神様はいるんです。
4.
「はい、これ飲んで」
「あ、りがとう…」
俺は目の前の見慣れない衣装を着た美少女の為にお茶を出す。彼女は現在布団をしまった後に設置したちゃぶ台の側にいる。ロング気味の銀髪、緑がかった瞳の色、陶器のような肌、160cmほどですらっとした肢体、なによりこの世のものとは思えないほどの美しい顔。まるで要請みたいだ。改めて、途轍もない美少女だということを再認識した。
実は、あの後、このお茶を出すまでに30分は経過している。というのも、俺も混乱していたし、彼女も俺に吹っ飛ばされたことによって警戒してしまったらしい。宥めるのに時間がかかった…もう午前4:00も回っている。
「で、君はどうしてこんなところにいるの。襖になんていつ入り込んだ?」
「…」
なかなか答えない。俺は幾つかの選択肢を考えた。
1、彼女は俺のストーカーであり、ちょっと頭の弱い系女子である。
2、彼女は泥棒であり、ちょっと頭の弱い系女子である。
3、彼女はホームレスであり、俺の家に入り込んだちょっと頭の弱い系女子である。
4、彼女は神様であり、俺に用事があっただけの崇高な存在である。
…俺的には2辺りが妥当かな。1、4はまあ無いだろう。
「襖?…は…ゲート」
「は?」
彼女は聞き慣れない単語を口に出す。思わず素っ頓狂な声をあげてしまった。
「げーと…?」
「そう。ゲート。あなたの国で言う扉?こんな時間に繋がるとは、思わなかった。本当は日が出てる時に来たかったんだけど、ごめんなさい」
…。なんだかよくわからないが、こんな時間に来訪したことに申し訳ないと思っているらしい。俺的には、勝手に部屋に入ってきたほうに責任を感じてほしいのだが。
「ま、まあ時間はいいよ。俺、どっちかというと夜型だし。それより、ゲート…扉ってのを詳しく教えてくれる?」
「…来て」
そういうと自称神様は俺の手を引いて襖の方に引き寄せる。手の感触が柔らかくて…ちょっと恥ずかしい。こんなんだから彼女いない歴=年齢なのだ。
襖の前まで来ると、彼女は襖を開く。…が、何の変哲もない予備布団が畳んで置いてあるだけである。
「いや、ただの収納なんだけど…これがゲート?」
「…」
……5、彼女は本当にヤバイ系女子も追加するべきなのだろうか?つうかゲートて…よく考えたら中二病表現過ぎる。
「…ひらけー」
「!」
と、そんなことを考えていたが、彼女がやる気なく呟いた瞬間、目の前に緑色のブラックホールみたいなものが現れた。ブラックホール(仮称)からは何かキラキラした粒子のような物が出てきていて、なんだか風も感じる。なんというか…本当に何処かに繋がっているらしい。触ってみていいか了承を取り、手を思い切っていれてみたが、確かに別の空間が向こうにあるようだ。
「…私、ゲートを通ってきた」
「…おう、ごめん」
彼女は嘘を付いていなかったらしい。感情の起伏は乏しいが、どことなく胸を張っているような気もする。すぐに疑う態度を取ったのは悪いことだったので謝っておく。
×
しばらくゲートとやらの鑑賞をしたあと、改めて俺たちは座る。色々興味を持った俺は、質問をしてみることにした。
「君は誰なの?」
「…多分、神様?」
いや、俺に聞かれても…。
「少し、表現が難しい…。この世界を管理してるから、管理者、ともいえる?」
「管理者?どんな仕事をするんだ?」
「…この世界の生命の数を一定域に設定したり、生命が活動出来る環境を整えたり。私…は…命の輪廻が途切れないよう調整してる…」
「管理者すげえ!」
普通に驚いた。この話が本当ならこの子は本当に神様みたいな存在ってことになる…まあまだ眉唾ものだけど。つうかそんな存在ならどうして俺のとこに来たんだよ。
「…しんじてない」
ん?ちょっとムッとした顔になったかもしれない。だってねえ。ゲートは凄かったけど、まだ未来人の技術だ!とかの方が信憑性はあるし。まさか神様って…ははは。
「…えい」
「!?」
突然、俺の隣に柴犬が現れた。勿論俺は犬なんてぁ飼ってない!
「えい…えい…えい…」
彼女がいうたび、犬、猫、猿、鳥、様々な動物が俺の部屋に現れ始める。動物園みたいになってんぞ!
「えい…えい…えい…えい…えい…えい…」
「分かった、分かったからやめてーーーー!!!!」
どうやら、神様は自分の存在を認めないものには厳しいらしいです。