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6話目 猫耳少女からの聞き取り調査、もしくは、少女と卵の出会いについて

患者の衣服をクリーニングして着替え


 もともと身に着けていた衣装の汚れを落として綺麗にする。洗濯をしたのは迷宮のメンテナンスデバイスである緑色のゼリー体。汚れを分解して吸収、まとめてペレット状に圧縮、廃棄まででおよそ数分。滅菌まですませて、プレス、ほころびも修復。なんだろう?この主婦力の高さ、便利すぎ。

 意識をいまだとりもどしていない猫耳の少女へ、衣服を装着させる。当然少女の汚れもクリーニング済み。排泄物なども綺麗に除去、しばらくはその手の生理現象もないはず。まあ、デバイスが感知してくれるので、もしもの時は、自動的に掃除をしてくれる。介護現場で重宝しそう。

 裸のまんまで、意識を戻すと身構えてしまうかもしれないから、の、対応、まあ、身体的特徴で、獣の比率が高いと素肌をさらす禁忌とか、羞恥心などは低いようなので、問題ないかもしれない。……が絵面的によろしくない。


少女が目覚める間に、迷宮設備で使えそうなものをピックアップする


 バイタルを確認すると、少女はまだ深い眠りの中のよう。今の間に迷宮施設の設備をリストアップ。周囲への探索に使えそうなものは何かないものか?基本迷宮の中だけで有効な設備が多いが、偵察をするデバイスは論理的に考えても存在したはずだし、記憶に焼き付けられた中にもそんなものがあったはず。その現在の状況を確認する。

 迷宮が死んだふりをした当時に凍結された、デバイスをいくつかピックアップ。衛星軌道上にあげてある機器はすくなくとも数十年のオーダーで信号が途絶えているよう。というか、宇宙の概念があるのか、結構科学的な知識も進んでいる、主に物理とか?……まあ、どれだけ高く上げられるかは、かなり力づくで解決できそうな問題ではあるし、通信などは、魔法の力でどうにでもなるのので、ほとんど直観で解決してそうな気もする。というか、この迷宮施設の技術レベルが異常なのか?

 リストから、使用できそうな物をピックアップ。凍結状態を解除し始める。迷宮外へ出すことが可能な物をいくつか。迷宮内の戦力は、このままで大丈夫。

 とりあえず、少女が目覚めたときに会うための準備もしなければ。

 しばらく各種準備を進める。

 そろそろ、目が覚めるだろうか?


ファーストコンタクトと暖かいミルク


 迷宮のメンテナンスデバイスであるところのゼリー状の物体、それで形作られたベッドの上で、猫耳の少女が身じろぎをしている。すこしうなったあとで、目がゆっくり開いていく。彼女の周囲はほのかに明かりがともっている。迷宮の壁や天井自体がほんのりと発光しているので。

 周囲の状況が分からないのか、すこしぼんやりと周りを見ている。目の焦点があっていなさそう。で、自分が、ゼリー状の何かに半ば包まれていることに気がつくと、ちょっと慌てて起きようとする。私は、そのタイミングで部屋に入る、扉は横にスライドするタイプで、丁度少女の視界からは外れている。

 音と空気の流れで誰かが入ってきたのを感知したのか少女は、こちらを振り向く、私は声をかける。

「お目覚めですか?体調はどうです?」

「?!」驚きの表情を浮かべる少女です。

「声はでますか?喉に違和感は?」トレイにポットとカップを乗せた私は、ゆっくりと少女に近づきます。

「ええと、声、うん大丈夫」

「どこか、痛い所とかはありますか?」

「ないです……ええと、どうなっているのでしょう?」

 少女は、結構丁寧な言葉遣い。言語の変化は予想以内、というかほぼ知識のまま。

「あなたは、この迷宮のエントランスで倒れていました。軽い脱水症状と、栄養不足などからくる疲労……疲れて気絶した?と言えばわかります?で、迷宮のメンテナンスデバイス……使用人みたいなものですね、に運ばせて、応急処置をしたところです」

「???」まだ状況が理解できないようです。

「とりあず、ホットミルクでも飲みますか?最低限水分や栄養は補給させましたが、暖かい飲み物は落ち着きますよ」温めたカップにこれまた温めたミルクをそそぎ、手渡します。少女が楽に座れるように、ゼリー状のベッドが椅子のように変形する。その動きに驚き身じろぎする少女。

 ゆっくりと、カップを手渡し、まじまじとそれを見つめる少女。

「ああ、大丈夫ですよ、ただの牛"(のようなもの)"の乳です……少し温めてあるだけです」()の中は心の中の声。

 少女は匂いを確認して、ゆっくりと飲み始めます。

「美味しいです、えと?」飲みながら、その合間にこちらをちらちら見て、尋ねる少女。

「それは良かった。ああ、私はそうですね、この迷宮の……」どういえば良いですかね?

