24話目 卵の魔法使いが偶然耳にした辺境の現状、その裏側がどのようなものだったのか(不幸な吟遊詩人という第三者的立場側)が語られるくだり
周辺の村々から、このたびの辺境伯跡継ぎ騒動の一般的な認識やら、評価やらを聞き取るくだり。
さて、だいたい当事者やらそれに近いところの思惑は、把握できたと、あとは、介入の手段、準備を構築しながら、さらなる情報収集に努めたい。雀の部隊は、この調査を始めた時点から、さらに呼び寄せて、増強した。追加の魔法の粒子供給源も用意。辺境の私が出発した迷宮がまだ近いのでできうること。後で”雀”を返しておくか、この数を常時展開できるようにシステムを構築し直すかは、のちの状況しだい。計画通りにこの件で介入できたらば、最低限の数で足りるようになるはず。
ともあれ、辺境伯ご令嬢一行の宿泊している大きめの村で、一般人よりの事情聴取。まずは噂話から、古今東西、妙齢のご婦人の会話は、情報源の宝庫であるという格言もあることであるから、井戸端会議とか、覗いてみよう。精度は情報量で補いつつ、クロスチェックで、上げておく方向で。
同時に周辺の村やら、町やらにもとばしておく、村から村へと移動している一団でも捕捉できるのであれば、幸運と考える。
噂話は結構すぐに集まる。辺境での跡継ぎ問題は結構ホットな話題らしい。今代の辺境伯、人気はまずまずであったらしい。安定した治安、えこひいきしない税率、公明正大よりの治世。古くからあるおのおのの村に存在する因習とか、慣習とかにも肝要。悪い趣味も少なく、あまり夜遊びもせず、街道の整備やら、治水やら、害獣対策や迷宮の管理、これは迷宮の”怪物”対策も含む、もそこそこのレベル、10段階評価で8はとれる実力者という感じ。その分亡国のお姫様とのロマンスというお話が際立っている。そのラブロマンスの評価は十人十色、ロマンチックで幻想的で、うっとりとした乙女の眼差しを向けるもの、辺境の状況を鑑みるに短慮であったのでは?という意見、現状の対立を見て、やはり、これは問題であったのだろうな?という意見。
しかし意外に村人の知識が高い。語彙とかも結構豊富なのか?社会というモノをだいたい把握しているような感じ。噂話か、ゴシップ程度ではあるが、意見を述べる、議論するというレベルに達している。総じて、余裕が感じられる。こう、重税に喘いで、生活が困窮しているという感じはしない。基本魔法という技術が広く普及されているので、作業の効率化が進んでいて、余暇がとれているという感じ。0レベル帯の生活に役立つちょっとした魔法は、ほぼ全ての住人が使用できるよう。朝の日課が、魔法を準備するための瞑想から始まるといった感じ。ちなみに、その触媒とか、瞑想に使う呪文書とかは、個々で持っているよう。先祖代々受け継いできている、財産というか、知恵?らしい。また、公共の施設、それこそ井戸のそばには、それらの魔法の文様が刻み込まれた碑?のようなものや、プレートが設置されていて、そこの前で、軽く瞑想している村人も見える。対象の温度を上げて、種火を作ったり、汚れを分解して、洗濯をしたり、ちょっとした量の水を作り出したり、重い荷物の質量を軽減させて、運んだり、日常のありとあらゆるシーンで、簡便な魔法が使用されているよう。うん、これは便利だろうな。小さな子供も使用している、さすがにたどたどしいけど、物心ついたあたりから、親から習うのだろうなと。魔法はその魔法を使う領域を鍛えればさらに強いものを多く使えるようになるから、年若いころから訓練を兼ねて行っているのだろうと思う。また、魔法の記述自体は身分に関係なく公開されているのだろうと予測。同時に危険な使用方法ができる魔法は、やはり制限されているのだろうなと、推測。見える範囲では、0レベルの魔法しか確認できないし。
私の迷宮のそばにあった辺境の村もそう言えば、0レベル魔法に関しては最初からいくらか普及していたなと、そのまますぐに、迷宮独自の魔法をまぜて普及させたので、印象が薄いけども。ここら辺と違って、普及率が低いのは、外界から閉ざされていたせいか、独自の文化が形成されていたせいか?魔法の技術を誰かが隠匿していたのかも知れない。まあ、あの村は、自力が強いので魔法にあまり頼らなくてもよかったというオチもありそう。
