10-2 ふたりで見る夢
光は入道の宮に挨拶にいった。
ちかき御簾の前に、御座まゐりて、御みづから、きこえ給ふ。*
「春宮さまのため、かならず生きて帰ります。あなたも俺の無事
を祈っていてください」
宮は沈んでいた
いろいろ思って悲しんでくださる。
髪を切ったって彼女は美しかった
寄り添って離れたくない愛しさも、変らぬまま。
昔、かやうに、あひ思し、あはれをも見せ給はましかば*―
今じゃもう遅いだろ?
つぶやきながら苦笑した
昔見れたらなんて、無理な話だよな
そのふたつは両立しえない
俺に襲われる心配がなくなったから
彼女はやっと優しい言葉をかけてくれるようになったのだから。
光はしずかに退出した
月が、でている。
そのまま、父の墓に参った。
をがみ給ふに、ありし御面影、さやかに見え給へる、そぞろ寒き
ほどなり。*
これは、俺への報復なのですか?
それならむしろ喜んで受けられると思った
でもそんなものじゃないだろう
俺の心おごりから出た、たんなる失態。
自分の愛した女くらい、守ってやってくださいね。
それだけ祈って墓を去った
俺たちにはもう、ふたりで見る夢もないのだから
今はただ、彼女のしあわせだけ
彼女がしあわせになってくれれば、それでいいと思う。