「大きな卵の妖精さん?」

「あー、住人ではありますが。まあ、留守番役というか、そういうモノです」

 にかりと、大きな口を開けて、敵意のない表情をしてみます。頭の半分を占めるほどの三日月のような口、と大きめの歯を見て、少女は少し怯えます。失礼な……まあ、無理も無いか?

 食べられる?とか思ったとか。「食べませんよ?」一応断っておく。がかえって怯えている。うむむ、まあ、一般的な容姿ではないわけですがコレは。


猫耳少女の前に現れた、ワタシの描写を客観的にしてみるくだり


 身長は130㎝程、そのうち100㎝くらいは大きな卵形の容姿。楕円形のあちらの世界で言うと、鶏卵のような形。その上半分くらいが頭?にあたる。首は一応あるけれどもくびれが確認できない。つるりとした様子の皮膚で、色は白。頭には大きな一対の目と、三日月のようなこれまた大きな口がついている。鼻も少し大きめだが、低い。手足は細い。若干手は比率からみて、長め、これは丸みを帯びている胴体の前で、器用に作業をするため。それらの肢体を、いくらか余裕のあるチョッキとズボンが覆っている。

 一般的なこちらの人とは異なる容姿であることは、記憶に焼き付けられた知識で確認済み。でも愛嬌があると思ってはいる。

 薄暗い迷宮で、いきなり出会ったなら、武器を向けられる程度には怪しい容姿ではあることも、分かるけど。

 少女の反応はまあ、少し怯えているとかそんな感じ。敵意は無いという事をゆっくりとこれから示す予定。ホットミルクは気に入ったようで、ほとんど飲み終えている。よきかな。


卵と少女の会話、猫耳少女の身の上にいったい何が起こったのか?


「敵対はしませんよ?いまこの迷宮は長い眠りのさなかにあります。いつかいた主人が戻ってくるその時まで」ちょっと手を広げ迷宮を指ししめしながら言います。

「なので、正式な手順で迷宮を訪れた貴女に期待?しています。貴女はこの迷宮由来の存在ですか?……ええと、つまり、この迷宮の住人となるのでしょうか?」

「え?何?」びっくりして声が出ないようです。

「そうですね、ではまず、この迷宮の事をどこで知りましたか?今は貴女の首に紐で掛かっているパス……金属のようなものでできたうすいプレートは誰から貰いましたか?」質問をしてみます。

「ここのことは、母様と父様から聞きました……」ぽつりぽつりと話始めます。「その”ぱす”は母様から手渡されました」

「ここの事はなんと聞いてますか?」

「我が家のルーツ、根源となる場所……何か事が起こった時は、ここで落ち合うという家族の約束をしています……」

「なるほど、では貴女はどこから来ましたか?」

「山裾の村……ここからかなり下ったところにある所」

 迷宮のメンテナンスデバイスを変形させます。周囲の地形をトレース、この迷宮を含む山脈を表現。そして、猫耳少女へ、正確な現在点を示して、村の場所を確認させてみる。ぐにぐにと動かして、いつも見ている山肌のシルエットを探させる。

「このあたり」少女が指し示したそこは、直線距離的は近い場所にある村。それでも数キロは離れているか?ぐねぐねとした山道なので、慣れた者でも半日くらいはかかりそう。子供の脚では尚更。まあ、獣的な体力があればもう少し早いか?

