30話目 惑星の完全掌握前に、敵対勢力が現れ、それの攻略を行ったのち、世界の秘密を知り再び乾いた笑みを浮かべる、卵さまが語られる、くだり
卵様、着々と世界各地の迷宮をメンテナンスしていったところ、対立する存在と出会い、争い始め、そして、それを収めること、が語られるくだり。
世界を手に入れたようなもの。であるのだけども実際のところやっているのは、迷宮の維持管理。そのおおよそ危機的な状況を次々へと改善していくのだけども忙しい。疲れとかは強制的に取るように魔法をくみ上げていき、手の足りないところは、物理的に増やして対応。ワタシとしての人格を複写して、対応できる技能を持たせた擬似的な個体を作成、作業に当たらせていく。どうしよう?なんだか子供ができたようで嬉しい?悲しい?奇妙な気分。惑星上の主たる迷宮へのアクセスはほぼ復旧。遠い過去のネットワーク、その残滓からの再生、筋道はうっすらと見えていたとはいえ、普通に大事業ではないか?これ。かかる費用は、各迷宮から徴収済。物理的に接続が断たれていた迷宮間の連絡も基本有線?地脈のようなものを利用した接続?で復旧。地脈ってなに?地下の空間にしみ出すようにして、じわじわと接続していったような感覚。改めて、魔法という技術のデタラメさを痛感。あちらの世界ではケーブルをいちいち引っ張っていかなければならなかったろうに。
赤道上近くに天空へと伸びる迷宮を確認、周囲の迷宮の書庫資料にはあった、宇宙まで伸びる細長い迷宮、あちらの世界で言うところの軌道エレベーターのような存在を確認。現在は現地の迷宮管理者、その血筋が維持管理している。意外なことにここは比較的しっかりと管理されている、たしかにこの大きく長い迷宮が崩壊すると被害が甚大なものになりそうだから、体制を強固なものにしていたのだろうと予想。管理者の寿命が長い生物へと変更されている、およそ千年以上の連続的な思考ができる個体が集団となっているよう。ただしその集団交代で休眠中。長い寿命とそれにともなう大量な記憶、その処理のせいか?それとも世代が若い生物であるから、長命種としての精神的ストレスがまだ大きいからその緩和のためか?
挨拶をしておこう、一応先輩?にあたるし。そうして、穏便に接触しようとしたらば、攻撃的な対応をされました。なぜだ?どうも惑星規模の迷宮ネットワークの再生がお気に召さないようで、接続を遮断しようとしているよう。軌道エレベーターの先にある宇宙空間に浮かぶ施設、より、物理的な戦力が地表におりてくる。無数に。蜘蛛に似たその機械的なフォルムの機体、大きさが一般的な大人の数倍ほどのそれが、地上迷宮その、連絡用の要となっている箇所に襲いかかってくる。一応襲撃理由を問い合わせつつ、迎撃。周囲の環境に配慮してか、あまり致命的かつ大規模な破壊魔法やら、装備やらは蜘蛛達は仕様していない。魔法技術に対する制限はどうやら無いか、大分薄いようではあるものの、構造的に蜘蛛自身は、魔法そのものを放つようにはできていないよう。どうやら、機体の性能、その巨体を備えられた各種兵装、物理兵器、質量兵器が主体のそれ、が中心となっているよう。
対してこちらは、迷宮生息生物を利用した防衛システムで、主体が魔法によるもの。それと平行して各迷宮内で対応する兵器やら兵装やら、を作成していく。なんだか、神の裁きの時が来たとか、世界の終わりだとか、騒動に巻き込まれた迷宮と共生状態にある住人が騒いでいるようだけど、そちらはそちらで、被害が少ないように誘導しつつ、比較的優秀な個体とかに対して、思考やらを操って、戦力にカウント。物理的なドンパチに対して、拮抗状態を作り出す。
スノウさんや、辺境伯爵騒動で手に入れた戦力も惜しまず投入。直接手足にした少年騎士やら令嬢やらには制限解除をした武装を身にまとって頂き、これまた制限を取っ払った魔法技術を運用していただく。雇用していた傭兵さんたちは、社会的に情報操作へと走ってもらう。このあたり、社会と共感できるセンスが素晴らしく役に立ってくれる。自衛のための装備は惜しまなく支給しているので、守りに徹すれば、一国の戦力と拮抗できるほど。過剰か?まあ、資源はあるし。