ともあれ、魔法という技術によって、生活が便利になっているので、余暇か産まれて、学習をする時間が取れて、その学習によって、作業の効率化が計られて、さらに余暇が産まれて、その開いた時間で、各々の趣味嗜好の方向に消費が走って、色々と社会に対するアプローチを思考する余地がでてきているので、噂話の精度が高い様。
政治形態は立憲君主制かと推測していたけれども、限定的な議会政治とか、下手をすると民主主義とかの思想もうまれていたりしているのだろうか?少なくとも直接民主主義……みんなの事はみんなで決める、を制度化している地方はありそう。要調査とメモ。
さて、思考が横道にそれたものの、噂話の収集と情報の分析。基本今回の跡継ぎ問題は、情報がオープンになっている。さすがに武力衝突とか、内戦の危機とかの現状は、あまりはっきりとは認識されてなく、どことなくきな臭いなという印象が辺境の村々に漂っている。辺境伯のお嬢さんと、坊ちゃんの仲が悪く、どちらが跡継ぎになるかもめていて、貴族らしい争いが、辺境伯のお膝元である、都市で行われているという認識。今回のお嬢様の辺境視察は、時期当主としての実力を示す+下々に対する優秀な、とか、実益がありますよ、的なアピールの場と捉えられている。その現状を理解したうえで、陳情とか、生活改善とか、融資とか利益を引き出せるように、格村の大人達が暗躍しているというか、活動しているという現状。当然、辺境伯のご子息の息がかかっている私兵がお嬢様がたを襲おうとしているとは、微塵も思っていない。というか、把握はしていない。もしかするとそいうことをするかも?という予想はしているかもしれないが。
さて、噂話の収集も平行して行っていきますが、もう少し事情通からの第三者てき意見を聞きたいものですね。ちょっとつまんでみましょうか?
不幸な(見方によっては幸せな結果かもしれない)吟遊詩人が、卵の怪物と出合い、洗いざらい裏事情を吐露させられるくだり。
雀さんの噂話収集をしていると、うっすらと浮かび上がる第三者的情報源。それは、村から村へと旅をする吟遊詩人の存在。吟遊詩人というのは、楽器と喉を商売道具に、歌舞音曲その他もろもろのエンターテイメントを市民やらに供給する職業。集団で行動するなら、雑技団とか、サーカスとかの部類になるという認識。また一方、うろうろできる界隈のみという限定ではあるものの津々浦々の町やら村やらを回る営業形態上、事情通となる職種。逆に、歌や踊りは今ひとつでも、情報伝達に特化した吟遊詩人という、経営方針の方もおられるくらい、つまりは、現状なかなか上位に食い込む情報収集対象ということ。
職業上、ゴシップの収集やら、歌の披露やら、にぎやかな場所に出没する個体なわけなので、今回、辺境伯ご令嬢の御一行に引っ付くようにして、村に滞在しているよう。丁度いいので、訪問して、いろいろ聞いてみよう。ちょっと気になる点もあるので、卵の魔法使い直々に出向いてみようかなと。
卵の魔法使い型のデバイスはちょっと侵入には向かないので、村人を催眠暗示にかけて、ちょっと村はずれの暗闇へと彼を誘導する。年若い女性の個体をそれっぽく振る舞うようにさせて、こう、一夏のアバンチュールに誘うとか、行きずりの恋とかの、雰囲気を出すように。吟遊詩人の商売として春を売るという商品もあるので、あまり状況に違和感が無いよう。人気のない村はずれの一軒家、農作業用の倉庫であろうか?そこへと吟遊詩人を誘い込む。深夜、人目につかないように移動する吟遊詩人。するりと倉庫へと入り込む、忍び足はなかなか見事なもの。村娘の名前を呼びながら、置くへと進むとそこには、卵がいるわけだ。暗闇から浮かび上がる白い巨大な卵、ちょっと見上げるくらいの高さ。とっさに間合いを離し、身構えようとする吟遊詩人に、卵の魔法使いであるところのワタシは、大きく口を開いて、黒い息を吹きかける。仕掛けてあった魔法と連動して、吟遊詩人の意識を曖昧なものにと変えていく。認識阻害と、自白の魔法、触媒にその手の薬品を使用。ちょっと恐怖に感情が振れる方向へと、認識を調整。あれ、なんだか吟遊詩人、がたがたと震えているような?少しやり過ぎたか?まあ、いいか、情報を洗いざらい吐いてもらおう。
辺境伯統治領域のゴシップから、非嫡子のご令嬢と、正当な跡継ぎであるご子息との因縁話、それにまつわる、地方有力者の暗躍、貴族やら、他国の勢力やらの介入と、宗教団体の横やり……うーんやはりかなり利権が複雑に入り乱れているよう。で、それに対する、辺境伯の上の管理者である所の王家?皇帝側?の反応。基本王家で良いのか?もう少しつっこんだ所をしゃべってもらおう。
