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9話目 出陣前に、武装を整える話、もしくは走る棺桶が登場し過去のエンジニアと友達になれそうな気がするくだり

武器や装備を整えつつ、その効果とコストについて考察するくだり


 卵型のフォルムに合うように作られた板金鎧を身につける。名前の通り、金属製の板。材質は鉄を中心にした合金?のようなもの。?が付くのは材料自体に何やらこちらの世界特有の細工をしているようであるから。チタンに似ている?一応、対衝撃用に、緩衝材も実装されてはいるが基本金属鎧。アンダースーツは皮?製。この皮?もなんだか素材がおかしいような。みょうにしっくりとくる感じ、皮なのに、柔軟性が高い、高すぎる、これは材料からして、あちらの世界の皮とは少し違っているような気がする。こちらの生物由来の物かもしれない。

 軽く白い肌が見えるように、着替えているが、ちらちらと、こちらを盗み見て、顔を赤くしている猫耳少女の反応は、軽く無視をしているポーズ。良い反応。卵の半裸で興奮する少女をみて、暗示の効果を確認する……全面的に信頼するだけでなく、淡い憧れとか、恋心さえ生まれてきているよう。少し薬が効き過ぎたかも、次は気をつけよう。

 金属鎧は、本来は重量があるものを、魔法で重さを軽減してあるので、見た目よりは軽い。相変わらず非常識な技術、この魔法というものは。見かけの質量をどのようにして、ごまかしているのやら、質量を生み出す素子そのものに干渉して、どこかへ力を逃がしているのだろう、と予想。どこの逃がしているのであろう?ベクトルを操作して、重力の働く方向とは別に動かしている?もしくは、質量を発生する粒子をはじいて、減らしているのかも?世界の総質量は変化しないはずなのでそのぶんどこかで、帳尻を合わせているのだろう、わずかに世界中の質量が増していると考えるのが自然か?

 よく考えると、状態をそのまま固定保存する魔法があるのだから、只の布でもあちらの世界でいうところの銃弾を跳ね返すほどの硬度を持たせることも可能では無いか?と思う、状態を維持するコストと、重量を軽減するコストでは、軽くするほうが安いという可能性もあるが、そもそもどちらも非常識なエネルギーを消費しているのであるということが、こちらの世界の住人には分かっていない。

 どちらかというと、様式美というか、鎧姿の方が、こと防御という面では安全というイメージがしやすいので、魔法が使いやすいという心理的な要因が高いのかも知れない。となれば、純粋に魔法の総量のみで効果が判断できる、私にとってみれば、そのような心理的要因は薄いのであるから、只の布のように見える、服に多大な防御力を付与することも可能なのかも知れない。これはのちに要研究の事、メモ。

 ともかく、迷宮に用意してあった、卵型の金属鎧、兜頬面付きを身につけて、バイザーを上に跳ね上げておく。前方が見づらいから。そして、日よけと防寒用のマントを身につけて、身繕いは完成。猫耳少女のスノウが、かっこいいなーという目で見ているよう。まあ、見ようによっては、完全武装の卵はかっこいいかもしれない。

 猫耳少女の装備も多少変更している。フード付きのマントを新調。迷宮のここの武器庫にあったもので、森林で身を隠すのに都合の良い、迷彩柄とその手の隠密系の魔法がかけてある。生来のハイド能力に加えて、マントの効果を発揮すれば、鼻先にいてもその存在を感知することが難しくなるという優れもの。加えて、静かに移動すれば、姿を隠し続けることも可能。音と気配も抑えることができる。デザインでその隠密状態を強化しつつ魔法で認識をぼやかして、防音と防臭の効果がある素材をこれまた、魔法で強化、永続しているという。もう何も言いたくはないけれど、やはり、こう、非常識ではある。

 そもそも、ノイズをいちいちキャンセルするとう機構を永続的に行うというのは何事かと……。振動を逆方向の波動でもってして、打ち消しているとかいう理屈なのだろうけれども、自らが立てる音を感知して、それに対応する波動を瞬時に作り出し、中和するとか……いや、特定の音を中和するくらいなら、それほど難しくはないのか?衣擦れとか草木に対してこする音とか、それでも、自身の出す音は出来るだけ軽減しつつ、周囲の音を不自然でない程度に消すとか、範囲指定とかどうなっているのだろう……そもそも、音を感知するような機構がマントに見えないのがなんとも、マント自身がそれらのセンサになっているというご都合主義的な仕様なのだろう。

 防臭はまあ、ある程度納得できるのではあるが、それが永続するとなると、非常識。防臭剤とかどうやって生成しているのだろう?ああ、つまるところ、このマントは生きているのだろう。自身で何らかの栄養を取り込んで、各種必要要素を生成しているという……どちらにせよ非常識な。何を栄養にしているのか、どこから取り込んでいるのかが気になるので、これも後で調査対象。

 認識阻害は、特殊なパターンの模様と、光を直接操る魔法の補助で成り立っているよう。うん、もう何も言うまい……いや、言わなければならまい。高度な心理学も利用されているような気がするのだけど、その手の知識は体系化されていない、恐らくは経験則における職人技なんだろう……職人凄いと褒めておけば良いのだろうか?どちらかというと、自然現象を再現してみたような部類?おそらくこのような認識阻害をするような面白生物がこちらの世界にはいるのだろう、で、それをまねてみたと、ということなのかも知れない……。

