6-4 いかならむ世に
光十九歳の如月に、男御子がうまれた。
「疵なき玉」*か…
光は、父に見せる前にまず自分が見たいと思った。
見て、抱きたい
彼女と三人のところを、絵にでも描いて残しておきたい
本物は俺なんだと言いたい。
とても苦しんだという彼女のことが、気がかりでならなかった。
出産は大出血する。死と隣りあわせだ。
俺が行きたい、行って慰めたいと思った。
もう、父に触れられる彼女を想像することに、苦痛を覚えていた。
「早く会わせて、どんな変装でもする。数十分、いや数分でいいんだ」
ただ、抱きしめるだけ。
命婦は首をふった。
「無理です、私は奥様に、もう信用がございませんもの」
「そんなこと言ったってお前にしか頼めない。お前も共犯だろ?」
言われて命婦はぐっとつまった。
「いつになったら会えるんだよ。いつまで生きてるかなんて、誰にも
わからないだろ?俺たちに何かあったら、お前は責任とれるのか。
来世での再会を約束してくれるのか」
いかならむ世に、人づてならで、きこえさせむ*―
命婦はうつむくと、つらそうに眉を寄せた。
「奥様だって、おつらいのですよ」
その言葉に、光ははっとした。
でも、つらいって、つらいなら一緒に立ち向かえばいいじゃないか。
俺たち、ばらばらだと崩れてしまうよ
恋も秘密も、子のことも。
俺もしたいのに、もっと力になりたいのに
なぜひとりで抱えこむんだろうと思った
地位だって上ってる、もうじき頂点に達するのに、なぜ信じてくれな
いんだ?
このまま父のもとで、父の子として育ててしまうんだろうか。
俺はぜんぜんさわれないんだろうか。
そんなの悲しいと思った
今すぐでなくていい、せめて消息くらい交わしたっていいじゃないか。
会いたい、会いたいよ。ふたりきりで会いたい。
光は唇を噛んだ。
自分の子が、彼女と父の仲を逆に強くする気がして
悲しくて悔しくて、耐えられなかった。




