22話目 卵の魔法使いが偶然耳にした辺境の現状、その裏側がどのようなものだったのか(跡継ぎ長男側)が語られるくだり
戦闘集団を観察して、種族分布と現状の文化レベルについて考察するくだり。
さて、まずは目立たない場所に雀を配置しての盗み聞きと覗き。表現がなんだか嫌らしいけれども、まあ、方向性とか品性とかは同じようなものと納得。”さえずり雀”音を媒介にしたネットワークを基本とした広域偵察用デバイス、燃料は魔法の粒子を変換したものなので、あまり足の長い偵察はできないし、時間制限もある、が、まあ、一両日くらいは連続可動ができる。ともあれ、街道沿いの森に潜む怪しげな武装集団のミーティングへともぐり込ませて、色々リアルタイムで聞き取り調査開始。言語の理解は可能。辺境の村独自の語彙変化、語調やら、イントネーションやらの変化つまりは訛りという差異が観測できた。この武装集団の方が少し話し方が洗練されている?というか、事務的?とも違うが、やや都会的?な語調が多いのかもしれない、知らないスラングも多いよう。前後の文から類推できる程度だけれど、固有名詞はなんともしがたいものがあるので、マーキングしておいて、意味やその語の方向性を類推することにする。なんだろう、ね、この「フルパラルの花を見たときのようなもんだ」とか「ペンタランになるつもりはない」とか?少なくとも、過去秘密結社が存在していた時代には存在しなかったスラング。興味深い。どちらも否定的な要素が混ざっている感じではあるが。
人種の分布は、獣の成分が混じっていない人が8割ほど、獣の成分が混じっている人が1割と5分あとの5分は、妖精の血に連なる種族のよう。
背は小さいが、がっしりした体系、ビヤ樽のように腹がつきでているが、肥満体という感じではない、長く白い髭が顔を覆っていて、その髭は綺麗に器用に編み込まれている人種、山の方に主に生息する妖精と呼ばれる種。
ひょろりと細く、アーモンドを思わせる形の青い瞳、そして、長い耳をもつ整った容姿の人種。背はあまり高くない。深い森の中をテリトリーとする妖精と呼ばれる種。それらが、それぞれ数人ずつ存在する。これを例にするのは、なかなか片寄っているような分布かもしれないけれども、獣の人と、妖精の血に連なる人、そして、それらの因子が出ていない人の分布サンプルとして、記録しておく。
妖精というのは、いわゆる、あちらの世界に昔存在していた、オックスフォードの文学者が、20世紀前半に、世に表した、想像上の不思議世界の住人……ということではなく、分類上そのように呼称されている、生物の一種。人種の違いと言い切って良い。各種交配も可能。ハーフというか、要素の混じりもあるが、見た目的には、あまり極端な容姿にはならないことが多い。
一般的に妖精種は共通的に、耳の先が尖っている。また、森の、山の、という分類で、主たる住居によってその体格が違うよう。ただし、その種のルーツは謎に包まれている。どこからかやって来た、平行進化した、外来種という説が濃厚。だだ、世間一般的には神様が作られた各種族の一つという認識。妖精種は、長命で何かしら能力的に突出したものを持っていることが多い、逆に他の種族には劣る肉体的なハンデもまた存在する、が、がまあ努力と技術で補える程度。個体としては生態系の上位に位置するスペックを誇るものの、繁殖に関してはやや不利な面が伺える。といった情報がさらっと脳裏をよぎる。ちなみに、海の、とか空のとか、いう生活空間で分類される妖精も存在するし、炎の、とか、闇のとかいう、形態別の妖精種も存在する、この場合は、種族的な性格とかの分類、あと、海で水の妖精とか、山の闇の妖精、森の光の妖精とか組み合わせも多い。もっとも総人口は、種の保存上、まあ気をつければなんとか、から、それがギリギリ、さらには、滅亡まで絶賛カウントダウン中、レッドデータブックの常連さん、というものまで、なかなかスリリングな生体系で世界に組み込まれている。
悪の秘密結社時代にも、数多くの妖精種が組織内に存在していた記録がある、彼らの多くは、長命種であるから、もしかしたら、この時代にも生き残っているかもしれない、それの発見、確認、再接触が、今回の探索行、その目的の一部。
