23-7 いとこの恋人
「いやーうちの子は本当可愛いね。可愛がられすぎて幼稚な女とか
見ると、親はどうしてこんなふうに育てたか、もったいないと思うこと
もあるけど。うちの姫は満点だ」
光は自信満々だった。
「はいはい」
夕霧は軽く聞き流して、姫君の相手をする。
紫には会わないが、妹のお守りはよくしていた。
今から仲良くしておきな、将来のお后だから。
そればかり言われて、はいはいとお相手する。
妹はまだ、ままごとするくらいの年齢だった。
雁、どうしてるかな…
夕霧はふっと、いとこの恋人を想った。
俺たちも、こうしてよく一緒に遊んだよな
雁って負けず嫌いで
どんなゲームしても必ず、自分が勝つまでやめなかったっけ。
ちょっとした文くらいなら、交わすつてを得ていた。
だが、あそこまできつく叱られたのだから
というか、あそこまではっきり侮辱されたのだから
もっと位が上がった後でなければ、絶対結婚したくない。
俺は別に雁じゃなくてもいいんだよ?
そっちがどうしてもって言うなら、しないこともないけど
くらいのテンションで出世して、見返してやりたい。
「お前はひどいよ」
柏木などは妹を憐れんで、夕霧に文句を言うこともあった。
「お前が折れなきゃ父上も言いづらいだろ?お前が頭さげて、
自分が許すって展開を期待してんだからさ」
「知らねえよ、そんなの」
夕霧は肩をすくめて言った。
「今の位じゃまだまだだし。結婚なんて、まだ先の話さ」
家庭を持つことに興味も焦りもなかった
彼はそもそも、こうありたいと願う幸せな家庭を知らない。
「それよりさ、俺を手引してよ」
柏木は何ごとも熱心になりやすい男で
折あるごとに玉鬘との連絡を迫った。
「やめといたほうがいいと思うよ」
夕霧は気の毒に思ったが、顔には出さず、表面上冷淡に装った。
血の繋がった姉弟だなんて知ったら、柏木はどう思うだろう。
けっこうショックを受けるんじゃないかなあ
柏木ってやさしい奴だから。
まあ、次の恋をすることですぐ回復するという
立ち直りの早さも持っているが。
要するに何にでも全力というか、一生懸命な人だった。
「何だよ、冷たいなあ」
文句言いながらも、柏木はまったく落胆していなかった
つねに次の手を考えている。
有能な人ではあるんだけどね。
昔の父おとどたちの御なからひに似たり*―
そうか?
そんなことないよ、柏木の方がいい人だよと夕霧は思った。
俺のこと殴ったりしないし、紳士だし。
柏木たちとは仲良く遊ぶんだけど
雁の一件以来、伯父とは疎遠になっている夕霧である。