スノウさん出身の村や、ワタシの生まれた迷宮はバックアップ用に静観、というか、基本独立して運用する予定であったので、今回も死んだふり&最低限の自衛のみ。
当然それらは囮で本命は、敵対意志のその理由を確認するのと、制御している相手側の本拠地を制圧するように動く。どうやら衛星軌道上の迷宮に総指揮所があるよう。こちらの懐深くまで、あいての手を伸ばさせて、地上の迷宮管理権限の奪取に意識を向けさせつつ、するっと侵入。相手の迷宮機能その一部をこっそり奪取して、こちらの戦力を生成する。汎用型卵様、低重力軌道用ユニット。無反動の”槍”を片手に持たせた個体を、順次作成していき、充分な数を生み出したのち、制圧。
地上での戦闘もその時点で終了。蜘蛛の機体は地上迷宮に取り込まれ、地上迷宮戦力も待機状態に移行。派手に動いているように見えていたものの、被害はかなり少ない。まあ、各迷宮が本気で動けば、死にいたるものですら、あっさりと蘇生するというほどの能力があるので、ある意味当然。
順次起動していた、長命種の管理者団体を物理的に拘束して、その統括意識を掌握。迷宮の脳ともいえる場所に到着して、意思確認。敵対する理由を調べる。どうも半ば自動的に大規模な迷宮ネットワークを阻害するようになっていたよう?反射的な行動?起動迷宮の行動原理として、接続の遮断を第一行動基準として、規定されていたみたい。規定したのは、古き時代の管理者団体。本当に古い、7百年前の災厄よりさらに千年ほど過去、長命種の一世代前ほどの時代。
惑星全土に張りめぐらされる迷宮ネットワークを阻害しなければならない理由とはなんであったのか?という問いには明確に答えが帰ってくる。まるで自分達だけがこの狂気的な事実を押し付けられていたのが、不満であったかのように、不安であったかのように、語られる。
世界の真実が長命種より語られるのであるが、それが客観的にみて狂的な状況であると、少し頭を抱える卵様が語られるくだり。
世界は狙われている!……食物連鎖的な意味で。全ての事象に干渉できる粒子を生み出すことのできる生物を、飼育繁殖させて、補食する、これが、いわゆる迷宮と呼ばれる生物の営み。人もまた補食されるべき対象であり、昨今、ここ数千年ほど共生状態であった、こちらの世界。そもそも、迷宮の根幹をなす全ての事象に干渉される粒子、それを生み出すシステムはどこから来たのか?というと宇宙の深淵から、やって来たということ、らしい。つまるところ、他の恒星系からこの恒星へと、飛来したとのこと。この粒子を中心とした生態系繁殖の過程のうち、恒星間を移動すし増殖、適度な惑星に漂着してそこを苗床にまた繁殖し、周囲の恒星系へと散っていくというサイクル、つまり恒星間の移動に使用もしくは利用?されている存在が、宇宙怪獣。
なんだろう、この違和感あるネーミング。宇宙怪獣って。姿はあちらの世界でいうところのクジラ?に近いらしい。そのスケールはむちゃくちゃであるが、惑星を一呑みしてものどに引っかからないと言えば想像できるだろいうか?これが、惑星上に発生している粒子を生み出す個体群をこそげるようにして補食して、宇宙を巡り、その排泄物に混ざって、新しい種が他の恒星系へと運ばれて、また新たに迷宮として芽吹くとのこと。その宇宙怪獣を呼び寄せるシグナルとなるのが、惑星規模でのネットワークの構築に伴う、粒子の一定量の作成、放出、なのだそうで。これに気がついてしまった、過去の賢者集団が、世界の延命を計るために、迷宮間ネットワークを阻害する仕組みを作り上げたとのこと。その末裔というか、現状管理している団体が、衛星軌道上迷宮を根拠地にしている長命種という説明を淡々と受ける。
迷宮は自然に、惑星上を覆うようなネットワークを作成するわけか?いや、それをなすために、社会的な生物である”ひと”を生み出していくのか?なんとも人の存在意義を考えさせられる話。われわれは宇宙怪獣に食べられるために、せっせと星を成熟させるために、働く、システムに過ぎないのか?と真実を知ってしまった個体が絶望しそうな展開であるな?
