21話目 いかにして猫耳少女と卵の魔法使いが辺境の村より出立したのかが語られるくだり
いかにして猫耳娘が辺境の村から旅立ったのか語られるくだり
しめやかな雰囲気、なんとも心がざわめく音階。辺りを震わせているのは笛の音、フルートに似た金管楽器。演奏しているのは、山間に住む辺境の村人の少年達。それに合わせて少女が薄やみに、舞う、妖しい踊り。彼女が踊るのは彼らの神に捧げる誓いの踊り、そして、村から出立するにあたって引き続き神のご加護を賜りたいと、願う踊り。ということにしてみている。もちろん仕込みは私、迷宮の管理人にして、その迷宮の一部に組み込んだ村を管理しているわたくしの。それっぽい宗教儀式を記憶とライブラリから引っ張り出して、でっち上げてみた。もっとも、心理学的なアプローチで洗脳とまではいかないけれどそれっぽい雰囲気を出すように仕掛け満載にした演出が中心。音と光による催眠が中心で、怪しい薬なんかは、少ししか盛ってない。全てはスムーズに猫耳少女を旅立たせるための舞台作り。
踊っているのは猫耳少女のスノウさん。年齢は数えで12歳。小柄な体躯なので、もう少し年下に見えるけど、辺境ではそろそろ一人前の労力に数えられる年齢だそうで。衣装は薄衣、ちょっと透ける感じの淡い白、と赤。白い体毛が、要所要所を隠すように見える。振り付けはとある架空の神に捧げる、安眠の踊りのアレンジなのだけれど、なかなか艶かしい感じ。まあ、プロポーションが良ければなかなか危ない感じ、だけれども、胸も薄いし、お尻もすとんという感じなので、そういう色気はないものの、少女特有のこう儚いとか、繊細なとか、あやうい感じの雰囲気が出ているので、結構満足。脚運びとか、腕の動きとか、ここしばらくの訓練の結果、的確で機敏な動きができていて、美しい。怪しげな管楽器の音にあわせて、薄やみ、かがり火のみの照明で踊る猫耳少女。もちろん全方位から、カメラを回して保存済み。なぜもちろん?まあ、今後の資料として保存することにやぶさか無いわけではあるけれど、これはむしろ趣味の範囲ではないだろうか?村に仕込んであるというか、迷宮の一部であるので監視装置は自然に存在するので、それらを駆使して、色々様子を伺い、問題点があれば、素早く介入するために、メンテナンスデバイスを色々と偽装させて配置してある、が今のところ問題なさそう。
巫女が中心になって、神官が補佐、その側に戦闘隊長が控えるという形で舞いを舞ってる場所の側に配置、衣装もなかなか綺麗で怪しいものを選択、これらの衣装はそれっぽいものを自作してみた。基本的には、あちらの世界のアジア系テイストを目指してみている、がこちらの世界、昔の秘密結社時代のアイドル衣装、なんだろうこの違和感がありそうで、ない言い回しは、武器開発主任の毒が回っているのが感じられる、そのアイドル衣装の中にあったデザインも参考にさせてもらっている。作成そのものは、迷宮の施設にその手の作成機能があり、材料もそろっているので問題なく……衣食住の内、衣料に全く問題がないのは美味しいと思う。
今回の猫耳少女出立のお膳立ては、神からの啓示という形をとらせてもらう。この地より神の力もとを求めるために、巡礼の旅に立つとかなんとか。失われた権能を復活させる為に各地の要石を巡るたびとかいう感じに設定してみた。両親は納得済み、戦闘班長的立ち位置の父親と母親と、少し手合わせをさせて、問題ないことを確認させておいた。さすがに、フルチューンした肉体の能力を十全に使わせると、勝負にならないから手加減をして。と思っていたのだけれども、なかなか、この保護者ズ、腕が立つので半ば実力を出し切って認めさせることになります。世の中広いなと……まだ辺境の村を出ていないのですけどね。
踊りのクライマックスに、合わせて、太鼓を打ち鳴らすような重低音が周囲に響く。山にこだまするその音とともに、完全に落ちた日、訪れた夜、かがり火の明かりのなか、ぬー、と現れるのは巨大な爬虫類。大人数人分よりも高い位置に光る目、鋭いキバ、太い四肢、長い尾っぽ。それは我らが移動用の騎獣である、陸竜の”雷”です。いつの間にか村人たちは、平伏しています。笛の音も止みました。猫耳少女は、すうーと陸竜に近づきます。そして、トンボを切って華麗にその背に降り立ち、ふたたび数度、陸竜の体を蹴って飛び、頭上へと乗ります。