これは、私の推測だが、多星系からの来訪者という可能性が脳裏に浮かぶ。もしくは、何者かが作り出した人工生命体というか改造生命体?特に後者は私が猫耳少女を改造した実績があるので技術的には可能なわけだが、それらの解明の為に、ぜひサンプルを手に入れて、じっくり調査をしてみたい。今回のこれは、良い機会なのか?ぜひ入手希望。ちょっと拉致してみようか?いやそれはなんだか不穏当な思考であるな。しかし、妖精種を複数確保して、人工的に繁殖させるとか、ロマンあふれるビジョンが見える。
文明のレベルとしては、やはり鉄器時代には入っているというか、その時代の産業レベルをキープしているとみていい。武器武装、鍋釜が鉄器である。ただ、火薬に類するものはなさそう、少なくとも火薬を利用した質量兵器、は見当たらない。もっとも大砲などの地上では取り回しが大変な大物を機動力重視の部隊が持ち歩くのを嫌うということは、充分考えられるので、無いとは断言できない。が、魔法があるのでそれが代替として大型兵器の位置を補完しているとも考えられる。生活に密着したレベルだけれども魔法の使用も認められる、だいたい火をおこしたり、水を生み出したりというレベルで言うと0の魔法だけれども、魔法知識が失われているわけでは無いと再確認。
食料は携帯性を重視したもの。固めに焼いたパンのようなものに、干した肉類。植物の種子を加工したらしき食料品もみられる。森の妖精族はなにやら、可愛らしい焼き菓子のような物も食べているよう、ちょっと優雅?山の妖精は水のように飲んでいる飲料には、アルコール成分が混入されているというか、かなり高い濃度?この種族、秘密結社の文献によるとアルコールを燃料にして駆動している面白生物であると記述されているが、冗談の部類ではなかったのかもしれない。これも要調査と頭にメモ。
男女比、5%くらいが女性?疑問系なのは、体格がよく分からない人物が存在するから。ただ、観察すると骨格レベルで差異が見られる……気がする。山妖精の女性は髭を生やしている種族と、平原の妖精以外の族と交わることで髭が退化して失われた個体が存在するという記述があったので、もしかするとあのひげ面の板金鎧でハルバード(長柄の斧みたいな武器)をもった戦士の性別は女性かもしれない。なかなかロマンあふれる世界であるな!
そのまま世界の男女比としてのサンプルにはできないのは、彼らが戦闘を生業とする集団であろうから。前線に立つ兵士にはやはり肉体的ハンデから女性は敬遠されるであろうからなと、ただ、この世界には魔法があるので、男女の差異な少ないと考える……が基礎体力は有った方が兵士としては有利か?ふむふむ、兵站の現状も調査項目に上がっているので、興味深くメモメモ。
物騒な襲撃計画について、話し合う武装集団の会話から導き出される辺境事情について、考察するくだり。
で、その武装集団、朝のミーティングで判明した現状は。彼らは、辺境を一手に支配、統治している辺境伯、その長男派に所属する私兵団であったと。で、彼らが襲いかかろうとしている対象は、その辺境伯が家の外、正妻以外の女性に産ませた娘であるということ。色々背景があるようで、噂話とか私兵の会話をひろっていくと、とどのつまり、良くある?後継者争いらしい。
辺境伯は昨今病魔に倒れベットに伏している、ただし意識はあるらしい職務は副総統が中心になって回している現状、で、当然でてくる跡目問題。本命は伯の長男であるのだが、ここで、親の欲目というか愛する女の忘れ形見に地位を継がせたいと、血迷った判断をした伯の意志と、娘さんの母親が、滅亡した某国の姫様であるという血筋的にもなんとか横車が押せるくらいの立場が確保できるとう現状、さらには、今ひとつ華のない長男、という要素が複雑にからまって、かなりごたごたとしているらしい。それら混乱を後押ししている辺境の実力者達や、他国の調査部の暗躍までからまってる。長男派から見ると、娘派は諸外国に通じている背進者で、もしも彼女らの一派が辺境を牛耳るようになれば、国を割るような内戦になりかねないとう危機感がある……らしい。また、その娘さん事態あまり素行が良くなく、夜な夜な寝所にお気に入りの美少年を引き込んでいるという噂もあるらしい……ちなみに、美醜としては頭に絶世のとか傾国のとか、という表現がつくくらいには、整っているし、歌舞音曲に秀でていて、社交的には人気が高い、らしい、御年16歳。
