21-3 偉大な兄
その年は男踏歌があって
夕霧はじめ若い君達は、踊ってまわった。
まず内裏
「夕くーん」
冷泉兄、相変わらずうれしそうに手をふる。
次に朱雀院
「夕くーん!」
あれ?
微笑む朱雀の隣に、なんと冷泉兄こっちにも追っかけで来ていた。
夕霧と目があうと、にこっと笑って手を振る。
運動会でおかんに愛されすぎてる息子みたい
もちろん夕霧、思わず目をそらした。
「ちょっと、何やってんすか」
「だって夕くんを応援したくて」
「せんでいい、んなもん」
夕霧負けじと言い返した。
その反抗ぶりにも成長を感じて、朱雀が微笑する。
冷泉兄も、もちろん微笑む。
なんだこのほほえみ爆弾は。
「とにかく六條院には来ないで下さいよ。親父には内緒なんすから」
「あ、ごめん、そればれちゃった」
「何ですと?!あなたがばらしたんですか」
「ううん、ばれちゃったの」
冷泉が無邪気に笑うから、夕霧はイラっとした。
「もうー」
けんけんがくがく、帝に叱る。
冷泉兄苦笑して謝った。
だってずっと気使わせるのも悪いよね。無駄だし。
父上はご存知だったみたいだよ、最初から。
そういう真実をうまく隠して身代りになってしまえるから
冷泉帝、偉大な兄である。
月の残る暁、きらきら輝く雪の中を、若い君達は舞った。
夕霧も他人んちで踊るみたい
凛々しい姿で袖を返している。
「夕霧、可愛かったね」
光は珍しく本音をこぼした。
男らしくなってきたな
葵の気質を受け継いだのか、浮わついた所もないし。
まあそれだけじゃ寂しいけど。
「こういう遊びに親しむ心が見えるのも、悪くないね」
そういって満足する。
「遊んでいきなよ、酒でも出すから」
ここが終着点だから、お疲れさまの宴に誘った。
仕舞ってあった琴なんかも取り出して、緩んだ緒を締め直す。
なんだかんだいって、自分の手で育てられるのは
男女ひとりずつしかない光だった。
普段無視してるように取り澄ました顔をしながら
きちんと夕霧を見ている。




