22-2 みっともない点検
「誰にしようか迷ってるんだよ。婿って決めづらいね」
そんなことをにこにこ顔で言うから
「ご自身が婿になりたいんでしょう?」
紫はくすりと笑って言った。
「そんなことないよ。まじめに世話するつもりだよ、俺」
「ふふ…どうだか」
「そんなに頼りない?」
「あなたは、好きになるとそれを隠せない方だから」
紫がにっこり微笑む。
「私のような幼かった娘でも、今思えばそうかと気づかされる行為
がありましたわ。美しいお嬢さんを相手に、辛抱できるかどうか」
笑いながら、全く信用ない感じである。
「ひどいな。そうやって昔の罪を持ってくるの?」
光は立って行こうとしたが、思いなおして紫をきゅっと抱きすくめた。
「もしかして、嫉妬?」
「まあ、すこしは」
「かわいいね」
「若い方にはかないませんもの」
「そんなことないよ」
光は可愛い耳たぶに口を寄せてささやいた。
「夕顔より気高そうだから躊躇してるんだ、手を出すのにね」
「まあ、やっぱりその気なんですのね」
「だって夕顔って本当すごかったんだよ、技が。十七の俺を完全に
魅了した。気絶しそうに気持ちよくてね。君にもしてるからわかる
でしょう?あれ、夕顔に教わったんだ」
光が戯れると、紫は赤くなって横を向いた。
「もちろん、まだ教えたいことはいっぱいあるけどね」
笑いながら、巻きつくように紫をからめとる。
玉鬘のもとには、思ったとおり、男たちからの文がわんさと届いた。
男どもの懸想文ってのは、みっともないねえ。
それを見てほくそ笑む自分も同じくらいみっともないのだろうが
光は面白くて、そんな自分を省みることもない。
「どれどれ」
親ぶった態度で偉そうに、誰から何が来たかを点検する。
独身蛍の必死さなんて憐れなほどだった
くくくと笑って返事をうながす。
「蛍には返事してあげな。あれでも親王の中では一番もてると自負して
る奴だからさ」
玉鬘は恥ずかしそうにしていた。
こんな私信を見られて笑われているなど、男たちは夢にも思うまい。
「人を選んで、それなりの返信をしてやったほうがいいよ。俺も経験あ
るけど、全く返事をくれない人って、逆にすごく気になるんだよ。あまり
つれなくされると腹も立つし、実力行使してやろうかって気にもなる」
言いながら、昔のことを思い出していた
これ俺のことです。ごめんなさい藤壺さん…
「ことさらに隠しすぎず、あわれを感じさせる程度に返してやりな。男の
程度に応じて憐れをわけ、労をいつくしんでやるのも貴女の役目だよ」
そんなことを偉そうに教える。
さて、この、若やかにむすぼほれたるは、誰がそ。いといたう書いたる
気色かな。*
光は、気になっていた縹色の文を開いた。
「内大臣のご子息の、柏木さまですわ」
女房が報告する。
「へえ…」
光はその文をまぶしそうに眺めた。
実の姉とも知らずに。ずいぶん可愛いね。
微笑んで、すこし憐れにも感じた。
「柏木は他の子と比べても見所のある子だよ。そのうち血縁とわかる日
もくるだろう。つれなくない程度に返してやりなさい」
そんなふうに感心しながら、じっと手に持って見ている。




