29話目 続々と集まる情報に比例して、どんどんと仕事を押し進めていく卵さまと、世界の歴史その概要が少し語られるくだり
各地へ放った手足つきのセンサからの情報を整理、分類、分析、考察する卵さまが語られるくだり
結論から言うと、かなり状況が悪い。各地の迷宮と共生している都市で大なり小なり、ちがうな、極大なり、大なりか、問題が発生している。原因は不完全な迷宮管理の方法によるもの。過去にさかのぼって調査を進めてみると、700年ほど前に一度管理方法やら、記述情報の断絶があったらしい。大規模な、惑星全土を巻き込むほどの騒乱、同時多発的な自然?災害を発端とする社会の混乱とそれに端を発する紛争やらで文明レベルが数ランク、ダウンするほどの状態になった?よう。で、当然のようにこの紛争に顔を出しているのが、ワタシが硝子の中なかからでてきた迷宮を本拠地にしていた、”悪の”秘密結社。どうやら、文明世界を二分して争っていた勢力の一方であったらしい。迷宮に対しての管理方法とか発展方法とかを根底にした、勢力争い、という形だったようだけれども、当時の記録が散逸しているので、詳しいことは継続調査中。
基本、体制側と反体制側の争いとか、管理者と自由人の対立とか、少ない資料から、そのように読み取る。おおむね、秘密結社の方が少数で精鋭であったらしい。直接この二大勢力の争いが、文明を滅ぼしたわけではないものの、有能な人材がこぞって、秘密結社に加わったのち、どこかへ消えたので、文明の維持管理に重大な支障をきたしたような、記述が見られる、ように感じられる。正確な文献なんぞどこにもないので、手足によってアクセス可能であった管理迷宮の情報蓄積書庫をざるですくうように洗って調べてみる。秘密結社連中が、どこに消えたのかは謎とされるけれど、これ、”うち”の迷宮を調べてみたら判明しそう。要メモメモ、というか、凍結されている書庫を解放して調査してみる必要がありそう。基本触るべからずという意識も浮かんでくるが、あちらの世界の意識からは、調査が必要なのは常識だろう?と、囁いているので、禁忌事項としてこちらの世界の私に刻まれているかもしれない、という点も考慮において、慎重に調査を進めていこう。
各所管理迷宮の現状、迷宮の生物としての本能が強過ぎて、制御が効きづらくなっている。敵性生物の氾濫やら、無秩序な拡大、非戦闘区域の揺らぎ。共生して行く上ではかなり危なっかしいし、一息に周囲を飲み込もうと、急拡大する予兆が見られる迷宮もちらほら。ただ、これら共生関係にあって、管理者が近場にいるところはまだ良い。管理者がいなくて野良迷宮となっている、しかももともと共生施設として運営されていた箇所は、なまじ初期設備が優秀なもので、手のつけられない難攻不落な極地みたいな状況になっている。生半可な対応では、資源としてはつかえないか?まあ、規格外の戦力を投入できれば、環境がハイスペックに高止まりしているので、貴重な資源をごっそり刈り取ることもできるとも言えるか?まあ、現状この世界の通常戦力では話にもならないけれども。
逆に言えば、ワタシにとっては美味しい狩り場ではあるのか?まあ、考慮に入れておく、それほど資源に切羽詰まっていないし……あーでも、別の理由でいくつか、攻略はする必要があるかも?まっとうな手段だと手間がかかると判断……直接やることにしよう。
ここら辺り、辺境都市の迷宮を含むそれを統括をしている国?の首都迷宮も、大概に惨い。一応体裁は整えられているものの、制御ができない場所が多すぎる。都市機能保持、その前提として、生活空間内の迷宮制御は辛うじて行えているようだけれども、例のごとく地下やら、生活空間外の迷宮状態は野方図、びば野生の王国といった感じ。よくこんなところに、100万人規模の人間が住み着いているな……。ある意味たくましい生き物。
さて、調査して判明したけれど、やはり手足が足りないか?ワタシが順番に出向いていっていくと、100年はかからないけれど、数年は作業に専念しなければならないよう。その間状況が許してくれれば問題ないのだけれども。どうかな?ここは、各方面に同時侵攻をしかけてみるか?
一点、あの情報が確定できれば、かなり楽になるのだけれども、どうかな。まずそこを調べてみようか?