 ここまでくるのならば、背後の映像を投影する全身を覆うスーツのような物を作った方が、シンプルでコストも低そうなのだけれども。すっぽりと全身を覆って、センサをつけて、防音、防臭に関しては、は密閉型にしたほうが製作が容易いだろうし、魔法で光を操るのであれば、認識を阻害するよりも、完全に消えたように見える、背景映像投射式のほうがより効果的なはず。これもまた、心理的な要因によるものであるように推測、おそらく制作者のイメージとして、見つかりにくくなるマントというアーキータイプがあったゆえの製作物であると推測。

 壁に立てかけてあった槍を手にとって、武装は完成。槍は長さ1.5mほどの長さで、穂先がコーン状になっている。これも色々しかけがある。ざっと槍のスペックを読み取ってみる。かるく振り回して、重心を確認。空気を切る音がする。くるくると両手で回してみる、突くことが基本、しかし柄も丈夫であるので、なぎ払うこともできる。問題なし。華麗に舞う卵の槍を見て、猫耳少女がぼうっとした、かっこいいなー的な、熱い目になっている。薬と暗示はなかなか良い仕事をしているよう。


移動手段と、追加武装の点検、むしろこちらが主武装となる多脚棺桶の登場


 武器庫からエントランスへ戻る。そこには、迷宮のメンテナンスデバイスであるところの、緑色のゼリー状の質量体が、すでに移動用のビークルを用意している。そこに鎮座しているのは、大きな棺桶に脚がはえたもの。箱状のボディは全高と全幅が1.5mほど、全長は2.5m弱右前隅にやや飛び出した座席がつけてある。箱状のボディの側面と底面とのさかいの辺に、8対の脚が生えている。昆虫の脚を模したもので、箱との接点で一つ、膝に当たるところに一つ、足首に当たる所に一つ、系三カ所、関節がある。そのうち、箱との接点の関節と膝関節はフレキシブルで、360度自由自在に動かすことができる。

 8対の脚は、素早く力強く大地を掴み、野山を掛ける。その速度は一日千里を走る……というのは冗談としても、悪路、山道でも時速40キロは確保する。動力は飽きもせず魔法を使用するときに放出する粒子。なんとも万能で気持ち悪い。可動時間は20時間から40時間。幅があるのは、出力に幅があるため、高出力で起動させるとやはり燃費が悪い。座席の前にあるボディから突き出た、操縦桿を握ってコントロールする、この操縦桿は、前後左右には動くようになっているが、それはフェイクで搭乗者のイメージを読み取って動くというトンデモ仕様。それに加えて、簡単な指示を聞く程度の自律行動も可能という、これも一種の生き物と考えて問題はない。

 悪の秘密結社時代に迷宮の周囲の防衛を担っていたビークルの一種。保存状態は完璧。世界を相手に100年は持ちこたえることができる戦力に一端を担う存在という、実力はダテではない……とカタログには書いてある。なんだろう、この整備班というか、武器武装開発班の責任者?とはお友達になれそうな気がする。膝と膝を付き合わせて、じっくりとお話していみたい。主に常識というものについて。

 座席は基本的には単座ではあるが、後ろに補助席があるので複座も可能。もっとも、小さいので窮屈ではあろうけれど、小柄な猫耳少女にはなんら問題はない。卵様の、膝に乗りたそうにしていたが、さすがにそれは危ない、きちんとシートベルトをつけて上げる。補助席でも四点式。安全設計。しかし、それならばむき出しの操縦席はどうなのだろう?一応、風よけの前面透明装甲、はあるけど。軽量化と、素早く乗降するための仕組みか。卵型のボディを席にうずめる。こちらはピッタリとはまる。さすが専用機。そのまま鎧のジョイントで固定される、これは思念で解除可能。それとは別に解除ボタンもある、一応、少女にも教えておく。

 基本少女にとっては、オーバーテクノロジーかもしくはロストテクノロジーであるので、一つ一つ驚いてはいるよう。ただ、全面的にワタシを信頼しているので、疑いもせずなすがままに行動している。非常に素直で、話が早い。

 コンソールに手を伸ばして、多脚棺桶の各種デバイスを確認、点検。基本的なところは迷宮のメンテナンスデバイスである緑ゼリーを通じて確認済みではあるが、搭乗者の最終確認も必要。動力は低起動状態。安全装置、武装は問題無し。パネルはオールグリーン。非常用の装置やら、遭難時のキットやら応急処置ようの備品やらも確認。それほど時間をかけるつもりは無いので、通常の食料は積み込まない。現場で村人達への救援物資が必要になる可能性もあるので、後追いで数台、物資をのせた棺桶を送る準備はしている。そちらには、容量の関係で武装が乗せられないので、戦闘が終了した辺りに到着するように調整しておく。先行するこちらの合図とともに出発してもらう計画。周囲のマップは最新のものに更新済み、雀さんたち良い仕事をしています。

 さて、準備は完了。突発に生み出された迷宮が、迎撃準備などを整える前に、突貫すると致しましょう。

 槍を構えて、さあ、出発です。はいよーしるばー、とか、言った方がいいか?いやそれはさすがにふざけ過ぎ。

「いきますよ、スノウさん」縦列の複座に座る猫耳少女さんへ声をかけます。

「はい、卵の騎士さま」口調やら表情やらが興奮に満ちあふれていますね。怖がっていないのは良いことです。

 迷宮の入り口が開きます。少なくとも数十年ぶりの出陣です。いえ、秘密結社時代からすれば数世紀ぶりの戦闘行動としての開門でしょう。感慨深いものは……それほど感じませんね。さあ、状況を整理しにいきましょう。



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