螺旋世界の危機…?
5.
猛る(?)神様を宥めて動物達を神域とやらに帰還させたあと、改めて俺達は会話を再開させた。…ぶっちゃけ、動物の転送も未来道具で出来るんじゃね?って思ったが、言ったらどんな災厄が降りかかるか分からなかったので、自重した。
「で、なんで神様うちに来たの?」
「…」
ようやく本題に入ることが出来た。重要なのはここなのだ。どうやら彼女は、少なくとも只者ではない。ただの一般人ならこんな大掛かりな仕掛けは出来ないだろうし、技術的にもとても不可能であろう。そんな特別な彼女が俺のような一般ピーポーの部屋に何の用事があって訪れたのだろうか。
「…螺旋世界は危機に瀕している。」
「は?」
またよく分からないことを喋り出した。もっと詳しく。
「…私が、担当してる世界は全部で八つ。この世界は、螺旋世界の一階層目で、アース。上に向かって、フォレスター、アヴァルディア、ワルカ、レステスティオン、クワイエル、ヴィスチェト、エデネアがある。アースは…エデネアから一番離れているから被害がまだ僅少」
「…」
「この世界で、13年前。エデネアに、『シード』が…現れた。」
この先の話は、こんな感じである。元々、彼女はエデネアの中で暮らしていた。螺旋世界の頂点に位置しているエデネアは、いわゆる神様の世界であり、螺旋世界全体の秩序を守る役目を担っていたらしい。といっても、生命の至上の目的は自由な意志によって自己の生を遂行することであり、エデネアは螺旋世界をあくまで管理して、その中の生命を守っていた。そうすることによって多くの生命がエデネアを除く各世界に輪廻転生する。7回ある生のうち一回でも素晴らしい生を送れたと認定されたものはもう一回輪廻転生の旅に出る。1回の螺旋で5回以上素晴らしい人生であったと認定されればエデネアへの移住が認められる。また7回の転生で一度も成功しなければ魂の浄化が行われ、真っさらな状態で輪廻の旅に出るらしい。
うーん…ややこしいが、この輪廻転生システムは上手くできていて、エデネアは数ある螺旋世界の中でも非常に優秀な世界であったらしい。だけど、その『シード』とやらが現れて、状況が大きく変わった。
「は、はあ。シードってのが現れて、何が起こったんだ?」
「…シードに取り憑かれた者は、生命を淘汰され、転生が不可能になる。エデネアの生命は私以外既に淘汰された」
「…」
「そうして、エデネアの生命を淘汰したシードは、下階層7つにまで干渉をはじめた。」
エデネアの生命は非常に強かったが、シードの不意打ちに対応出来ず、結局駆逐された。彼女はエデネアの生命の中でも特に重要な役割を得ていたらしく、優先して保護され、下階層に存在する特に優秀な魂を持つ存在に助けを求め始める。しかし、はじめはヴィスチェト、次にクワイエル、レステスティオンと救援を求めたがシードの能力は非常に高く、失敗の連続だったらしい。
「じゃあこの世界から上の階層は?」
「…既に多くの生命がシードに感染している。このままではこの螺旋世界全体が崩壊し、それだけでなく…他の螺旋世界にまで影響を及ぼしかねない。」
…この子によると、事態は最悪らしい。この話が全て本当であれば、この世界にもじきシードとやらが現れて、世界は崩壊するだろう。だけど…一つ疑問がある。
「君がどういう存在なのかは…まあ分かったよ。でも、どうして俺の部屋に転がり込んできた?」
そう。俺が一番疑問に思っているのはまさにそこなのだ。もしもこの話通り…まああんまり信じてはないが、世界がヤバイのであれば、さっさと他の優秀な魂の元に行き、助けを求めるべきなのだ。まったく、こんなところで油を売ってる場合じゃないぞ!
「…ダイ。」
「ん?」
「貴方に、助けて欲しい」
…俺よりマシな魂ねえのかよ!