24-1 断る!!
二十四.常夏
「朝臣や。さやうの落葉をだにひろへ*―」
「断る!!」
「ちょっと、まだ全部言ってないよ夕くん…」
夕霧の完全拒否にさえぎられて、光は思わず苦笑した。
「だって、あんなにはっきり断られたんだから、雁ちゃんにこだわ
ることもないだろ?内大臣が引き取ったとかいう、その怪しげな娘
にしとけって」
「あんたの指図は受けない」
「指図だなんて。命令だよ」
「そもそもあんたが六位なんぞにするから、こんなややこしいこと
になってんだろうが」
「そうだっけ?」
「そうだわボケ」
夏の釣殿で涼みながら、反抗息子はさっそく食いついた。
光ほほえむ。それがよけいむかつく。
周りの君達はそれを見つつ、「仲いいなあ」と苦笑した。
「君は渡さないよー。俺と内大臣さん、最近微妙だからー」
光は、歌いながら琴を弾いた。
その美しい音色にも、玉鬘の胸は痛む。
「どうしてですか?」
「ん?まあ、いろいろあってね」
光は自身でもなぜかなと自問した。
けっこう仲よかったよね?俺たち。
須磨の苦労時代だって支えあったし。
やっぱお后たてた頃からかな
弘徽殿女御を押しのけて秋好中宮が立后したあたりから
内大臣さんは機嫌が悪い。
「会いたい?」
「それは、まあ」
「でもダメー」
光はにやりと笑うと
「琴を習いな、教えてあげるから。あの人の血筋なんだ、琴くらい
弾けないと、娘として認めてもらえないよ」
自分の琴を玉鬘のほうへ押しやった。
「本当は会わせてあげたいんだけどね。昔から、ことあるごとに
君の行方を気にしていた。まるで昨日のことのように思えるよ」
そう言って笑う姿が、すこし寂しげだった。
そう、あの頃に戻れればね
俺も素直に彼女を渡す気になれてたかもしれない。
まあ、成長した君と出会ってしまった今の俺には
到底無理そうだけど。
光は微笑んで部屋を出た。
今さら良心の呵責か?
胸がすこし、痛い。