「いってきます」スノウさんが言います。
「いってらっしゃい」両親が口々に分かれと、再会の意味を託した言葉を発します。
こうして、辺境の村の猫耳少女は、闇の中に飲まれるように、恐竜に乗って旅立っていったのでした。私は迷宮の監視装置を見ながら、一部始終を監督しています。特にフォローは入らないようです。さて、合流いたしましょうか。
猫耳少女と卵の魔術士が、合流して闇の中を旅立ち辺境街道へ到達するくだり
さて、演出用にわざと大きな足音を立てていた恐竜型モビールは通常運転に変更、猫耳少女も旅装に着替えてもらって、森の中の道をすすんでもらう。この道は、山を下る道で、辺境の村と外とを結ぶ唯一の街道というか、山道?当然あまり整備が進んでいなかったので、取り急ぎ街道整備をしてみた。そのままでは細すぎて、巨躯が通りにくかったので。いえ、動くことは可能ではあるのですが、ちょっと大きく樹々をなぎ倒しそうだったり、視界が悪かったりしたので、あとは趣味。こうなんだか、街道整備とか道路工事とか、ロマンあふれる感じがしたのです。
樹々の伐採と、地面の固定化と、迷宮にある機材を持ち出したり、魔法を駆使したりすれば、どんどん進ませることができるので、ちょっと面白かったわけ。山崩れが起きないように工夫したり、定期的に整備が必要なので、それらの手配を辺境の村に手配させたり。そのための自動巡回用のデバイスを持ち出したり、結局色々監視用にカメラなどを設置したりと、ええ趣味前回で色々いじくりましたが、あっという間に完成したその道を下って、山を下りていきます。闇の中ですが、月明かりだけで大丈夫なくらい、夜目が聞く面子であるので問題ないわけです。
その道の途中で、ワタシが合流します。相変わらす卵のボディですが、今回は前衛を猫耳少女、巨大戦槌付きが勤めますので後方支援ようの魔法使いスタイルです。それが、ぬー、と街道に現れて、歩き始めます。先導するように、先に歩いて行きます。雷はかなりのんびり歩かせます。徒歩の早さと代わりありません。まあ、山道ですし、敵性生物を警戒しての速度です。巨躯を誇る恐竜とそれの頭にちょんと乗る猫耳少女、それを従えて山道を歩く卵の怪人、頭上を照らすのは赤い月、なんとも絵になる旅立ちではないでしょうかね?猟奇的かもしれませんが。いまさらですね。諦めてはだめなんじゃないかなとちらりと思いますが、まあ、前向きに行きましょう。夜ですが、雀が飛びます。そして、数羽陸竜に合流して羽根を休めます。周辺偵察用の飛行デバイスです。その為に、竜の背には巣箱を用意してみました。まあ、飲食はしないので、待機場所という塩梅ですが、カモフラージュにはなりますか?竜の背には野外活動に必要なものが一式と、辺境の村でとれたという設定の素材が少々、毛皮とか、敵性生物を狩った時の肉の塩漬けとか、干したキノコとかが満載、一応村からの行商っぽい形に偽装してみようか?という意識のあらわれ、あとこちらの現金をいくらか仕入れるための種としての荷物。そして、食料と水。満載に見えるけれども、荷重的にはまだまだ行ける余裕のパワー。さすが、大容量低燃費の移動モビール。
ゆっくりと時間をかけて、山を下りていくと、徐々に傾斜がなだらかになり、平地へと近づいていく。この辺りまでは偵察用のデバイスで確認済み。山を下りるまでは、敵性生物との攻戦は無し。まあ、まだ迷宮のテリトリーであるので実はあまり心配はしていないけれども、どこにもはぐれてくるというモノはいるので警戒はしておく。夜半過ぎに山道を下り切り、少し開けた空間で小休止。村に不定期に訪れる辺境の行商人に依ると、このままの方向へ進む先には辺境の都があるらしい。基本敵性生物にあふれたこの世界、ある一定以上の人数が集まって対策をしないと、それら敵性生物に居住区が飲まれてしまうので、辺境でも人は結構固まっているらしい。自然それは都市のような様相をなすという。