体育館の屋根に向けて光線がはしり、そこに巨大な3Dスクリーンが出現する。
なんだよ、あのキャノン砲、3D映写機かよ。
真っ暗なスクリーン上に、星がまたたいている。
どうやら、どこかの宇宙空間らしい。
「オイ、ソコノ大人!」
リーダー・エイリアンが、ステージの上から指(触手?)さす。
ネットのニュース動画で時々やってる、総理官邸の記者会見中継とかで、質疑応答のときに官房長官が新聞記者を指名するだろ。あんな感じ。
指名されたのは、国語教師の山田だ。
ちなみに教師もふくめて俺ら全員、強制的に膝かかえて体育座り。
勝手に立ち上がったら、もちろん、即ワープだろうな。
「は……はい!」
国語教師の山田が情けない声をだして、立ち上がる。
かわいそうに、顔じゅう、あぶら汗ダラダラで、薄暗い体育館でも、汗で顔がテカテカ光っているのが分かる。
「オマエ、ミセシメダ……」
「え?」
言うと、リーダー・エイリアンが手(触手?)に持ったリモコンのスイッチを押す。
いきなり、国語教師の山田の体が洋服ごとボワーンと光りだし、突然シュッ、と、この世界から消滅した。
すげぇ、今のがワープか。
でも今、見せしめって言ったよな。あの、テロリスト・エイリアンのリーダー……
見せしめって言うのは、普通、あれだろ、反抗的な態度を取った人質が、他の人質が二度と反抗しないように公開処刑されるっていう。
映画とかで雑魚キャラの一人が、居酒屋のお通しみたいに、まず最初の犠牲になるやつ……
あ、ごめん。高校生のくせに居酒屋とか言っちゃった。
……それにしても国語教師の山田って、人質の分際で、テロリストに反抗するようなガッツのあるやつだったっけ?
授業中に生徒がiPhoneいじっているのに気づいても見て見ぬふりをする、あの国語教師の山田が?
いやいや、あれで案外、こっそり携帯で外の警察とかと連絡とっていたりしたのかな……それがバレて……
そんな、こんなを考えていると……
「コレヲ見ロ!」
リーダー・エイリアンが天井の3Dスクリーンを指(触手?)さした。
どこかの宇宙空間にふわふわ浮いている国語教師の山田の姿が映し出されていた。
拡大投影されているから、身長十メートルの巨人に見える。
手足をバタバタさせながら、無重力空間に浮いていた。
少しだけ……気持ち良さそう……でも、顔は必死の形相。
その姿が、少しずつ、小さくなっていく。
宇宙カメラから離れていっているのか……
やがて、国語教師の山田は、豆粒みたいに小さくなって、宇宙の彼方に消えた。
……合掌……
その時。
ピュルルルル……
音がした。
……また、秘密兵器か?
ワープの次は、何だよ? 重力光線とか?
ピュルルルル……
また、音がした。
い、いや、違う。
俺の腹だ。
俺の腹が鳴っているんだ。
同時に、差し込むような痛みが腹部を襲う!
思わず体育座りの、ひざの間に顔をうずめた。
「大丈夫?」
となりに座っていた藤本が心配して、ささやく。
藤本は、とりあえず俺らのクラスで一番かわいい。
おれも、週二回は、夜のオカズにさせてもらっている。
ど、どうしよう……
トイレ行きたい。
でも、立ち上がったら間違いなく殺される。
国語教師の山田みたいに、銀河の彼方へ飛ばされる。
殺されるくらいなら、ここで漏らすか?
なにしろ緊急事態だ。周りの連中も見て見ぬふりをしてくれるさ。
いや、駄目だ。
藤本が隣にいるのに、それだけは絶対に嫌だ。
これだけ薄暗いんだ。一人ぐらい立ち上がって動いても気づかないよ。多分。
さっき配電盤に走っていった監視役の手下エイリアン、けっこう間抜けそうだったしな。
おれは、そろーり、そろーり、腹部に走る激痛をがまんして、立ち上がった。
ふと顔を上げると、リーダー・エイリアンと目が合った。
「ハイ、消エタッ!」
……ぽちっ。
俺の全身が、光に包まれた……