26-4 異腹ぞかし
「怪しのわざや。親子ときこえながら、かく、ふところ離れず、
物近かるべき程かは」*
夕霧は偶然、二人の密事をのぞき見した。
玉鬘は寝過ごして、今起きて化粧したという顔
その可愛さゆえに、光は衝動をおさえきれない。
柱に隠れるように寄っていた玉鬘を光が引き寄せると
美しい髪が、さらさら頬にかかった。
「つらい、苦しい」と思いながら
それでも表面上は、和やかに光によりかかっている。
「…」
夕霧は、少なからず衝撃を受けた。
何これ、もう完璧に自分の女扱いじゃん。
女は処世術なのか、光への好意なのか
受け入れすぎないよう、でも拒みすぎないように
絶妙の力加減で振舞っている。
なんか、夜の商売の女の子みたいだな
嫌われず好かれすぎない、ぎりぎりのライン。
偉大な母の遺伝子なのか、男の扱いが上手い。
異腹ぞかし*って…
ここまで見といてまだ本当の親子らしいと思ってる俺
鈍感すぎるだろ。
夕霧は嘆息した。
ふたりが息もかかるほどそばで語り合ってるのを見るのが
なんかつらい
たとえるなら、飲み屋入って綺麗なお姉さんの太もも触ってる
親父を偶然見つけた時の、見るに堪えない心境?
紫さんって人がいながら、この人は本当どうしようもないな。
女のほうもまんざらでもなさそうだし
もう結婚しちゃえばいいじゃん
行ける所まで行っちゃえばいいじゃんと
多感な思春期少年、なげやりに思って
その場を離れた。
なんだよもう、何見せんだよ、バカ。
歩きながらふと、雲井雁のことが胸をよぎる。