おっと、認識と言葉が引金になって、あらかじめ吟遊詩人の身体に仕掛けられていた魔法が発動しているよう。秘密保持のための、自己崩壊?自我崩壊?そこまで丁寧ではないか?病死に見せかけるために、心臓をとめるという単純な術式?発動そのものは、自身の任意では行えなく、あらかじめ明らかにされるとマズい情報を、一定の条件以外で提示すると動き出すタイプ。一応誤作動対策はしているよう、ではあるが、人権軽いな。頭の隅で思考を続けながら、その魔法の発動を阻害する魔法を発動する。秘密基地の魔法の書にあったものをアレンジした、強力バージョン、というか、基本は魔法の粒子操作の部類なので、汎用性を高めてもの、その便利で使いやすく改良した魔法を、こつこつと日々の訓練で伸ばした、魔法制御領域の拡大という実力に裏打ちされたものとあわせて、悠々と、解除。
あーなんだかしゃべるスピードが上がっているような?なんだか、目がうつろになって、口早にしゃべり続けている。綺麗で聞き取りやすい声なので、問題なし。簡単な魔法も併用して、空中に図形を描きつつ、丁寧に、発表してくれているのは助かるなと。
この吟遊詩人、この国の支配団体直属の諜報機関に属する一員で、今回の任務は辺境伯跡継ぎ騒動についての情報収集と、いざという時の介入するための足がかりとか手がかりを作り出すというもの。何人かの組みで動いているけれども、基本この吟遊詩人以外はバックアップ要因で、直接対象の近くに来ているのは、彼のみ。国は、彼の所属する情報機関を通して、ある程度状況を把握している、彼の私見ではあるが、どちらが辺境伯を継いでも対応できるように動いているらしい、どちらかを確実に跡継ぎにするように、後ろ盾につこうということにはなっていないよう。
むしろ、この辺境でのごたごたを餌に、周辺国のなんやかんや暗躍しているモノをつってみようかという方向らしい。特に、滅ぼしきれなかった令嬢の母国関係をスッキリとしてみたり、または、利用価値のあるモノを確実に手に入れてみようかと、具体的には亡国所有の”迷宮”とか?令嬢の背後に亡国の王位継承者がからんでいることも把握済みなわけか。さてどうしようかな?
それにしても、なんだか彼の視線が熱っぽくなって来ているような。銀色の髪で、白い肌、整った容姿、戦闘もこなせるためか、体の肉付きも立派で、引き締まっている。で、それを魅力的にみせるノウハウも一杯持っている感じ。すこし涙目、うるんだ瞳、ええと、なぜだか崇拝対象になってませんかね?……なんですかその”黒霧の主”とかという呼称は?……最初の口からの、黒い霧のイメージと、辺境説話に登場する、”黒い霧”とともに現れる偉大で巨大な存在にこの”卵様”が重なっているわけですか、はあ。
ちょっとその方向で忠誠心とかの、確認をとってみる。なるほど、あっさりと自身にかけられた隷従のための魔法を解除されたため、その圧倒的な実力に心酔していたり、また基本それに対して恩を感じているよう。やはりなんだか鬱屈したものがあったらしい。生粋の情報局員ではなかったのかも?さらに、認識阻害と自白用の魔法の副作用……というか主たる作用のちょっとした恐怖心を煽る効果の影響で、巨大な卵の魔法使いに対して、恐れ敬う気持ちが沸き上がって来たと。恐怖の対象と同化することで、変調を訴えた精神を落ち着けたわけか。ええと、結構地獄の底まで落ちました感じですよ、その落ちつき方は。
これは、狂的な信者をゲットしたと考えていいのかな?便利なカウンタースパイゲットだぜ?
とにかく、監視、連絡用に雀をつけておこう。そして、この目の前でひれ伏していて、それでいて仰ぎ見て、いろいろな所から、出てはいけない汁をだして、恍惚な表情を浮かべている美青年?を表面上だけでもまともに戻して、今後も、色々、引き続き、情報を提供してもらおうかな?
思いがけず、現在の情勢やら、風俗やらの情報源、ゲットしましたね。もう、後はこの状況、放置でもいいんじゃないかな?充分もとはとれているような気がする。
まあ、平行して色々準備しているから、当初の予定通り、基本傍観で、ちょっとずつこの勢力も、つまんでみることにしましょう。




