8-6 もう痛くない
「いたい、ですわ」
「もう痛くないよ」
「こわいですもの」
「どうして?」
「あなたがだますから…」
「最初からそのつもりだったよ。待ってただけじゃないか」
「知ってたら信じませんでしたわ、あなたのこと」
光はおかしそうに笑うと、小さな人を抱いた。
「よく俺の懐に入って一緒に寝てたじゃない」
「それとこれとは、別ですわ」
「別じゃないよ、ひとつになっただけのことさ」
「やさしげに馴れまつはして、だまして…父とも思い、慕っておりまし
たのに」
「保護者ってことでしょ、それは同じだよ。これからも、いやこれまで
以上に大切にする」
「だって、こわくて…」
光はいよいよ信用を失ったようだった。
まあそれでもいいんだけどね
恨むすがたも悪くない。
「じゃあ他の男がよかったの?他の男にこんなことされて、裸見られて、
君は平気なの」
「平気じゃないですけど…」
「俺はやだね、他の奴には絶対さわらせたくない。見せるのもいやだ」
そこは子供のように、ひとつ心にかたくなだった。
「俺に不満があるなら言ってよ、直すから。俺本当に君が好きだから」
言われて紫はしゅんとした。
「せめてもうすこし、大きくなってからにしてほしかったですわ」
「だってあまりにも可愛すぎるから、我慢できなくて。それに、今が一
番いい時なんだよ、君を揺るぎない俺の妻にするにはね」
「え?」
光が姿勢を変えるので、紫はころんと転がされた。
「俺にも甘えさせてよ、これからはさ。夫婦もちつもたれつで」
言いながら、一夜も隔てぬ侵攻に、紫は
この人も子供なんだとなんとなくわかってきた気がした。
親のない兄妹なんだ、私たちは。
どんなに恨んだって、泣いたって
この人にもほかに、帰る場所がない。




