8-5 モンスター
二條院には、方々払ひ磨きて、男・女、待ち聞えたり。*
西の対は露骨だった
どこもかしこも磨きあげられ、衣がえも美しくしている。
モンスターのようだと思った
葵の死を喰って成長するモンスターが
ここにはいる。
紫はかわいらしく、おめかしして待っていた。
「すこし見ないうちに、ずいぶん大きくなったね」
微笑んで顔をのぞく。
はじらうさま、奥ゆかしさ、すべて藤壺に似ていた。
「これからはずっと一緒だから、厭わしいとさえ思うだろう」
光は笑って紫を撫でた。
おぼしはなちたる年月こそ、ただ、さる方のらうたさのみはありつれ*―
ああ、モンスターは俺なのだ
女の上に女を求め、女の中に女を探して、飽くことを知らない。
死んでしまえば終りだ、絵に描いた餅、抱けない女など意味ないだろ?
さまざまな鬼が光にささやいた。
知ってるさ、俺の心の鬼
だが切なかった
紫を胸に抱きながら
紫でも藤壺でもない葵のことが、ふと胸をよぎった。
年がかえって、光は朱雀のもとに挨拶にきた。
朱雀はあれからずっと、しんみり、しっとりしている。
「まだ数珠を放さないの?」
光は眉をひそめると
「新年くらい明るくいなきゃだめだよ」
笑って朱雀を励ました。
朱雀は紅い衣の上に、灰色の法衣を重ねていた。
喪があけてすぐ新妻をもらうってすごいな…
恨むのではなかった
ただそのサイクルに、光の生命力を感じた。
光ほどの貴公子になると、立ち止まってもいられないんだろうな
周りの女性が、立ち止まらせてくれない。
「大丈夫?」
すこし疲れているように見えて、何気なくきいた。
「ん?平気だよ。新婚てのはいいね」
今は、一夜も隔てむ事の、わりなかるべき事*―
光は笑っている。
「そか…ほんとうにおめでとう」
朱雀も淡く微笑した。
光、しあわせかな?
笑いながら、泣きそうに思う。