意外というほどでもないものの、引きこもっていた卵様のフットワークが予想より軽くて、あちらこちらで目撃されていく事が語られる、くだり。
はい、ここはここら一帯の迷宮管理統括者が住む都です。ようは国の首都。ワタシはこちらに卵さまとして到着しています。音速で移動できる機体を用意すると、離発着の問題を解決すれば移動にかかる時間はかなり短縮できるわけです。まあ、強襲型の卵さまだと、単独でもこのくらいは動けますが。今回は、出てきた迷宮から、”空飛ぶ棺桶”を打ち上げてもらって移動。で、適当な場所から、首都迷宮都市の迷宮管理システムに割り込みをかけてみる。事前の調査通りに、さくっと、秘密結社時代の書庫その手前のほうにあった棚?から発掘した手順でスムーズにアクセス。問題なく管理者の一人として登録……が既にされているよう。なるほど、当時の迷宮に準拠した性能を、ワタシことホムンクルっぽい何かに刻み込んで作成してみたと。
これによって、手順がかなり簡略化される。作業が効率よく進みそう。とりあえずいま制限付きで管理している人々?帝王とか、国王とか、上位?管理者という肩書きの人々の権限は、こちらの意図が漏れないようにそのままにして、さくさくと情報を吸い取る。うんこの迷宮はイイ子だね。成長具合は、4齢くらいかな?ざっくりここ1000年くらいの情報を閲覧、分析。加えて、とある機能の確認をする。限定的だけども生きているねこれ。これでかなり作業が楽になるか?あーいくつか問題点があるなぁと。ここら辺はまあ、暴力装置の出番かな?
では、こちらへ。ここは、最近、滅ぼされた国の首都。あの、辺境伯ご令嬢のお家騒動を演出していた、少年騎士と、ご令嬢の祖国。偶然だか、必然だか、おそらくは運命?といって笑い出すような状況ではあるが、ここの国が管理していた、迷宮、いまは封印されている場所であるが、そこに、少年騎士とその側近たち一行がいる。感覚をつなげて、情報の共有中。今回のお仕事はこの迷宮の再起動と再調教。そもそも国が滅びるきっかけとなったのが、亡国迷宮の暴走で、それの救援を名目として、辺境伯の上役管理者の国が、介入、なんやかんやで、亡国の管理者が消滅して、併合。しかし、管理権の移譲ができず、止む終えず、封印されたという、背景をもつ。
色々問題が多いが、特に重要なのは、お粗末な封印というもの。まあ、出入り口を物理的に封じたとうものでしかないので、迷宮内は混沌としたまま放置。外界からの流入がないので、内部の環境がいい感じで高品質化している。間引きが必要なタイミングで封印したせいで、バランスが崩れて、超強い個体が誕生、その個体が主となり分裂繁殖して、強個体が迷宮内に溢れている。自身の維持コストは迷宮が半ば本能によって担っているので、歪な管理条件に従って担ってしまっているので、今までは問題なかったものの、そろそろ迷宮そのものが限界、分け与える栄養分、蓄えも尽きかける。そうなると、当然、強個体を引き止める手段もつきてきて、結果、その個体群が迷宮を喰らいつくして、溢れ出て、周囲に甚大な被害を与えることとなる。
もっとも、普通に管理されていない、自然生物としての迷宮であったなら、適度に外的要因を取り入れたり、それこそ自然の流れにまかせて、食物連鎖による制御で、これほどまでに歪にはならないのであるが、そこはそれ、中途半端に管理使用とした弊害が出ている。この現代はもとより、遠い過去においても、迷宮を的確に管理するのは相当に難しく、いわんや、そのノウハウが大幅に失われてい現状において、旨くそれができるはずもないと言ったところ。
ともかくも、いま辺境伯ご令嬢の少年騎士、その正体は亡国の失われたはずの管理者の権限を受け継ぐことのできる者、と、その御一行は、そういう危機溢れる迷宮の封印された入り口の前へと立っているのであった。
彼ら4人は、これから赴くのだ、封印迷宮の解放と、管理権限の復帰の為に、その迷宮の奥深く、核と呼ばれる、迷宮統括部位へ、特別な”鍵”を差し込みに。
……などど、戯曲的に盛り上げてみたものの、昔話の冒険物語のように血湧き肉踊るような展開なんてないのです。
