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朱雀と弟  作者:
第三部  母なき子よたりいつたり集ひきてあひ惑はんやしあわせ探し
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20-2 ゆがんだ性癖

花散里のいる夏の対に、玉鬘を相住みさせることにした。

書庫になっていた部屋を別に移して迎えよう、と思うらしい。

あれ、それ俺の本…

思い返せば夕霧が閉じ込められ、受験勉強したのがこの部屋だった。

ちょ、いとも簡単に人の思い出移しやがった

しかも女のために。

まあ、光の頭はつねにレディファーストにできているので仕方ない。

夕霧はさして気にもとめず、むしろ書庫の移転を手伝う。

「ずっと探してた人を見つけたんです。母のない可哀想な人だから、

夕霧と同じように見てやってくれませんか」

「あら、そうなんですの」

花散里はいつものようにおっとりしていた。

「お嬢様がお一人でお寂しかったですものね。よろしいことですね」

何の疑いもなく、やさしく微笑む。

「母親はとても心のやさしい人でしたから。あなたならお任せできる

と安心しています」

「私などで務まりますかどうか…でも、そう言っていただけると嬉し

いですわ」

花散里は本当に嬉しそうに笑った。

また、例の。

夕霧は父の癖を知っているので、きゅっと眉をひそめた。

またどこからか憐れな女を拾ってくるつもりか

しかも親切な親ぶって。

見苦しいと思った

恋しい女を盗み取ってくるより、ずっといやらしい体裁だと思う。


光は玉鬘を引き取ると、早速その晩会いに来た。

「もう少し、よく顔を見せてくれないかな」

女は恥ずかしそうにする。右近がそっと灯を近づける。

可愛かった

昔の夕顔を思い出すような、やわらかな美しさだった。

生まれ変わったら何になりたい?

最後の夜を思い出す。

「君に、話さなきゃいけないことがあるんだ」

光は姿勢を正すと、深く頭をさげた。

「君のお母さんは俺が殺した。見殺しにして、燃やした」

玉鬘は息をとめた

右近も驚く。

光はすべてを話した。

夕顔と出会ったときのこと

覆面をして、足しげく通って、二條院に引き取ろうと思っていたこと

あの日、調子にのって怪しげな院に彼女を連れ込んで

守りきれず、死なせてしまったこと。

悲しかった

若き日の過ちというにはあまりにも悲しく、重すぎた。

「本当に申し訳ない。君のお母さんを密葬にして、喪にも服さなかっ

た。君たちにも隠して。俺は最低の人間です」

償えるとは思っていなかった。許されるはずもないが。

ただ、謝りたい。

それでも夕顔を好きだったってこと、娘のこの人に伝えたいと思った。

「そう、ですか…」

玉鬘はそれ以上何も言えず、そっと黙った。

「お母さんにしてあげられなかったことのせめてもの埋め合わせを、

させてほしいんだ。もう遅いかもしれないけど。君には必ず、幸せに

なってほしい。俺も微力ながら世話します」

玉鬘は思わず泣きそうになった。

お母様はどうして亡くなられたのだろう

生きておられたら今ごろ、こんな立派な人に愛されて、幸せになれて

いただろうに。

私だってこの人にもらわれて、九州でない、この都で苦労なく暮せて

いたかもしれない。

今までのつらかったことがこみあげて、足まで痛く感じた。

でも、会えてよかった

がんばってお参りしてよかったと思った。

玉鬘二十一歳

大人ではあるが、光のゆがんだ性癖をまだ知らない。

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