7話目 少女の村で結局何が起こっているのか、調査するくだり もしくは雀さんの登場
猫耳少女の暮らす山間の村でそれでは何が起こったのか調査、考察するくだり
さて、再び眠りについた少女を他所に、私は彼女の村に起こった現象を調査する。研究所には、この場所を作成した魔法使いの資料とはべつに、過去、この迷宮が秘密結社のアジトとして運用されていた当時の資料もまた保管されている。少女の証言、『村が突如として生まれた壁によって隔離されたというもの』、という現象には思い当たることが、脳に焼き付けられている知識の中にある。で、あるので、その条件にあうような場所であるか?と、周辺地域の調査をした過去の報告書を探す。地形が大きく変化していないことは、先ほどの猫耳少女への聞き取り調査で判明している。
すると、猫耳の少女が住んでいたであろう村の記録を発見する。なるほどそこは、このアジトの前線基地?のような場所であったよう。迷宮が位置する山への道をふさぐようにして、作られている村で、遠い過去には、秘密結社のアジトに近づく敵対的な存在の感知やら、監視やらに使用していた場所らしい。村の出入り口が周辺の地形的要素によって限られているように、作られている。
同時にアジトである迷宮に何かあった時や、敵対的な組織に襲われたときやらのための仕掛けが存在していたことも、また突き止められる。それは、迷宮という巨大な生き物の性質を利用した、大掛かりな罠というもの。半ば自爆的なギミック。なるほど、今回はそれが、何らかの原因で誤爆?誤動作して、このようになったと。対象を足止めするための、迷宮作成。迷宮という生物を操作してそれの爆発的成長による封じ込め。なるほど、彼女の親は、これをして『発芽』といったか。うまいことを言う。
問題は、何か?
どうやら、正式な手順では無く偶発的に行われた迷宮化である点か?いやそもそもは非常用の罠であるから、正式な手順で発動はしたかもしれない、その場合意図的であったのか否かという点が問題になるのか?しかし、村の住人が、意図したとおりだった、ということは?……無いか。すでに秘密結社自体遠い過去のものとなって実体が無く、敵対組織に対してのアクションの必要性は薄い。そもそも、もともとの、敵対組織に対しての対応として、この迷宮は、”死んだふり”、でごまかすことを前提にしているのであるから、そのようなリアクションを取るのは不合理。また、その村がこの迷宮に対する、門番的な位置づけであるという知識が住人達に伝達されている可能性は薄いと思考。なぜならば、時間の経過と少女の証言、この迷宮への立ち入り記録などから、ここが忘れられていた場所であることが判明しているから……しかし彼女の両親は場所と入り方は知っていたよう、そのわりには実際に入った形成は少なくとも数十年のオーダーで無い……何らかのタブーがあり存在は知っていたが、入ることができなかったとか?もしくは、彼女の家系のみの知識か?これは彼女が再び目覚めたら聞き取り調査をすること。
ともかくもこれらは推論に推論を重ねたに過ぎない。早急に何が起こったのかを調査に行く必要有り。さて、ではやはりこれらの調査用のデバイスの一群を起動して、整備をすすめよう。
周辺調査用のデバイス、その、起動と顛末について
小鳥の鳴き声をさせてみる。自然に見えるように、無秩序に。一層のエントランス、大量の小鳥達、一斉にさえずる。ストップ。ああ、うるさかった。調査用のデバイス、名前は”さえずり雀”名称はその姿そのまま。雀型の浮遊機動デバイス。迷宮の外でも活動できるように、エネルギーは充電式……そもそも魔法の力で動いているので燃料は、その魔法を発動させるための粒子。見た目は完全に雀……に似た小鳥。ある程度の自動化がなされている。個々の情報の伝達はさえずりを使用。数百の雀が、ネットワークを構築して、遠くまで情報を伝達する、それぞれの雀の情報伝達距離限界は数十mほどなので、いわゆる高度な伝言ゲーム。途中でノイズが入りそうだけど、チェックビットが入るのでその可能性は低い。音声を基準にしているのでその伝達速度の通常限界は音速。ただし、直線で障害物が無ければ、目からの光通信で限界速度は理論上光速に近くなる、もっとも個々のデバイスの処理限界やらがあるので、それほどの通信速度は得られない。
