4-1 ふつうでない逢瀬
四.夕顔
光は彼女に会うとき、いつも顔を隠していた。
覆面をし、暗くなってから密かに会う。
つけてくる者も途中の道でまいてしまっていた
まるで夢の中で会うみたいだ
女はこわがって、でも避けずに男と戯れる。
「顔見えなくて、平気なの?」
「男の方は皆ちがいますわ」
「形が?」
「匂いも、色も」
「ずいぶん経験してるんだね」
「あなたほどでは」
鷹揚に笑うので可愛らしいと思った
華奢な体をかき抱く。
そうそう、こういうやわらかい女が俺は好きなんだよ
女は「いとらうたし*」だった
可愛くおおらかで、何も知らないようなのに、男は初めてじゃない。
光は興味をもった
俺に会わないときは、どんな男と寝るんだろう?
他の男に抱かれるときは、どんな顔をして喜ぶんだろう
見たかった
彼女のすべてが見たい。
「もっと落ち着ける場所で、二人きりで過ごそうよ」
「でもこわいですわ。あまりにふつうでない逢瀬なので」
言われて光は、覆面ごしに笑った。
「いづれか狐ならんな。ただ、はかられ給へかし」*
だまされるのも幸せのうちだろ?
甘い息でささやく。
「誰にでも身を許すんだね」
「そんなことないですけど…」
「俺に歌をよみかけてきた」
「あまり、素敵だったから」
「浮気だね」
「そうでなければあなたとも、こうしてお会いできなかったでしょう…?」
素直というか、たおやかだった
咲く花のごとく、流れる水のごとし
そっと笑いさざめきあうのが、豊かで楽しい。
「そんな女なら、ずっと抱いてなきゃいけないね、手を離すのが惜しい」
「想ってくださいますの?」
「君は浮気性だろうけどね」
「まあ」
「そういう女ほど縛りがいがある」
闇の中でそっと腕をまわした。女がおびえてきゅっとふるえる。
「痛いのは、やですわ」
「そういう意味じゃないよ。そんなに変じゃない」
光は思わず笑ってしまった
長い髪を撫で、そっとキスをする。
「次はどうするの?」
「そんなこと、知らない」
「教えてよ。ほんとは知ってるんでしょう?いろいろ」
笑いながら、頭中将をこえたいと思った
ふたり重ねた思い出に、より楽しむための踏み台にしたい。
二條院に迎えるつもりだった
いとしいいとしい、大切なひと。