もっとも、一度しっかりと防備を固めてしまえばよほどのことがない限り居住区が消えることはないらしい、たとえば、突発的に発生した迷宮に飲み込まれるとか、敵性生物の大発生とその進攻先に巻き込まれるとか、疫病の発生とか、大風や大雨などによる自然災害とか、地震やそれにともなう大火事や、大津波とか……結構ある気がするけど、まあ、それらも滅多にある訳ではないし、それら災厄が身に降り掛かれば、運が悪かったなあと肩をすくめて、走馬灯でも眺めるしかないわけであろうかと。こちらの世界には魔法があふれているので、対策も可能ではないかなとは思うけれども、なかなかそうは行かないようで。この辺り、魔法の現在の使用方法やら、社会への組み込まれ方やらも調査対象なわけであるから、ワタシは便宜上旅の魔法学者という立場をとる予定。猫耳少女のスノウさんは従者扱い、もしくは弟子という立ち位置、「お嫁さんにしてくださいとは言いませんし、私はもともと卵様のモノですからいかようにもお使いください」と言わせてしまうと、なんだかそこはかとなく罪悪感を……まったく感じない。洗脳というか、卵のワタシに崇拝する所とか、その手の現状も変化無しです、普段は怪しまれるのでそういう言動をしないように指示しておく。
休憩と、猫耳少女さんの食事をはさんで、卵の魔法使いには食事が必要ないので、魔法の粒子を少し補充しておくくらい、もう少し進む、辺境の街道へでて、朝を待ち進む予定。そろそろ人の目があるかも知れないので、夜間の移動は控えるようにするため。さすがにこちらの世界、魔法があるとはいえ、夜間の行軍はイレギュラーであろうと推測するため。
特に問題なく辺境街道へと合流。街道は古い時代に強大な力を持っていた巨大な集団の行政機関が、敷設したもので、大陸の隅々まで均質の石畳を敷いて整備されたもの、らしい。その集団というか国家は、すでに滅びているらしい、歴史上では帝国とか、共和国とか、名称が定まっていないので、国家というよりは、国家群だったのかもしれない。
その整備された街道近辺で、休息。背にしょった荷物から、魔法書を取り出して、瞑想状態に入る。魔法のスロットは即席栽培迷宮を討伐した時から、旅立つまでの間でかなり増えているので、魔法の選択肢は多い。また、アレンジを重ねた魔法、その図案を用意してあるので、どれだけ活躍するのかちょっと楽しみにしている。実験と実践をしてみたいとうきうき。心躍る。しかし、カモフラージュ用に全うな魔法、もセットしておく。アレンジバージョンばかりではやはり目立ってしまうから。ワタシは巨大な魔法書を開いて、視覚と触媒による嗅覚触覚の入力もあわせて、魔法をセットする。交代で猫耳少女のスノウさんも魔法を読み込んでいく。野外生活に便利な魔法や、感覚や肉体を強化するタイプの感知系列の魔法が主体。その間にワタシは恐竜型モビールのバッテリーの充電を魔法で済ませてしまう。心無しか、雷も気持ち良さそうにしている。日が昇るとほぼ同時に周囲に偵察用のデバイス、”雀”を放つ。ここ数十キロ圏内の索敵が目的。テリトリーから離れているので、敵性生物の有無の確認や、街道周りの状態を調査させる。情報は、逐次こちらに送られるが、さすがにあまり数をつれては来れなかったので、少し時間がかかるものの、そこは予想の内。範囲をしぼって調査中。まあ、急ぐ旅でもないので問題なし。
街道の先、視界の悪い森?林の中に、人影多数発見。数は数十人、百には満たないほど。野営とかしているよう。近接戦闘用の武装を準備していたり、移動用の騎獣……馬のようなものも何頭か確認。あー弓矢もあるね、弩、いわゆるクロスボウを準備しているのもいる。装備はばらばらだけども、集団として統率されている感じがする。なんだろう、この集団、要精密調査。
辺境の村そのさらに奥の迷宮から出発して、山をおりて、最初に接触する可能性の高いこちらの世界の住人、念入り調査をして、傾向と対策を練らなくてはね。
音声を拾って、丁度朝のミーティングを始めるみたい。食事や装備の点検の手を止めて、壇上に立つリーダーぽい存在の発言を聞く様。さて、情報収集、情報収集。




