24-4 妄想全開
雁の目の前には男が立っていた
見た目クールだけど、本当はすごくやさしい人
いつも私を守って、そばにいてくれた
その彼が私を抱きしめて、そっと髪を撫でてくれる。
ああ、すき、すき、大好きだよ
ずっと離さないでいて…
「おい、起きなさい」
そんな幸せ絶頂の夢を破ったのは、やはり父だった。
「またそんな格好で寝て。うたた寝はだめだと言ってるだろ。
女はいつも身を守ることを考えなくちゃ」
雁はあまり父の話をきいていなかった
夕くん…
まだ、夢の中の彼の姿が目に浮かぶ。
夕くん、大好きだよ
我ながら、妄想全開の夢を見てしまったと思った。
やば
父に隠すように、薄いよだれを拭く。
早く会いたいなあ
引き離されてもう三年になるよ
さぞ格好よくなってるだろうなあ
十二の時ですら、まぶしいほどだったのに。
あいたい あいたい あいたいと思った
雲井雁十七歳
今で言えば女子高生か
メールが手離せないお年頃
書くのが早くて
夕霧が一返すまでに、最低三は送った
だって我慢できないんだもの
あいたい あいたい
早く会って、私だけの夕くんにしたい。
いっぱい抱きしめてよ
キスしかしていなかった
何だよキスだけって、小学生か。
それがいかにもったいないことだったか
今ならわかる。
夕くん誰かと結婚しちゃったらどうしよう
彼格好いいからなあ
都中の貴女が寄ってくるかもしれない
そんなの嫌だ
絶対取られたくないと思った
その女恨み殺してでも、私がとりたい
取り戻したい。
雲井雁女の子ながら、熱いハートは父親譲りらしい。
「夕霧なんかになびくなよ。俺にも考えがある」
そんな父の命令も、寝おき顔で聞き流した。
あいしてるよ、夕くん。
時折会いたくてたまらない夜があった
会いたくて抱かれたくて
ひとり寝の身をもだえよじる
会いたいよ
私もう大人になったんだよ?
抱きしめてよ…
ぽろぽろ涙がこぼれた。
十七になった彼女はそろそろ
彼と会えない夜に堪えられぬ体になってきている。




