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朱雀と弟  作者:
第一部  同じかと思ひにけるよふる夢は君がひかりに消さるまぼろし
27/175

8-5 モンスター

二條院には、方々払ひ磨きて、男・女、待ち聞えたり。*

西の対は露骨だった

どこもかしこも磨きあげられ、衣がえも美しくしている。

モンスターのようだと思った

葵の死を喰って成長するモンスターが

ここにはいる。


紫はかわいらしく、おめかしして待っていた。

「すこし見ないうちに、ずいぶん大きくなったね」

微笑んで顔をのぞく。

はじらうさま、奥ゆかしさ、すべて藤壺に似ていた。

「これからはずっと一緒だから、厭わしいとさえ思うだろう」

光は笑って紫を撫でた。

おぼしはなちたる年月こそ、ただ、さる方のらうたさのみはありつれ*―

ああ、モンスターは俺なのだ

女の上に女を求め、女の中に女を探して、飽くことを知らない。

死んでしまえば終りだ、絵に描いた餅、抱けない女など意味ないだろ?

さまざまな鬼が光にささやいた。

知ってるさ、俺の心の鬼

だが切なかった

紫を胸に抱きながら

紫でも藤壺でもない葵のことが、ふと胸をよぎった。


年がかえって、光は朱雀のもとに挨拶にきた。

朱雀はあれからずっと、しんみり、しっとりしている。

「まだ数珠を放さないの?」

光は眉をひそめると

「新年くらい明るくいなきゃだめだよ」

笑って朱雀を励ました。

朱雀は紅い衣の上に、灰色の法衣を重ねていた。

喪があけてすぐ新妻をもらうってすごいな…

恨むのではなかった

ただそのサイクルに、光の生命力を感じた。

光ほどの貴公子になると、立ち止まってもいられないんだろうな

周りの女性が、立ち止まらせてくれない。

「大丈夫?」

すこし疲れているように見えて、何気なくきいた。

「ん?平気だよ。新婚てのはいいね」

今は、一夜も隔てむ事の、わりなかるべき事*―

光は笑っている。

「そか…ほんとうにおめでとう」

朱雀も淡く微笑した。

光、しあわせかな?

笑いながら、泣きそうに思う。

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