試験的に迷宮から数羽を出して、運用していみる。彼らが出て行けるような小さな通路が存在するのでそこから外へ。排気口とは違いそれ専用の通路。外の風景が情報出力端末へと映し出される。平面の鏡のような場所に絵が映る。モニタ。複数の視界を統合して、広く情報を表示。少し高度を取らせて、カメラをパン。問題ない。季節的には秋の様。遠く山の下の方で広葉樹が色づいている。この辺りは針葉樹が中心。なるほど、これが世界か。迷宮の外は本当に存在したのだな。幾度かさえずり雀を制御して、いろいろな軌道を取らせてみる。過去の巡回経路やら、その他もろもろの機能のテスト。問題はなさそう、コントロールは十分できている。個々の雀その活動限界は半日ほど、通常の運用ではその辺りで一度帰還させて、燃料を補給させる必要がある。とばしっぱなしで使い捨てる手もあるけれど、そこまで切羽詰まっては無い。補給は迷宮内であればどこでも可能。迷宮内での運用なら燃料切れによる、活動限界も無い。もっとも薄暗い石造りの建物に雀が大量に飛び回るというのは、違和感があるので迷宮内での使用は行われていないし、メンテナンスデバイスである所の緑色のゼリー君達、がいるのでその出番はまず無い。迷宮内であるなら多くの目としてのカメラがあるのでそもそも監視用としては必要ない。これはあくまで周辺の警戒調査用。そして、外敵の排除用。
卵型のワタシの頭、それと、横に広げた腕に会わせて十羽ほど、さえずり雀を止まらせてみる。接触通信もテスト。問題無し、少し多くの視覚情報が表示される、うまく統合されている。エントランスの様子が良く見える。ほぼ360度全周視界、足元を除く。気をつけないと酔いそう。可視領域は赤外線の方向へよっている?本体の性能と同じくらいか?音波による調査も可能とあるけれど、そちらは同じ外部探査ようのユニットとして存在する”怖がり蝙蝠”の方が優秀とカタログに書いてある。広い空間での、機動性は雀が上。ワタシは、くるりと、雀を体に乗せたままターン、ステップ、ジャンプ。……ちょっと酔った。この運用には、多少慣れが必要か?武装のも用意しなければならない。倉庫に眠っている、いくつかを脳裏にピックアップ。
さて、では調査に向かわせるとしようか、”さえずり雀”たちを数百羽ほど迷宮の周囲へと放つ。一群の小鳥たちが、黒い雲のように飛び出て、そして、幾何学的に等間隔で広がっていく。情報伝達用のさえずりが周囲に響いていく。
さえずり雀と、秋の山における収穫(主に情報的な)
時刻は24時間表記で13時ほど。メモ、正確な時刻は主星の軌道観測でのちに行うようにすること。季節は秋?気温と主星の角度、周囲の風景から読み取る。雀達は、迷宮を中心に周囲を螺旋状に移動。各方面の雀の情報を分割してディスプレイに表示、過去の映像情報と突合、ほぼ大きな地形的変化は無し。周囲の環境も格別悪化しているということもなく、深い森が広がる山のまま。環境破壊という認識は、この世界にはまだ無いので、その点を確認して安心。地滑りで迷宮が壊滅というのは、あまりに酷い最後だと思う。主星の光の成分はあちらの世界と変わらない。葉緑素も同じように存在するようで、森は針葉樹の緑色が中心。山を下った所にある、広葉樹は紅葉している、その植生にも異常は見られない。この迷宮の入り口が存在する高度では針葉樹が中心となる。森林限界はまだ上の方。そのような自然の法則はこちらにも通用するよう。ただ、成層圏を越えるほどの樹が存在するという知識もまた頭の中にあるので、あちらの常識をそのまま当てはめると足元をすくわれる可能性あり。注意のこと。ちなみにその非常識な樹は世界樹などと呼ばれているらしい、迷宮の一種。樹に見えるが鉱物なのかもしれない。自重で潰れそう。軌道エレベータ方式なのか?
