18話目 猫耳少女が大きな白い猫として(心の中を)蹂躙無双していくくだり
猫耳少女の獣化変化について語られるくだり
猫耳少女のスノウ、その身体の調査をして、判明したこと。それは、過去から連綿と続いている、肉体的な仕掛けの系譜。十数世代前、最初に秘密結社の怪人として生を受けた先祖から、遺伝情報として受け継がれているものに加え、生来、獣の比率が高い人に備わっている、原初の本能的な魔法。姿形がより獣の方へと近づいていくフォルムチェンジの魔法、それが、彼女にも受け継がれていた。
肉体をより四つ脚獣タイプへと近づけるような変化をさせる魔法、はこちらの世界に存在する。急速な成長と骨格の変化、タンパク質を合成、カルシウムから骨の生成と、形成するために、特定の部位を死滅させる、という組み合わせで、肉体そのものの形を変えることは、想像の範囲内。ただ、効率は悪い。そもそも獣の身体に近づける意味がよくわからない。筋肉の強化なら、フォルムを変えるまでも無い。確かに、狩猟に向いた姿形になれるというメリットはあるのか?けれども、爪と牙を得る代わりに武器戦闘に適した身体を失うというのはどうなのか?
さらには、フォルムチェンジにかかるエネルギーの問題もある、いまある肉や骨をただ移動させるということは出来ないので、あらたに獣型になる為には肉を作らなければならなく、当然、以前にあった人としてのフォルムを維持するための肉や、骨は、消さないといけない。あまり少なくない材料を使用することになる。しかも、フォルムチェンジには時間がかかる。それこそ、数時間単位。慣れたり、高速化する魔法を併用しても数分は必要。きったはったの戦闘中にそれは有効とは思えない。
戦闘用ではなく、隠密とか、工作員としてのメリットは?と言うと、これも微妙なものではある。完全に動物のような姿に変型できるのであれば、見張りに気配をさっちされても「なんだ猫か」とか言われて注意がそれる可能性もあるけれど、脳の大きさは変化できないのであるから、結果として、かなり大きな猫になってしまう。「なんだこの化け猫は!」となって大騒ぎになること請け合い。それよりは、音は臭い、姿を消すような魔法を習得したほうは効率が良い。
それなりに肉体の性能はあがるが、コストに見合うほどでもないというのが、獣型への変化という能力の私の評価。ではあるのだけども、目の前にある、白いもこもこな大きな猫型に変化している少女というのは、そのような機能面から見る評価とは別次元に良いものであるな、と本能で理解した。
顔はあまり変化がなく、若干毛皮が増したかな?という程度。両手は少々伸びて、四肢で移動するのに適した形へ。骨格も内蔵が苦しくない程度に猫型へと変化。全身は雪のように白い毛皮で覆われている。もとが10歳少しの少女の身体なので、ちょっと大きな猫か、小さな雪豹のようなフォルム、栄養状態が良いのと、迷宮のメンテナンスデバイスであるゼリー状の存在の手入れのお陰で、毛はつやつや。少女の可愛らしい顔つきはそのままで、もともとの猫の目になっている大きな琥珀色の目がぱちくりとこちらを覗いている。甘えるようにのしかかってきたりしたりして、卵形の汎用でバイスに戯れ付いている。猫だ、猫でしかない。頭の中身は人としての少女のままであるはずなのに、このフォルムだと本能に惹かれるというのか、仕草が猫、それもふにゃんとする子猫。これが、最強でない訳がない。このフォルムの真の恐ろしさを見た気がする、いやさ、私はその世界の深淵を覗くその最初の一歩を踏み出したに過ぎない、世界はこの愛らしい生き物の為だけに存在し、私たちはそれに奉仕するためにうみだされた、サーバントに過ぎないのであったという真理が垣間見えてくる、ああこれが悟ということか……。
私の脳の一部が暴走しているのがわかる。なるほど、外見上の変化は物理的な戦闘能力としては、若干難があり、スタイルチェンジにかかるコストに見合うものではないが、心理的な戦術として、このフォルムは有効というか、相手の嗜好に合致すれば、最終兵器になりかねんということを理解。もしかすると、魅了の魔法が併発しているのかも知れない。要研究。
しかしだ、秘密結社時代の獣変化システムもこのような使われ方を想定していたのだろうか?獣娘もしくは、獣少年によるハニートラップとか?単純にマスコットで、組織員の癒し担当という線も考えられる。……ああ、そういう資料が奥に埋もれている。偶像化計画とか。妙に凝ったアングルや衣装をつけた獣耳少年少女のポートレイトがあるし、なんだろう、ブロマイド?ステージ記録?色々フリーダムだったんだな秘密結社。だからこその悪の秘密結社か。ちょっと色々その時代の連中と会いたかったような、そうでもないような、なんだろうこの微妙な感情は。呆れと、憧憬が同時に沸き上がるのは、自分に複数の人格があるせいだと思いたい。
実践に役立つチェンジフォームの可能性、と改造について考察、実験してみるくだり
