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朱雀と弟  作者:
第二部  地獄へもとぶらひゆかん君が闇てらすばかりの光となりて
51/175

12-3 惜しみない愛

えっ…

こども?

光はすべてしゃべってしまっていた。

明石のこと、生まれた子のこと

女の子で気になっていて、見せたいとか、そういうそぶり。

すべて、しゃべってしまう。

それで荷をおろしたつもりなのか、あとは野となれ山となれ

恨むも憎むも君次第だよ、と悩みを相手に任せてしまうところがある。

隠す配慮というのがあまりないようだった。

紫を信じている、といえばそれまでだが

彼女に頼って、甘えて

彼女の愛情の揺るぎなさを試すようでもあった。


よろづの事、すさびにこそあれ*―

紫は、ショックを受けた。

絵とか歌とか、頻繁に交わした。

寂しい恋しいとこっちも言い、相手も言うので、同じなんだと思ってた。

離れていても、思いはひとつなんだと思ってた。

それなのに。

こっちは死にそうな思いでその文だけを待ち暮らして

元気かな、健康かなと心配ばかりしてたのに

そっちはのんきに女作って子まで産ませてんのかよ。

どういう神経なの?

悔しいし腹立たしいし悲しくもあるのだが、そこは平安美人

「あはれなり*」の一言で、ぐっと感情を押し殺す。

まことに、ただ、あはれなりと思った。

「我は、又なくこそ、『悲し』と、思ひ嘆かれしか。すさびにても、心を

わけ給ひけむよ」*

そんなにその人がいいなら、ずっと明石にいればよかったじゃない。

琴がいいとか人がらをかしとか

全部言っちゃうから、こっちは腹が立つ。

私にしか聞かせるひといないのかしら?

私はあなたのお母さんじゃないのに。

プレイボーイのくせに女心わかってないのが、ほんと痛い。

私はふつうの女以下なのかな

ずっとそばにいすぎて、慣れてるから、妹みたいに思われてる。

我ぞ煙にさきだちなまし*―

どうせなら、死んでしまえばよかったと思った。

光は苦笑すると

「そう怒らないでよ。君に会うために戻ってきたんだから。俺たちにも

子はできるよ。君も大人になったでしょう?」

言いながら、ぎゅっと抱きすくめた。

紫が包み込まれる。

「ずっと会いたかったよ。帰ってきて驚いた。君があまり綺麗になって

いたのでね。娘から女になるこの時期をどうして逃したんだろうと、兄

を恨んだほどさ」

色っぽかった。

光はやはり色っぽい。

「子なんてなくてもいいんだよ、君さえいれば。この胸もふたつとも、俺

のものだ」

そう言ってさわるから、恥ずかしくてじたばたした。

「でも君がほしいなら頑張るよ。毎日でもがんばる」

「いや、いいです」

本当にがんばられそうなので、ちょっと怖い。

結局私も悪いんだ、ということに紫は気づいていた

この人そんなにいいひとじゃない。顔はいいけど、性格怖いし。

でも抱かれたら惚れちゃうんだ

ばかみたい、前もだまされたのに、私はいつも許そうとしている。

許して忘れて、思う存分溺れようとしている。


「おいで」

手招きされると、ついひざに乗りたくなって困った。

昔の癖だ、ずるい、私が寂しがりなの知っていて

すぐそうしてなつかせようとする。

抱きしめて可愛がって、大切にしてやれば

文句ないだろうと思っている。

ずるいよ…

紫は、でも恋しかった。

他の女にも渡したくない。

私は他に家がないんだから

この人に嫌われたら生きていけないんだから

だから…

仕方なくなの。

悔しくて、そんな言い訳を考えもした。

でも、だめだった。

すき、すき、光がすきで、だから光にもすきにさわられた。

それを喜んで、罠にはまって

何度も繰り返す

惜しみない愛に、遊ばれていた。

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