感覚やら、肉体の制御やら、魔術の選択やら、ワタシの完全制御下において、
肉体の反応やら、維持能力やら、そもそも性質そのものを軽くとは言えチューンしてあり、
恐れや、躊躇をしらない、戦闘に特化した精神構造、にシフトしたワタシの、敵ではないわけ。
加えて、ワタシの精神改造の恩恵?で、制限されていた魔法が解放されている彼らであれば、ちょっとウロコの固くて、硬い爪やら牙をもち、制限されたなかでは結構高レベルの魔法を使う、千匹程度トカゲなんて、反撃すら許さずに駆逐される対象でしかないのです。
さっくりと4分の1日くらいで、間引きが終了。
巨大なトカゲの主はすでに、ばらばらになり、立派な素材となっている。
少年騎士たちは、核に到着し、”鍵”である受け継がれてきた剣によって、管理区画を再起動、そののち、管理者権限をワタシに上書きする。
”ハブ”の解放を確認。ネットワークが復旧いたしました、という迷宮独特の感覚メッセージが脳裏によぎる。
よし、これからが本番。うねうねと細くて長くて白い指を動かして、ストレッチ。 さて始めましょうか。
迷宮間の連絡網を復活させて、一息に諸問題を解決していき、驚愕の事実に気がついて、乾いた笑いを浮かべる、卵さまが語られるくだり。
とどのつまり、過去惑星上の管理迷宮は相互に連絡を取り合い、不具合を修正していっていたわけ。あー、あちらの世界でいうと、管理端末の情報網のようなイメージ?情報を相互にやりとりして、各端末のシステム、動かす仕掛け?の不具合を解消させていったり、資源の融通を行ったりしていたわけ。それに留まらず、相互の余剰魔法粒子のやり取りから、迷宮情報網を利用した大規模魔術やら魔法やらの構築、解放、実行も行われていた形跡がある。
過去に行われようとしていた魔法の中には、個人を個人として特定し、その個人の履歴を完全に管理するとかのシステムも含まれている。まあ、体制側としては個人を管理するとこによって、効率的に社会を運営することは良いことだという立場であろうし、それは正しい。それに反発する自由を愛する人々が出てくるのもまた自然であろうかと予想。ここで、体制側と反体制側、の反目とか騒乱とかの火種が発生したわけなのであるが、秘密結社は実は体制側と反体制側どちらでもなかったという驚愕の事実?が明らかに。まあ、紆余曲折あって、どうにか争いを調停しようとする第三者機関というのがそもそもの始まりであったのだけれども、創始者とその周囲の趣味で”ああ”なったというオチがついているらしい。なるほど、書庫を封印しろという意識が、迷宮を管理するホムンクルスっぽい何かに刻まれるわけ、これは立派な黒歴史。
まあ、個人の履歴を管理するだけでなく、思考とか、行動とかを、無意識化で制御できかねないという仕様がこの思想対立をまたさらに深めていったわけで。また、同時に発生した、全世界規模の災害、これの原因も実は、迷宮資源の管理ミスやら、構造的欠陥が生み出した、いわゆる人災であったらしいのだけれども、とにかくそれもあって、泥沼の騒乱状態に。こう、文明が退化する程のなかなか終末的な大騒動であったよう。
まあ、それらの様子に呆れたというか、それらから避難する為に秘密結社はさっくりと”逃亡”したようで、なるほど、”悪人”というか、悪の秘密結社らしい、と苦笑。
で、ここで大事なのは、広範囲、ほとんど惑星全土を覆うほどの管理迷宮の情報網がかつて存在し、それほど簡単ではないものの、復帰させるめどがあったという事実。
情報網には、管理者命令を遠隔地の迷宮に送ることも可能なため、一カ所にいながら、各管理迷宮の現在状況を調べて、的確に対応できるようになるというわけ。
よし、引き蘢ろう。
もちろん、物理的に切断されたままの迷宮も少なからずあるわけではあるものの、支配下に置いた迷宮を起点にして、ワタシを、運用すれば、あまり時間をかけずに最接続、再起動は可能であると、ふむ。よし、順次片付けていくか……。
……あれ、ワタシ、世界を手に入れてませんか?