山脈の植生とともに、そこに住む動物達を観察、小型の四つ足歩行獣や、大型の四つ足歩行獣を確認。小型の個体はイヌ科っぽい。大型なのは、偶蹄類?猪に似ている気がする。数はそれほど多くはないが、少なくもない。野生の動物。それにまぎれて、凶暴な雰囲気を撒き散らす個体もちらほら。だいたいはあちらの世界における分類が当てはまるが、変な進化?をとげたものも見える。姿形はイヌ科の四つ足歩行獣に近いが、普通そのような個体に角は無いはず。
その角付き犬は、魔法のような現象を任意に狩りに利用することができる個体、知識によるとそう。それらの生物個体の内何割かは、新しくできた迷宮の”匂い”に惹かれて、その方向へと移動しているよう。中には群れで移動している個体群も確認できる。
迷宮という生物の生態とその戦力の拡充方法
私は頭の中の知識を再確認する。迷宮という生き物は、その力によって周囲の野生動物、主に戦闘能力の有る生物を、相手取ることのできる個体を、その体内?に引き寄せることができる。迷宮は、基本的に、それぞれの個体が好みとする食べ物や環境を用意することによって、誘い込み、定住させようとする。
この世界の生物はすべからく、全ての生物がその身に宿す、魔法を発生させる器官が好物?であり、それが定期的に手に入る環境を欲する。これは本能に刷り込まれいるらしい。その摂食行為は自己の強化にストレートに通じるゆえに。対象の魔法という現象を引き起こすことのできる器官からの栄養が、多少効率が悪いものの、自信の生成器官の成長をうながすことができるということを、本能として知っているということ。
なので、迷宮はまずは擬似的なつまり、それ単独では魔法を発生しない、粒子を発生することのできる要素をもつ餌となるそれを生成して用意する。最初は僅かな、植物由来の果実のような形をしていたりするものや、鉱物ベースの生命体らしく何らかの結晶として迷宮内に発生させる。そして、それを目当てにして来た弱い個体を皮切りに、その最初の弱い個体を補食する個体、そしてその弱い個体を補食する個体を補食する個体と……、食物連鎖を発生させる環境をその迷宮を中心して、形作る。
その食物連鎖を制御して、それらの個体から、魔法を生じさせることのできる器官を効率よく取り込む生物が、この世界に自然に発生する迷宮というイキモノ。
周囲の山で活動する、生物は、そういう迷宮の性質に惹かれて、集まってきているよう。
また、迷宮は直接的には食物連鎖には関わらない個体をその中に呼び込むために、魔法で作り出したアイテムなどを生成し、欲に溺れた知性的な個体を呼び込むこともする。この知性的な個体は人と呼ばれて、魔法を生成する器官が上質である事を、迷宮という生物は認識しているよう。しかもこの個体は食物連鎖に組み込まれないので、うまく誘導すれが迷宮の環境を整えるにも使用できるという優れもの。ただ、大量の個体を狩っていって、ひどく迷宮内の環境バランスを崩す個体も存在する、その個体も目的が、迷宮内に生息する生物固有の素材、毛皮とか肉とか、角とかだったりする場合。しかし、それも織り込んで、人という個体群を食事とするべく、迷宮内の食物連鎖の状況をコントロールしていく迷宮という生物は、この世界での強者、上位に立つものと言える……。
改めて確認すると、やはり胡散臭い。ここでも、中心に来ているのは魔法を生成することのできる器官の存在……。本当にこの器官の存在が、世界に違和感を、歪さを感じさせる。しかしそれは、すでに、世界の調和を担っている、無ければならなくなっているという常識……本当か?この手の疑問は常に認識しなおして行かないと、足元をすくわれそう。メモ、注意の事。
ただし、今回の迷宮はトラップとして人工的に制御されて発生されたモノだから、多少歪んでいる可能性が高い。具体的には急速成長による、簡素化と、対象を取り込み迷宮外に脱出させないという方向性。
迷宮は遠くから確認できた。内部の構造変化が終了して、周囲の内部環境用の個体を収集している段階。おそらく、どこかに侵入用の入り口が発生しているはず。罠の性質状出口無しの一方通行であると予想できる。
さて、これからの展開はどうしようか?こんな状況で、放置はあり得ないか?
ワタシは頭と肩、組んだ腕の上に雀を乗せながら、猫耳少女、個体名がスノウといった彼女の側へと戻っていく。そろそろ彼女が再び目覚めるはず。目覚める予定。
……薬の量大丈夫だったかな?