で、その娘さんに、辺境への視察という仕事をうまいこと斡旋して、それにあわせて、謎の盗賊というか強盗?もしくは他の勢力の襲撃にあったということにして、亡き者になってもらおうというのが今回の作戦ということらしい。武装集団のリータが外連味たっぷりに、手振り脚ぶり、魔法による幻影によるプレゼンまで交えて、懇切丁寧に説明してくれるあたり、ノリがいいというか、やけくそになっているというか、この武装集団達、あまり戦意が高くないらしい。軍人として、命令には従うけれど、汚れ仕事だし、その後口封じも考えられるというおよそ戦意の上がる要素が少ない事態ではあるが、離反するのもリスキーであるという現状。私兵の部下たちも、テンションはあまり高くない。実力自体はそこそこなものだと推測できる。
森の妖精達は、魔法に秀でている上に、種族的な特性、これは生活習慣が森での狩猟よりであるという特性から、弓術が得意であるから、遠距離からの手は多い。さらに、接近戦では、腰の細身の剣、いわゆるレイピアが相手の鎧のすき間を狙って意突き刺さるのだろう。見た所、魔法の武器とう感じはしないが、手入れは良くされている。
山の妖精達は、ゴツい体全体を覆うように着込んでいる板金鎧、その下には鎖帷子、かなりの重量があるという感じの鎧を着込んで、それでいて、ひょうひょうと動く姿は、恐らく生来の筋肉に加えて、魔法的な強化もいくらかしてあるのだろうと推測できる。
獣の様相がまちまちに出ている戦士達、その肉体的なスペックの高さは辺境の村の狩人達で証明済み。獲物もそれぞれの体格に合っているものをチョイス。
私兵ということに加えて、謎の襲撃者という体裁を整えるために、そろいの武装はあえて外してあるものの、むしろ、もともと自分の使いやすいそれを装備できるため、個々の戦力的には上昇しているとも言える。
さらには、それらに含まれない、一般的な種族、いわゆる多数派の人族である大多数の兵士も、おのおの手になじんだ武装をしている、また、魔法の発動を助けるためのスタッフ(長い杖)を持ち歩いている軽装の人物もいる。ちなみに、魔法を使うからといって軽装でなければならないという制限はないのだが、魔法の修行を優先した結果、基礎体力の伸びか低いという結果が導き出されるので、あまり肉体的に厳しい重い鎧を好まないという現象が起こる。また、肉体的な疲労によって、精神集中が乱れて、魔法の制御に影響が出ないように、軽装を好むという風潮もある、らしい。
中には、数十キロの金属製の鎧や、十数キロの巨大な剣を構えつつ、魔法を使って突貫するというスタイルの、いわゆる魔法戦士も存在するが、実力的にはどっち付かずになりかねないので、ある程度数をそろえて戦うことを前提としている、兵士には向かないスタイルではある。兵士として、育てるには、コストパフォーマンスが悪いといえば、理解できるだろうか?
ちなみに、卵の騎士のスタイルは、この魔法戦士タイプであるが、生来のスペックが超越気味なので、戦士としても、魔法使いとしても一流を越えた所にあると、認識していただいて間違いないだろう……誰に説明している?
そういう私の思考をよそに、集団のリーダーがパンと手をうちならす。そして、まあ、うまくやりましょう的なノリの言動で、ミーティングが終了。事前のリハーサルと罠の設置へと彼らは繰り出していく。襲撃予定は3日から、5日後であるようである。幅があるのは、相手の動きに合わせるため。
さて、では私はどうしようか?介入する理由は薄いけれども、調査の一環と、行動規範の大部分占める好奇心から、辺境伯嫡子外の娘さん、その様子でも観察しにいきますかね?




