5-1 愛しあえる世を
五.若紫
夢のような短夜だった。
彼女は光を拒めない。
拒むのだが、やわらかだった。
それが光にもっと知りたい、もっと入りたいと思わせる。
「ふたりでどこか遠くへ行きましょう。そうだな、どうせなら唐か
天竺がいい」
「まあ…そんな遠いところへは、着く前に死んでしまいますわ」
「死んだっていいのです、あなたがそばにいれば。同じ蓮にのぼれ
ます。まあ死にはしなくても、日ノ本の王族とわかれば、あちらも悪
くは扱わないでしょう」
「まるで夢のようなお話ね」
「だって、あまりにはかない逢瀬で…」
光は黙ると、女の胸に頬をすりよせた。
「待っていてください。俺はかならず、あなたと愛しあえる世を作り
ます。最高の位にのぼりつめ、帝をも支配して…文句がある奴は
黙らせればいい。そのくらいの力を、俺は持ってみせます」
「お若いのに、あまり怖いことをおっしゃらないで…」
「頼りないと思ってらっしゃるんでしょう?もっと信じてください」
「だって幼い頃は本当に可愛らしかったんですもの、天使のようで。
こんなご立派におなりあそばすとは、夢にも」
「いつまでも子供と思ってらっしゃるんですね」
光は薄く笑うと、きれいな目を細めた。
「なら分からせてあげますよ、俺が大人になったってことをね」
あとは支配、支配の連続だった
光は支配が好きである
支配したいと思わせてくれる女性が好きだった
そして、いつまでも最後の一すじで抵抗する彼女を
もっとも深く愛した。