「何があったのか、最初から説明してください」

「その日は、別にいつもと違ったことはなく普通の一日に見えました。ただ、数日前から村に滞在していた商人(行商人?)がいるのがちょっと変わっていました」

「それで?」ミルクのお代わりを進めるワタシ。ややぬるめのそれを飲む少女。

「夜、月が頂点に来るあたり、なにか変な気配?を感じて母様、父様、私は目を覚まします。何かの危険を感じた私たちはすぐに服を整えて、外の様子を見に行った父様を待ちました。その時、下から突き上げられるような地面の揺れを感じたかと思うと、周囲に壁が立ちふさがってきたのです」

「地面から壁が生えてきたのですか?」

「そうです、それを見た母様は、『発芽』?!とひと言叫ぶように言うと、私の体を抱え上げて、空へと窓枠を蹴って駆け上がりました。しかし、壁?はかなりの早さで家を覆うように伸び上がってきたので、母様の動きでも越えられそうにありません。その時、母様は得意な怪力の魔法を唱えて、私を、私だけを、壁の向こうへと放り投げたのです」

「なるほど、そのあとどうなりました?」

「私の家は、村の外れにあったので(門番的な役割?)私は村の外へと飛ばされていました。草木がクッションになって、怪我などはなかったですが、ショックで気を失っていたようです。目覚めたときには、月がかなり傾いていました」

「目が覚めてからどんな物を見ましたか?」

「村が、村がまるまる大きな岩?壁?のようなもので覆われていました。出入り口もなく、のっぺりとした壁が村をぐるりと囲んでいました。私はどうにか入れないかさんざん探してみましたが、亀裂ひとつありません、明るくなってからも探しましたが、かわりません」

「どのような範囲でしょう?」ワタシはもう一度こんどは村があったと思われる地形をゼリー状のデバイスを変形させた地図を使用して、少女に指し示させます。だいたい、半径500mほどの住宅地?が覆い隠されたようです。

「そして、一日その壁の前にいて、調べたあと……、この場所を思い出したので歩いてきました」

「その間の飲み食いは?」

「無意識にわき水とかぐらいを飲んだくらい?……それもあまり取った覚えがないです。ただ朦朧とした意識のなか、ここまで歩きました」

「なるほど、なので衰弱して到着と同時に倒れたと」相当ショックな出来事だったのでしょう。

「そして、ツタに覆われた山肌の扉にこの板を押し付けると、僅かに開いたので、転がり込み、広い場所で気を失いました……次にきがつくと、目の前に大きな卵の化け物が……緑色のぐねぐね動く物体に体を支えられて……あたたかいミルク、たまごが……ミルク、ミルク……」むさぼるように、ぬるいミルクを飲む猫耳少女。

「ああっと、そうですね、後は名前を聞かせて下さい」

「スノウ……」

「はいスノウさん、ワタシのことは……エッグマンとでもおよび下さい。はい、スノウさんはこれから、ちょっと眠たくなります……何も心配することはありません、一眠りして起きたとき、目の前にいる、卵の人は心強い味方で、信頼できるモノです……そうです、全て任して大丈夫です……はい、では三つ数えると、目蓋が降りて、眠りにつきます……ひとーつ、ふたーつ、みーつ……お休みなさいスノウさん」くたんと、四肢を弛緩させてとろんとした目を閉じる猫耳少女のスノウさん。


 薬の効果は抜群ですね。研究所の凍結保管庫に入れてあったものですから、まあ、保存はばっちりでしょうし。少々用量が多かったですかね?対象の体格を考慮して、少なめに盛ったのですが。……心を落ち着かせて、ちょっと素直になるようなお薬です、常習性は低いはずですから、多分大丈夫でしょう。これ少し甘いので、ミルクの隠し味にはピッタリ。

 暗示も掛かったみたい。これで次に目覚めたときもかなりスムーズに話が進む……予定。

 おさない少女(容姿はかわいい?美少女?)を薬を盛って、いいいように操る。

 あちらの知識と照らし合わせると、犯罪であることは間違いない。が、ことさら禁忌とかは感じないよう。罪悪感も軽微。なるほど、このあたりもこちらの世界の、焼き付けられた知識やら行動様式やらが影響しているのだろう。

 一応、この世界でもこの手のことは、醜聞というか、世間体が悪いということを忘れないようにしておこう。


 さて、本格的に迷宮外での調査ができるデバイスを選定しなければ、候補はあれか、それか?モニタを見つめながら、私は次の手を打ち始める。

 


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