肉体が実際に変型して、獣に近いフォルムになるのは、見た目状の可愛らしさとか、心理的な戦術を主体にすれば役にはたつものの、実際にきったはったをするにはコストパフォーマンスが悪い。ので、実践的なフォルムチェンジ、戦闘用のデバイスを開発してみる。開発というか、過去秘密結社が作っていたものの再発見と、改良が主体となる。
まずは防御力、これは、鎧のような、装甲を瞬時に展開できるようにすれば良い。圧縮されていた物質を、解放して、身体にまとわりつかせるタイプ。パワードスーツのように筋肉の補助は必要なく、あくまで、防御を主体とした構造で。10歳程の少女の体格のスノウさんの手のひらに収まるほどのキューブを用意する。これを、コマンドワードで展開させる。キューブは瞬時に粒子となって、身体にまとわりつき、固定される。泡のようにふくらんで、気体を含んでいく。スフレとか、の感覚。その構成要素は金属に似て、固く、内包されている気体はやや強めに圧を掛けて置く。フォルムは猫耳少女の姿をそのまま大きくしたような形で、少しデフォルメしておく、あちらの世界でいうところの着ぐるみに近い。四肢の動きは邪魔しない様に、なっている。関節は自由に動くように。ここは弱いけれど、まあ、どの鎧型の装甲も関節部分は弱点なので、この辺りは運用でフォローすることに。発動から身体への展開まで数秒。さすがに一ミリ秒で展開完了とかいうことにはならず、少し残念。けれども充分実践に耐えることができる早さと確認。この展開と装着は、魔法の粒子によって制御されている。レベルで言うと0ほどの容量で制御展開できるので、あらかじめ瞑想セットで複数セットしておく予定。また、魔法のアイテムとして、作成するバージョンもありだけれども、構造上使い捨てになるので、コスト的にどうだろう?という気もする。もっとも、兵器なんてコストうんぬんと言うのが馬鹿らしくなるくらい、お金のかかるものではあるけども。少なくとも実験中は、魔法のアイテム化はしなくて、中の人の魔法制御で行うことにする。スノウさんには、魔法のイロハは習得させ済み。こちらの言うことを無条件で受け入れるので、学習効率も高い高い。あっという間に、0レベル魔法なら10回くらい使える程度に、制御容量が拡大している。
防御の実験がてら、迷宮のメンテナンスデバイスであるところのゼリー状の手足に、殴ってもらう。ある程度の打撃を加えると、表面の構造が破壊されて、中から閉じ込めてあった気体が噴出する。その気体の噴出と、飛び散る金属片で打撃の力がそらされて、中の人を守る仕組み。内への反作用で生じる衝撃は、上手くスフレ鎧の各部へ分散させていくような構造になっているので、中の人はほとんど衝撃を受けない。リアクティブアーマーとか爆発反応装甲とか言うとイメージしやすいだろうか?当然被弾するたびに徐々に装甲部分が無くなっていくので、長時間の戦闘には向かないけれども、粒子キューブのお代わりを用意しておけばその部分はフォローが可能。
装甲への衝撃に対して、ベクトルをずらすようにして、圧縮気体を噴出して、気体とともに飛びちる金属片で相手の攻撃をそらす。内包している気体の種類によって、追加効果も期待できる、直接思いつくのは、毒ガスとかだけれども、これは、装甲を来ている人への悪影響が懸念されるので問題あり。低温ガスとか、発火型のガスとかも考慮に入れるけれども、ううむ、やはり装着する中の人への影響が懸念される。まあ、中の人が頑丈であったり、運用で補える部類ではあるが。
攻撃を受けると、装甲が無くなっていって素肌がさらされていく、という現象が無理なく表現できますと、過去の秘密結社の兵器開発主任とかが使用書に走り書きを残しているのが、何とも残念で、かつお友達になれたかも知れないなという気持ちも同時に生じて、自分の心の複雑さに愕然としてしまう。
見た目、猫の着ぐるみを来た幼女という物体が、その中身の肉体能力を駆使して飛び跳ねながら、迷宮のメンテナンスデバイスであるところのスライムの触手にからまれつつ、戦闘訓練をして、少しづつ、装甲を弾けさせて、幼い素肌をさらしている様子を、なんだか奇妙な感覚でながめつつ、さらなる改良点を模索していく。……客観的に見て、粘液触手に襲われる猫耳少女という絵面は、なにかヤバいような気がするけれど、他意はない……はず、多分きっと。
ああ、せめて模擬戦の相手を卵型汎用デバイスでやれば良いのか?ただ、卵型デバイスでからむと妙に猫耳少女が興奮するから、そこが問題。
肉体の基礎的な底上げと、状態維持に関する基本的姿勢に続いて、装甲的な防御に関する方向性も決まりつつある、次は……武装とか、武術に関するところか?
さて、どんな兵器を持たせてみようかなぁ。あれやこれや、色々試してみたい兵装が、倉庫に眠っているわけで。開発主任、全力で趣味に走っていたから、楽しみでかつ戦々恐々とする今日この頃ですが、みなさまいかがおすごしでしょうか?……ああ、現実逃避している場合では無い……かな?
してもいい気がしてきた。ああお茶が旨い。モニタ越しに少女の機動実験を見ながら、私は遠くを見てみるのでした。
さて、それでは次は武装です。