魔法の粒子を生み出すことができるようになったとき、それと同時に世界の環境を大きく変化させるような、迷宮とその周囲のシステムが破綻することの無いように、能力に制限がかかるように調整もされていると判明した。古代の文明、長命種が生まれた文明において、その能力制限を解除するための道具もまた開発されもしたものの、それは、事態の根本的な解決にはならず、結局、対処療法的に、星を成熟させないように、迷宮のネットワーク化を制限する方向で延命を計っていたというお話。しかしそれも、人の増加に伴う社会成長の弊害で、迷宮を単独運用で社会を維持していくことに限界が来ることもまた、判明していて、実際700年前の災厄は、限定的なネットワーク運用に移行しようとした社会のひずみが生み出した悲劇だったと、語られる。語っているのは長命種の長達、容姿は若いのだけども、精神が死に瀕している。こう、絶望したまま数百年を過ごすとこうなるのか、と客観的に観測。ちなみに、ワタシの迷宮を本拠地にしていた”悪の秘密結社”団体とは、結構友好的に付き合っていたらしい。むしろ、積極的に、人としての種の保存を計るための、”脱出”には手を貸した立場だったという。
ワタシの存在について、尋ねると、秘密結社の悪あがき?バックアップ?置き土産的な、ものではないか?と。迷宮制御が破綻する前にメンテナンスできる存在を再生すれば、文明の延命に役にたつかもてき思考ではないだろうか?もしくは、究極生物の作成を試みたとか、趣味的に。おそらく、秘密結社のスタイルから考えると、最後の趣味で、という点が正しいような気がする。直感的に。
おおよそのカラクリが判明したのち、卵さまがどのように行動したのか語られるくだり。
さて、どうしよう?手としては、ネットワーク化をやめて、未成熟状態に戻していくのが妥当ではあるのだけれども、平行して観測していた結果を見るに遅いような気がする。宇宙怪獣?らしき存在の接近を感知してしまったのだな。長期長大に渡る宇宙という広大な空間を泳ぐ宇宙怪獣、かれらはほとんど本能的に未来を予知しつつ、移動する。どうやっているのかは想像くらいしかできないけれど、光速を越えてて宇宙の海を泳ぎ回る彼らにとって、未来を本能的に予知するくらいできなければ、危なくて回遊もできないだろうとは思う。
で、その個体がすでにこちらに向いているということは、逆説的に考えると、彼がこの恒星系に到着するころには星が熟しているという未来を予知したということだろうなと、実際問題として、惑星全土の迷宮で死んだふりとかすれば、ネットワーク化をとめて未成熟にすることは可能ではあるのだけど、文明的に死にます。共生と言えば耳に優しいですが、迷宮に依存している社会システムが構築されているので。かといってまた中途半端に制限された迷宮社会を構築するのも災厄の二の舞になりそうな危うさを感じるわけで。星が喰われる瞬間まで、幸せに人を飼うという選択肢もあり?と殺される家畜に対する感情が浮かんでくるわけだけど。恐らく、一瞬で全てが終わるから、死に方としては苦しみが少ないだろうし、魔法の粒子を生み出すシステムとしての生命としては、次代に引き継がれる可能性が高いので自然に近いとも言える。文明としてはお亡くなりになるわけであるが。迷宮を根絶しても、文明的には死亡が確定するわけだし、まあ、一つの終わりかたとしては美しいほうではあるのか?
……そもそも、ワタシがどうしたいか?という問題なのかこれは?状況的に何か手段を講じられるのはワタシだけ?なのか?相談する相手もいないしなぁ。長命種も半ば状況に手詰まりを感じて諦めているようだし。逃げるのは簡単なんだ。ワタシ個人なら手はいくらでもあるし、周囲の、ある程度種の保存を考えるほどの手勢をまとめて、”脱出”するのですら、全く問題は無いし。過去、悪の秘密結社が”脱出”を行った、その時点と比べても、わたし、の影響力は匹敵するか、もしくは大きい。
しかしちょっと不満じゃないか?おそらく文明種の保存に関しては、悪の秘密結社による”脱出”によってすでになされている、つまり、もう保険はかけられている状態。ならば、ここは大胆かつ不敵に行動するベキではないだろうか?なによりそれは痛快で面白い事じゃないか?こういう思考を持つことが、やはり、わたし、も悪の秘密結社のスタイルを引き継いでいるのだな、と、笑う。
行動を開始しよう。
さあ、クジラ狩りだ。




